異世界転移7
それからの事を簡単に話そう。
街を出た俺達は魔王がいるらしい魔王城を探すために、その情報がある王立の学園に行ったり。
その学園で起こる陰謀を暴いたり、魔王軍のロリコン変態幹部を倒したり。
鏡花が悪役令嬢になったり、この国の大臣の頬を札束で叩いたり。
エルフに会ったり、ドワーフに会ったり、竜に会ったり。
BL好きの腐女子魔王軍幹部と悲しい別れがあったり。
催眠使いの魔王軍幹部を鏡花達にばれる前に速攻で倒したり。
そんな何やかんやがあって――
俺達は魔王城にたどり着いた。
「いや端折り過ぎだろ!!」
「いきなり叫んでどうしたんですか攻一さん?」
驚いた様子の鏡花が聞いてくる。
「いや……すまん、何でもない」
「はぁ……そうですか」
何でも無い訳ないんだが、まぁもういい。
魔王はもう目と鼻の先なんだ。
もう少しでこのめんどくさい異世界生活も終わる。
「準備はいいか?」
俺は三人に向けて言った。
「大丈夫です」
「問題ない」
「いつでも行けるよー!」
この三人も旅の中で大きく成長した。
鷺ノ宮鏡花
『無限追跡』:相手の居場所をどれだけ離れていても把握する事が出来る。
『永久財政』:現在の世界の通貨を作り出す事が出来る。任意のタイミングで消せる。
『完全把握』:体力、魔力、技、魔術に至るまで相手の能力を全て知る事が出来る。。
『不動拘束』:指定の相手の体を完全に停止する事が出来る。
九条朔夜
『恒久転化』:ダメージを体力、攻撃力、魔力の全てに変換する事が出来る。
『極大体力』:現在の体力を十倍にする事が出来る
『永遠武身』:あらゆる武器の他、武器以外の物もある程度武器として経験がなくても使いこな
せる。
姫野リリー
『解除封印』:相手の武器や防具、魔術のどれか一つを解除する事が出来る。解除されたものは一定時間再使用する事が出来ない。
『複合転身』:自身が保有している装備を念じるだけで付け換える事が出来る。また、三つまで装備の性能を複合し現在の装備に上乗せできる。
『更衣成長』:成長する能力を自身で決める事が出来る。また一戦闘中、五回まで装備を付け換える度に全ステータスが上昇する。
正直、もはや人間兵器と言っていいような能力になっている。
……ちなみに俺の方は転移当初から大して変わっていない。
……魔王じゃなくて女神討伐だったらやる気出るんだけどな。
「はぁ……行くか」
若干テンションが下がりつつ、俺は魔王城へ足を踏み出した。
魔王城は暗い樹海に囲まれた山の頂上に建っている。
空はいつもこうなのかは解らないが雷雲が広がっていて、度々稲光が辺りを強烈に照らした。
辺りが暗い事でそう見えるのか、特段奇抜さのない城に不気味さが漂う。
俺は入口の門を押し開いた。
中は薄暗くシンと静まり返っている。
これまでの旅と同じように戦闘を俺、鏡花とリリーをはさみ、最後尾を朔夜にして先へ進む。
廊下には壁に蝋燭が灯るのみで見通しが悪いが、鏡花の完全把握とリリーの解除封印を駆使して安全を確保した。
そんな中で気付いた事が多少の罠はもちろんあるのだが、そのどれもが殺傷性はほぼないものばかりだという事だ。
思えばフレイや他の魔王軍幹部も直接危害を加えてくるような事は無かった。
……魔王とも戦わずに終わるならそれが一番いいが……どうだろうな。
その後、十数分進み続け俺達は魔王がいると思われる部屋の前にたどり着いた。
「よし開けるぞ」
俺は三人が頷くのを確認してから、ゆっくりと扉を開けた。
警戒しつつ、部屋の中を確認する。
部屋は広く、開けた空間が広がっていて天井もかなり高い。
視線だけを動かし見渡していると、そこへ低く小さな声が響いた。
「よく……ここま……きた…………な」
魔王か……?
声がした方へ素早く構える。
そこには一人の男が玉座に座していた。
青いジーンズにチェックのシャツをインし、頭にはバンダナ、手には指抜きグローブを付けていた。
「……………………………………」
「待っていたでござるよ、攻一氏」
「……すまない」
俺は一息入れ問いかける。
「この辺りに魔王がいるって聞いたんだが知らないか?」
「いや我輩我輩! それ我輩!」
……いや……えぇ……? 何だろこの残念感。
「何でそんな服装してるの……?」
おずおずとリリーが聞いた。
「おっ! よく聞いてくれたでござるな!」
前のめりに魔王が反応する。
「我輩は全ての性癖、嗜好、趣味を愛しておる! ショタもBLも百合もロリもツンデレもSMも男の娘も催眠もその他この世にある全てが大好きでござる!」
「ほう……SMもか……」
反応するな仲間B。
「遥か昔、暇を持て余していた時に魔術を使い攻一氏達の世界を覗き見たでござる。そこでOTAKU文化を見た我輩は感銘を受け、同志を募り魔王軍を結成したのでござる」
行動力だけはすごい。
「それ以来、人類に対し布教活動を行っているのだ! この服装は歴戦のオタク達に敬意を表しているのでござる!」
「いや、でもその服装してるオタクの人、もうほとんどいないと思うけど」
「え、うっそ! そんなバナナ! でござる!」
うっぜぇ。
「えー……そうなのー……? まぁ・・・そっかー……」
「なぁ、俺達はこんな話をする為に来た訳じゃないんだ」
ぶつぶつと呟く魔王に俺は聞いた。
「フレイからも聞いてる。人類を自分達の性癖で染め上げるって。……止める気はあるか?」
「んー……正直、幹部の皆は過激に言い過ぎている部分もあるでござるが……攻一氏は先程の我輩の話を聞いて止めると思うでござるか?」
まぁそう言うと思ったよ。
「出来れば戦闘は避けたい。……最後にもう一つ聞いていいか?」
「何でござる?」
「ノンケか?」
「そうでござる」
「開戦だぁ!!」
「え?! なんで?!」
小ネタ
物語加速しました。
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