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異世界転移5

「……みんナーこんにちハー」


 ぼんやりと幹部が喋り始める。


「わたしハ、まおーぐんノ、フレイっていうんだけどネ。きょうはみんなニおねがいがあってきたんダ」


 フレイと名乗った幹部は敵意は無いとばかりににこやかな表情で話していた。


 そこへギルドに居た世紀末の男達が躍り出る。


「おいおいおい名乗る前に謝罪が先なんじゃないか?」


「さっきの爆発音でルネおばさんがびっくりして心臓が止まったらどうしてくれんだ?」


「街中で火を使ったらいけないって習わなかったのか?」


 いい子か。


「魔王軍幹部が相手か……」


「相手に取って不足なしだな」


「薬草採取クエストしかした事ないが……俺達が相手だ!」


 誰か止めろ!


「えエー? あんまりたたかうのハすきじゃないんだけどナー。でも……やむなしだよネ」


 そう言ったフレイを中心に熱気が膨れ上がる。


 瞬間、フレイの体から爆炎が上がり熱風が吹き荒ぶ。


「「「うおおおおっ!!」」」


 フレイへ突進していた世紀末達が吹っ飛んだ。


 俺は鏡花達をかばいつつ、フレイを見据える。


「まだ、むかってくルひとはいるのかナ?」


 余裕の表情のフレイ。


 さっきの爆炎の熱量は相当なものだった。


 まともに食らったら危険だろう……。


「攻一……私の準備は出来ているぞ?」


 朔夜の言葉に振り向く。


「私達だって戦えるよ!」


「女神様にもらった力もありますから」


 そうだな……確かに他に選択肢は無さそうだ。


「まだお前らはまともな戦闘経験が無い。俺が突っ込むからお前らは能力で援護してくれ」


 三人は力強く頷いた。


 俺はフレイに向かって駆け出す。


「んン? まだヤるひといるの?」


 ゆっくりとした所作でこちらに右手を向けるフレイ。


 俺は直進から横へ軌道を変え、フレイを中心に円状で駆け的を絞らせない。


 前転移時の一割にも満たない体力と魔力だが要は使い方だ。


 魔力を身体強化のみに絞り、なおかつそれをランダムにオンオフを入れ替える。


 それだけで走る速度差が出て捉える事は困難になるだろう。


 加えて前転移から引き継いだものは『把握』と体力と魔力だけではない。


 それは知識であったり経験であったりといった不形のもの。


 これがあるからこそヤクザの事務所を一人で潰す事が出来ている。


 俺は駆けながら落ちていた石を一つ拾う。


 そして魔力を込め石の強度を上げた。


「うーン……ちょっトめんどうになってかたかラおおきいのいくネ」


 フレイはそう言うと魔力を高めていく。


 先ほどと同じように自分を中心に爆炎を上げるつもりなのだろう。


 ――俺に当てるのが難しいなら当然そう来るよな?


 俺は強化された重いきりフレイに向かって投げる。


 と、同時にフレイに向かって突っ込んだ。


「っ?!」


 魔力を高め放とうとしたところに石。


 それを弾いたその時にはもう俺は眼の前まで迫っていた。


 フレイは俺に向かって手を向け魔術を放とうとするが僅かに間に合わない。


 俺は右手に魔力を込める。


 ――殺った。


「『解除』!」


 そこでリリーの声が響く。練り上げられた魔術が霧消した。


 ――俺の右手から。


「『拘束』」


 そして両手が拘束される。もちろん俺の。


 声の主は鏡花だ。


 ……いや何で?


 そこへフレイの爆炎が飛んできた。


「熱っつつつあばばばば!!」


 炎に包まれた体を俺は必死に地を転がって消火する。


「ああ! 攻一さん何て事!」


「魔王軍め! 許さんぞ!」


「うんうん!」


 いやお前らな。


 何とか消火した俺は立ち上がりバカ三人組へ向き直った。


「はーいバカ共集合ー。あ、フレイさんちょっと待ってもらっていい?」


「あ、うン。やけド、だいじょうブ?」


「ああ、ありがとう」


 俺は三人の前まで行くと腕を組み言った。


「はいじゃあ右からさっきの反省言っていこうか」


「攻一さんから見て右ですか? 私達から見て右ですか?」


「そんなん超どうでもいいんだよ! 俺から見て右だよ!」


「そうですね……能力発動のタイミングが悪かったですね」


「これ以上無いくらい完璧だったわ。はい次」


「もうちょいで殺れた」


「敵をだよな?! はい次!」


「さっきの攻一の攻撃をお尻に叩き込んでほしい」


「うるせぇぇぇええ!!」


 何なんだこいつら! 何でこの局面でこんなふざけられるの?!


 ……ふざけてるんだよね? 違ったら怖いんだが。


小ネタ

攻一よく死なないな。


※ ※ ※


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