異世界転移3
「攻一さん、大分落ち着きましたね」
「……ああ、迷惑かけてすまなかった」
鏡花からの気遣いの言葉に返す。
大丈夫、大分冷静になった。
冷静にクソ女神への復讐を考えてる。
「ねぇねぇ鏡花さんも流石に馬車には乗った事は無かったんじゃない?」
「そうですね……まだ10回くらいしかないです」
「10回もあるの?!」
リリーのはしゃぐ声を聞きながら風景を眺める。
今俺達は馬車に乗り、近場の街に向かっている。
街道沿いに歩いている際に馬車に出会い乗せていってくれる事になったのだ。
御者のおじさんの話によると近場の街は眼と鼻の先との事らしい。
ついでにこの世界の事についても色々と聞いてみるか。
「なぁおじさん、魔王軍って知ってる?」
「んぁ? 兄ちゃん魔王軍も知らねぇのか?」
「田舎の出なもんで」
一々異世界から来たって説明するのも面倒だしそういう事にしとこう。
「ここの辺りも大分田舎だけどなぁ……すっげー辺鄙なとこから来たんだなぁ」
「いやーお恥ずかしい」
「いんやいんやおいらも十分田舎もんだからなー。だから魔王軍とかの話も詳しく話せねぇんだ。この先の街の冒険者ギルドってとこで聞いた方がええと思うよ?」
「そうか……解った。ありがとう」
一応この世界にも冒険者ギルドがあるのか。
それなら確かにそこで色々と聞いた方が良さそうだ。
そのまま10分ほど馬車に揺られていると街に到着した。
俺達は御者のおじさんにお礼を言い、馬車を降りる。
「うわぁ……」
リリーが街を見渡しながら感嘆の声をもらした。
「やはり雰囲気がどことなく違いますね」
「ああ」
鏡花と朔夜の声を聞きつつ俺も街を見回した。
街の大きさは割りと広くそこそこの数の家が立ち並ぶ。
家には木材や石材、屋根には石の瓦が使われ中世の家を思わせる。
街の敷地内の地面には石畳が敷かれ整備が行き届いていた。
人の往来も結構あり、会話をしている中で笑顔も見られた。
御者のおじさんが田舎と言っていたからのどかな街を想像していたが、思ったよりも発展している。
これで田舎なら大きい街は一体どれ程のものなんだろうか。
「さて……ひとまず冒険者ギルドに行ってみよう」
「そうですね」
「しかし場所が解らんな。誰かに聞いてみるか」
「ねぇねぇ! せっかくだから少し歩いて探してみようよ! 見つからなかったら聞いてみたらいいんだし」
「まぁ……そうだな。二人もいいか?」
「はい」
「構わない」
「やったー!」
二人の返事に嬉しそうに駆け出すリリー。
すっかり観光気分だな……。
まぁ、変な雰囲気や怪しい気配もないしとりあえずは大丈夫だろう。
リリーは家や畑に植わっている作物や花など興味しんしんにぱたぱたと駆け回っている。
ふと鏡花と朔夜を見れば、二人も楽しそうに辺りを見回していた。
……まぁ変に委縮したりしてないようで良かったか。
「あれー攻一笑ってるよー」
いつの間にか目の前に来ていたリリーがにやにやしながら言う。
「もしかして私達がかわいいーって思わず笑みがこぼれちゃったんじゃないのー?」
その言葉に俺は余裕の笑みを浮かべ、優しげな視線を向けそして――リリーの鼻を思い切り摘まんでやった。
「うるさいぞ238位」
「ひひゃくしゃんじゅうなない(237位)らもん!!」
小ネタ
「ブェックション!! ――誰かに噂されてるのかな? 攻一さんが一割解放で感謝してるのかもしれませんね! さてと、後はあれをやんないとかー……」
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