異世界転移2
女神に転移させられ、俺は異世界に降り立った。
辺りは木がそこそこに生い茂っており、遠くには山も見える。
空は晴れていて爽やかな風が吹いていた。
前と後ろには街道なのか草なども無く整備されている道が続いている。
さて、バカ女神にはあの三人と同じ場所に転移しろと言っておいたが……。
きょろきょろと見渡していると10数メートル程離れている場所で三人を見つけた。
「朔夜さんとリリーさんも女神さまに会われました?」
「ああ、鏡花もか」
「ねね、ここってさ前に攻一が言ってたっていう異世界だよね? ってことはさ」
ひそひそと話し始めたリリーの声を聞いて俺は足を止めた。
「もしかして攻一を好きにできる魔術とか道具とかそんなのがあるんじゃない?」
「催眠とか、そういうのでしょうか?」
「つまり私のお尻をぶっ叩いてくれる攻一が生まれるという事だな・・・?」
お前が嫌がる何かを見つけようと決意した攻一なら今生まれた。
「あ、攻一!」
こちらに気付くリリー。
「ま、まさか盗み聞きしてたの?! そんな卑怯な事をするとは思わなかった! もう私恥ずかしい!」
「今までで一番イラッとした」
こめかみをぐりぐりと潰してやる。
「ああああああああ! ごめんなさいいいい!」
毎回、すぐにやられるくせになぜこいつは煽るんだ?
「さてお前ら、とりあえずこれからの方針を軽く決めるぞ」
三人を向かって言う。
「解りました」
「ああ」
「解ったけどまずこめかみぐりぐりするの止めて?」
「最初に自分達の能力について知っといた方が良いだろうな」
「能力ですか?」
「ああ、女神がお前らに何かの力を授けているはずだ」
「読者の皆は文字しか見えないから解らないと思うけどまだぐりぐりされてるよ」
俺自身も前転移時の1割分の能力を確かめておいた方が良いだろう。
まずは『把握』の能力だ。
この能力は他者の能力の情報を見る事が出来る。
前転移時でも一番重宝していたといっても過言じゃない能力だ。
俺はまず鏡花に『把握』を使用した。
鷺ノ宮鏡花
『追跡』:使用した相手の位置をある程度離れていても把握する事が出来る。
『財政』:現在の世界の通貨を作り出す事が出来る。一定の時間後消失する。
『把握』:相手の能力を知る事が出来る。体力、魔力、技、魔術等は知る事が出来ない。
『拘束』:指定の相手を拘束する事が出来る。腕か足のどちらかのみ。
……能力が大分ストーカーに役立つ方向に偏ってないか?
俺は次に朔夜を確認した。
九条朔夜
『転化』:ダメージを体力、攻撃力、魔力のいずれかに変換する事が出来る。
『体力』:現在の体力を二倍にする事が出来る。
『武身』:剣、槍、弓等の基本的な武器を経験がなくても使いこなせる。
優秀な能力がそろってると思うんだが……転化の説明が気になる。……ドⅯ?
最後にリリーを見た。こめかみも離してやった。
姫野リリー
『解除』:相手の武器や防具、魔術のどれか一つを解除する事が出来る。
『転身』:自身が保有している装備を念じるだけで付け換える事が出来る。
『成長』:成長する能力を自身で決める事が出来る。
成長ってのが割とえげつない能力だが……。
「多分、身長とか胸は成長させる事は出来ないぞ」
「よく分かんないけど攻一がひどいこと言った事だけはわかるー!」
そうか、まだ自分の能力を知る事が出来ていないのか。
俺は三人に能力の説明をした。
「なるほど……説明されたら何となくですが、使えるようなそんな気がしてきました」
「私は前衛、鏡花は後衛。リリーは成長次第じゃどちらも出来そうだな」
俺はまぁ当然前衛で戦う事になるだろう。
念の為に自身の能力やステータスを確認する。
佐藤攻一
『把握』:相手の能力を知る事が出来る。体力、魔力、技、魔術まで把握できる。
前転移時で使っていただけに性能が鏡花のものより幾分良い。
――と、そこでおかしな事に気付いた。
いくら自分の中を探っても『把握』以外の能力が見つからない。
他には体力と魔力が多少上がっているだけでそれも前転移時に比べれば一割にも満たない。
どういう事だ? と考えていると一つの解にたどり着いた。
つまり全能力が一割ずつ使えるのではなく、全能力の内の一割である『把握』と少しの体力と魔力が使えるだけで残りの9割が使えない。
ほーんなるほどなるほど……。
そういう事ね、はいはい。
「よしお前ら今から天界に攻め入るぞ」
「え?! 何を言っているんだ攻一?!」
「魔王を倒すんじゃなかったっけ? ちょ鏡花さん! 『拘束』使って!」
「離せ! あのクソ女神に筋肉バスターを掛けてぶっ殺してやる!」
小ネタ
日本語って難しいね。
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