クルージング、からの遭難、4
俺もつられて軽く笑う。
流石に二人も状況と空気を読むようだ。
「よし日が高い内に火を起こす準備や水を探そう」
食料も一緒に探すが、一応釣り道具一式と餌はあるから運良く釣る事が出来れば食料はそれで調達できるだろう。
「リリーと鏡花は木が茂っている辺りから木の枝とか薪に出来そうな物を集めてきてくれないか? 出来たらすぐに火が点きそうな枯草とかそういうのがあれば助かる」
「解りました」
「おっけー」
二人が林の方へ向かう。
「あまり遠くへ行くなよー。声が届くくらいの所で探すようにな」
声を掛けると、次に俺は朔夜へ向き直った。
「俺達は石を積んで簡単なかまどを作ろう」
「了解した」
※ ※ ※
気分が落ち込んだまま木の枝を一つ、また一つと拾う。
「ふぅ」
思わずため息をこぼしてしまった。
いけない、また攻一さんを心配させてしまう。
「鏡花さん、大丈夫ー? 気にしすぎない方が良いと思うよー?」
リリーさんが声を掛けてきてくれる。
「ええ……解ってはいるんですけど。でもこの状況は私のせいですし・・・」
「鏡花さんのせいじゃないよー。考えすぎだよー」
「……ありがとうございます」
声音から本当にそう思っている気持ちが感じられ、少し心が軽くなる。
なぜこんな事になったのか?
それは攻一さんにクルージングの話をした直後にまで遡る。
クルージングに皆で行く事が決まって、私は家の人にその旨を伝えた。
その後、しばらくしてから電話が掛かってきた。
※ ※ ※
「……鏡花、私だ」
低く重みのある声が電話口から響く。
「お父様」
「クルージングへ行くと聞いたのだが」
「はい、船を借りて行こうと思っています」
「……誰と行くのだ?」
「朔夜さんとリリーさんと攻一さんです」
「……攻一というと前に話していたあの?」
「ええ、先日婚約したあの方です」
実際はまだですが、将来的に間違いなくするので一切問題は無いですね!
「…………そうか」
「はい」
「………………………………」
「・・・お父様?」
「……………………ヤダ」
「え?」
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ! 絶対ヤダー!」
父(46)が駄々をこね始めた。
「鏡花ちゃんがお嫁行くのヤダー! そんなの絶対認めないー!」
「子供みたいな事を言わないでください。今日は大事な会議があると聞いていますよ。そろそろ時間ではないのですか?」
「ポンポン痛いから休むー!」
「いい加減にしてください。お母様に言いつけますよ?」
「ヒッ! そ、それだけは……」
勢いがみるみるしぼんでいく。
「・・・な、ならば今回のクルージングで攻一君を試させてもらう!」
「はい? 何を仰ってるんですか?」
「その結果次第で攻一君との婚約を認めようじゃないか!」
「少し待ってください、私と攻一さんの他にも朔夜さんとリリーさんが――」
「じゃあ会議の時間だから!」
――ブツッ
「ちょっと、お父様!」
※ ※ ※
小ネタ
ちなみに鏡花父の会社が何をしているのかは最後まで明かされません。多分。
……いや決めてないわけじゃないんだよ?
※ ※ ※
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