クルージング、2
「…………ふぅ」
鏡花が一つ、ため息をつく。
先ほどから思ってたけど鏡花の様子がおかしい。
こう、調子が出ないというか、元気がないというか。
「…………なぁもしかして体調でも悪いのか?」
「え?」
鏡花が驚いたように振り向く。
「いや…………大丈夫ですよ?」
正直、無理をしているような気もするのだが。
「まぁ…………そう言うのならこれ以上は言わんが、他のやつを気にしてんならあんまり無理すんなよ?」
「攻一さん…………」
鏡花は素早い動きでガシッと俺の手を掴むと感極まった様子で捲し立てる。
「つまり結婚という事ですね!」
「そうはならんやろ」
※ ※ ※
その後、適当な沖合に船を停泊させ様々な事をして楽しんだ。
船上で釣りをしたり、BBQをしたり。
朔夜の物欲しそうな視線を放置したり、リリーの脱衣を止めたり。
皆、思い思いに過ごしていたがやはり鏡花はどこかぼんやりとしていた。
どうやら体調が悪いわけでは無いようだが……。
そんな事を考えている内にぼちぼち帰る時間が迫ってきた。
まだ日が高いが、明るいうちに帰った方が安心だろう。
夜の海は不安要素が多いし。
「そうか、もうそんな時間か。では片付けを始めよう」
「まだ遊び足りなーい。楽しい時間は過ぎるのが早いよー」
朔夜とリリーに帰る旨を伝えると各々で準備を始めた。俺も船の状態を確認しよう。
「それで…………申し………………、やはり……」
「そう…………いや鏡…………気に…………」
「大丈…………だよ…………、攻…………もそんな…………」
途中、三人の会話が聞こえてきて何故か内容が無性に気になった。
会話のトーンがいつもと少し違うように感じたからだろうか?
まぁ気のせいだとは思うが……。
とりあえず船の確認作業に戻ろう。
まずは燃料、バッテリー等の電気系統や計器を確認する。
最後にエンジンの確認をした、が――
「……ん?」
何故かエンジンがかからない。
始めからまたやり直してみるが、やはりかからない。
もしかして故障か……?
「どうかしたー?」
リリーがひょっこりと顔を出して聞いてくる。
「どうやら、エンジンがかからないみたいだ」
「えっ、そうなの?」
その声を聞いて鏡花と朔夜も顔を出す。
「何か問題か?」
二人にも今の状態を説明する。
「そうですか……申し訳ありません、我が家の船が」
鏡花が申し訳無さそうに言う。
「いや俺も出港前にしっかり調べなかった」
一瞬、場に沈黙が降りる。
「まさかこれは……」
「ああ……遭難状態だな」
リリーが息を飲み、言う。
「そ、そうなんだ……」
思いっきり鼻を摘まんでやった。
「やめへーーー!!」
小ネタ
次回から遭難編始まります。
「そうなんだー」
※ ※ ※
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