鷺ノ宮鏡花Ⅰ
ピンポーンとインターホンが鳴る。
時間は昼の三時。
何か荷物でも届いたかな?
そんな事を考えながら玄関へ歩いた。
「はい、どちら様?」
玄関のドアを開けるとそこには美少女が立っていた。
腰の辺りまで伸ばした長い綺麗な黒髪。
黒を基調として桜の花柄が綺麗な和服を着ている。
「お久しぶりです」
美少女が微笑みながら言う。
うん?
「えー……」
どちら様?
「あの、宜しければ中に入れていただいても?」
「あはい、どうぞどうぞ」
いやいいのか?
まぁいいか。
「失礼します」
扉の陰に居て気付かなかったが黒服で強面の人も美少女と一緒に入ってきた。
「アキラ、粗相の無いようにね」
アキラさんというのか……。
二人をとりあえずリビングへ案内する。
アキラさんは俺と美少女の間に立って付いて来た。
二人にリビングテーブルの椅子へ座るよう勧める。
美少女は椅子に座り、アキラさんは美少女のすぐ後ろに立った。
俺も美少女の前の椅子へ座る。
「それで、どんな御用で?」
「はい……その前に名乗ってもよろしいですか?」
「ああどうぞ」
名前まだ教えてもらってなかったか。
この美少女自体全く記憶にないからな。
このタイミングで教えてもらえてよかった。
「私、鷺ノ宮鏡花と申します。以後お見知りおきを」
そう名乗った美少女は恭しく頭を下げた。
その所作には気品というものが感じられる。
「どうも、俺は佐藤攻一です」
「はい、存じています」
フフと口元隠しながら笑う。
俺もつられて笑う。
「それで、今日伺った用件なのですが……」
「あ、はい」
「その……大変言いづらいのですが」
「何でしょう?」
「私と、結婚して頂きたいのです」
一瞬、沈黙が流れる。
けっこん、結婚か……。
「結婚というと、あの?」
「夫婦的なあの結婚です」
「あーはいはい、例のあの」
そうか……。
「しかし一つ問題があるんですよ」
俺は言った。
「問題ですか? というと?」
鏡花は問う。
「俺、同性愛者なんですよね」
「……そうなんですか」
「どっちかっていうと鏡花さんよりアキラさんにドキドキしてます」
「そこは知りたくなかったですね」
「初恋が小学校の頃の体育の先生だったんで」
「中々新しい初恋ですね」
「右大胸筋にアンドレ、左大胸筋にオスカルと名付ける素晴らしい先生でした」
「フランス革命が起きそうですね」
「俺にとっては革命的な出会いでしたね。あ、気に障ったら申し訳ないんですけどため口でいいです? 敬語慣れてないんですよね」
「あ、構いません。すみません配慮が足りず」
「いえいえ」
いい子だな。
なんでこんな子がいきなり俺なんかに求婚なんかしてるんだろ?
「攻一さん」
「ん、何?」
「あの、大変失礼なのですが……もしかして私の事を覚えてはいないのでは、と」
「あー……実はそうなんだよ。申し訳ない」
「いえそんな……名乗ってもいない人を覚えていろというのが無理というものですので」
「それでどこで会ったっけ?」
「この前、極道に誘拐されたときにですね」
「すごいの飛び出してきた」
「事務所に閉じ込められていた時に攻一さんが事務所のドアを蹴破って入ってきまして」
「うん」
「息子さんを俺にください、と叫びながら組員の方々を血祭に」
「したした」
「そこで私も縄を切ってもらって、ほら逃げな、と」
「なんかした気がする」
「私、恥ずかしながらそこで一目惚れをしてしまいまして」
「あーはいはい」
「攻一さんの事を寝ても覚めても想ってしまう始末で」
「なるほど」
「つい攻一さんをストーキングしてしまって」
「前回の吹っ飛ぶくらいすごいの飛び出してきた」
「で、攻一さんの昨日の夕食がカップラーメンだったじゃないですか?」
「うん、もはや恐怖だな」
「私、和食とかすごく得意です」
「そこで嬉しいとはならないかな」
大分やべぇなこの娘。
カップラーメン食ってたの何で知ってるの?
カメラとかある?
部屋を見渡した。
「あ、えっと盗撮などではなく」
「あ、だよね。ごめんごめん失礼な事を」
「家宅侵入しまして」
「留まることを知らないね」
「ごみを回収、分析しまして、カップラーメンだな、と」
「あ、もしもし警察ですか?」
「あ、繋がりません」
「はい?」
「申し訳ありません少々電波阻害を」
「ヤクザの方々よくこの娘捕まえたな」
もはやヤクザが善良に思えるレベル。
「私の家は資産がそれなりにありまして……それで狙われたのかな、と」
「確かにお金持ちっぽいね」
見た目とか所作とか。
「改めて御礼を申し上げておりませんでした。今回は誠にありがとうございました」
「いやいやそんな。偶然の部分が多いし」
そもそもシゲさん(組長の息子)を組から解放するためにカチ込んだだけだしな。
文庫本3冊分くらいのドラマがあるんだけどまぁ今はいいか。
シゲさんその後、お礼を言いながら恋人(♀)とどこか旅立ったし(泣)。
「それで、攻一さんはいつ頃、屋敷に移り住みます?」
「え?」
「え?」
「ん? 鏡花さんのお屋敷?」
「はい」
「いや住まんけど」
「えっ? でもお母さまにはもうお話が済んでますけれど」
「えっ?」
スマホを操作して母親にラインでメッセージを飛ばす。
送信――鏡花さん知っとる?
返信――100万うめぇ。
くたばれ(^o^)、と。
「鏡花。あ、すまん呼び捨てでいいか?」
「構いません」
「移り住むのはちょっと、無しの方向で――」
「部屋はアキラの隣になりますが」
「早く行こうぜ!」
鏡花の屋敷に移り住むことになりました。
小ネタ
「もし俺が移り住むのは無理って言ってたらどうしてたの?」
「もちろん平和的に話し合いを――(カシャーン)あっ手錠が」
……これはまだまだ序の口だと後々思い知る事になる。
※ ※ ※
初めましての方は初めまして。
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