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裕哉、テレビに出演する 7

〜星野愛菜視点〜


「だから裕哉くんだけだぁぁぁっ!」


 アタシの声が『閃光』ギルド内に響き渡る。


「愛菜ちゃん。ドキュメンタリー番組なんだから気楽に観ようよ。お茶でも飲みながらさ」


「和歌奈さんは気楽に見過ぎです!番組側に言いたいことが山ほどありますよ!」


 アタシは呑気にお茶を飲みながら視聴している和歌奈さんへ言う。


「まぁまぁ、落ち着いて!確かに裕哉くんの異常さが広まるだけの番組になってるけど、裕哉くんの異常さは既に周知の事実だよ!?」


「そこまで知られてませんよ!なので、初めて裕哉くんを見た人はレッドドラゴンを雑魚モンスターって勘違いするかもしれません!」


「うーん、よほどのバカじゃない限り、勘違いする人なんていないんじゃないかな?」


「現に裕哉くんの妹と幼馴染は勘違いしてますが……」


「………さて、続きを見よっか」


 記憶から裕哉くんの妹と幼馴染の存在を消して、テレビに視線を戻す和歌奈さん。


(これ、このまま放送して大丈夫かと言いたいが……まぁ、さすがにレッドドラゴンを雑魚モンスターって勘違いするヤツなんて、これ以上現れないか)


 そう思い、再び視線をテレビへ戻すと、裕哉くんがレッドドラゴンと対峙しているところだった。


『グァァァァァっ!』


 画面内のレッドドラゴンが、咆哮しながら裕哉くんに突撃する。


Q.『レッドドラゴンの討伐方法を教えてください』


『では、空飛ぶトカゲの討伐方法を解説します。飛んでる点は厄介ですが、このように剣を持って待機すると、勝手に俺のもとへ来てくれます』


 裕哉くんが突撃してくるレッドドラゴンを前に、落ち着いた口調で話す。


 そして大きな口を開けて襲いかかってくるレッドドラゴンをギリギリまで引き付け、『はっ!』という掛け声とともに剣を縦に振る。


 すると、裕哉くんに襲いかかっていたレッドドラゴンが顔面から真っ二つに切り裂かれ、魔石だけを残して消滅する。


『なので、剣を縦に振るだけで、このように真っ二つにできます』


――さすが1流冒険者。分かりやすい解説だ。


「どの辺が!?全く参考にならないんだけど!」


 本日、何度目かのツッコミをテレビに向けて行う。


「今の解説を聞いて実行できる人なんていないぞ!」


「そうだよね。今の解説は簡単に説明しすぎたから誰も真似できないよね。だから今の解説は5点かな。あ、もちろん100点満点だよ?」


「聞いてませんよ!」


 呑気に採点してる和歌奈さんに一言ツッコんでから、再びテレビを見る。


Q.『もう少し詳しく解説を』


『先程よりも詳しくとのことで、もう少し噛み砕いて解説します』


 そう言った画面内の裕哉くんが、『グァァァァァっ!』と咆哮をあげながら特攻しているレッドドラゴンを視認しつつ、剣の柄を握る。


『見ての通り、口を開いて無防備に突っ込んできてます。まるで、この口を狙えと言わんばかりに』


「そう見えるのは裕哉くんだけだよ」


 アタシは“ボソッ”と呟く。


『それに加え、トカゲの弱点である鱗の少ない顔から尻尾までの直線上を無防備に晒してます。そのため……はぁーっ!』


 そんな掛け声とともに、裕哉くんがレッドドラゴンをギリギリまで引き付けて剣を縦に振る。


 すると、先ほどと同様、レッドドラゴンが真っ二つ切り裂かれ、魔石を残して消える。


『こんな感じで瞬殺することができます』


――さすが1流冒険者の解説だ。丁寧すぎて、この解説を聞けば誰でもレッドドラゴンを瞬殺できるだろう。


「できねぇよ!このナレーター、さっきからめっちゃ裕哉くん褒めるよな!」


「そうだね。でも、今の解説は分かりやすかったと思うよ。70点くらいかな」


「だから実行できないんだって!」


 アタシは再び、呑気に採点している和歌奈さんへツッコむ。


 そんなアタシらを他所に、画面内では裕哉くんが次々とレッドドラゴンを瞬殺する映像が流れ始める。


Q.『裕哉さんにとって、レッドドラゴンとは?』


『自ら弱点を晒して突っ込んでくれることに加え、一振りで片付けられるので、楽して稼ぐことのできるモンスターですね』


――実はS級モンスターと呼ばれ恐れられているレッドドラゴンは、一振りで瞬殺できる雑魚モンスターなのかもしれない。


【完】




「そんなわけあるかぁぁぁぁ!!!!」


 アタシの声が、再び『閃光』ギルド内に響き渡った。

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