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底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。19

 何故かダメ出しを受ける俺。


「あははっ!和歌奈の弟子は面白いなっ!」


 そんな俺を見て、愛菜さんと剣を交えた状態で笑うハルカさん。


 笑っているため無防備のように見えるが、俺や愛菜さんからの攻撃にいつでも対応できるようにしている。


「でも、さすがにふざけすぎたんじゃないかい?」


「そんなことありませんよ。至って真面目です」


「なるほどね。君は君なりに本気で彼女のサポートをしたというわけか」


「俺、相手への直接攻撃が禁止されてますから。あくまで直接攻撃だけですが」


 俺は素直に弱点を伝える。


(まぁ、絶好のチャンスで攻撃しない俺を見て気づいているとは思うが)


 なんなら剣を鞘にしまって戦う気すらない。


「ふーん。なら君のことは気にせず戦えるってことだね」


「さぁ、それはどうでしょうか?」


「へぇ、君がどんなことをするのか楽しみだ……ねっ!」


 言い終えると同時に愛菜さんに攻撃を仕掛け、俺との会話を終わらせる。


 その攻撃を回避した愛菜さんが俺の隣にくる。


「愛菜さん。お願いがあります」


「なんだ?」


「愛菜さんをお姫様抱っこしても良いですか?」


「………はぁ!?」


 俺の発言に顔を赤くして驚きの声を上げる。


〈コイツ、ついにストレートに言ってきたぞ〉


〈お姫様抱っこに飢えてる……いや、セクハラしたくてウズウズしてるんだろう〉


〈あと愛菜ちゃんだけでコンプリートだからな。裕哉ちゃんも必死なんだろう〉


「わかってます。俺がバカなことを言ってることは。でも、俺はどうしても愛菜さんをお姫様抱っこしたいんです!」


 真剣な表情で伝える。


 もちろん、ライ⚪︎ーキックの被害に愛菜さんが遭わないようにするためだ。


 セクハラしたいという一心でお願いしたわけではない。


「そ、そんな熱弁されても……」


「ちなみに拒否権はありませんよ」


「うっ。ゆ、裕哉くんって時々強引なところがあるよな」


「そんなことを言ってる状況ではありませんので」


 こんな会話をしている間にもハルカさんが俺たちに攻撃を仕掛けようと、距離を詰めてくる。


「う〜っ!わ、分かった!何をするかは知らんが今回だけだぞ!」


 顔を赤くした愛菜さんから了承をもらう。


「ありがとうございます!」


「ただし重いとか言ったら殺すからな!」


「わ、分かってますよ!」


 俺は急いで愛菜さんを抱き抱え、お姫様抱っこをする。


 そしてハルカさんの攻撃をジャンプして躱す。


「うわっ!こ、これがお姫様抱っこ……」


「あれ?初めてなんですか?」


「う、うるさいっ!アタシみたいな男勝りな女には男が寄って来ないんだよ!」


〈と、言っておりますが、皆さまいかがでしょうか?〉


〈俺が今すぐにでも貰ってやるよ〉


〈明日から愛菜さん争奪戦が勃発するな〉


〈とりあえず争奪戦の邪魔になる裕哉ちゃんは殺しておくか〉


〈〈〈〈異議なしっ!〉〉〉〉


〈お前らホント仲良いよなww〉


「嫌だとは思いますが少しだけ我慢してください。すぐにハルカさんを倒しますので」


「い、嫌ではないが……は、恥ずかしくて死にそうだからはやく終わらせてくれ」


 恥ずかしさで死にそうなのか、未だに顔を真っ赤にした愛菜さんが腕の中でプルプル震えている。


「わ、わかりました」


 俺は要望通り、ライ⚪︎ーキックを見舞うため、その場でジャンプをする。


「はぇ?」


 俺のジャンプ力に驚いたのか、腕の中で変な声を上げる愛菜さん。


「舌を噛むので口を開かない方がいいですよ」


「え、待って。今から何するの?」


「もちろん、ライ⚪︎ーキックです」


「いや、説明になってないぃぃぃっ!」


 何か言ってる最中ではあったが、早く終わらせてほしいらしいので要望通り攻撃に移る。


「ライ⚪︎ーキック!」


「まずいっ!」


 流星のごとく落下する俺に危機感を抱いたハルカさんが防御に移る。


 しかし、俺のライ⚪︎ーキックを防ぐことなどできないので…


「ぐっ!」


 “ドゴっ!”という衝撃音と共にハルカさんが明後日の方向に吹き飛ぶ。


 いつもならこのタイミングで「リタイアします」とのアナウンスが聞こえてくるが、今回は一向に聞こえてこない。


〈嘘だろ、あの攻撃を喰らってまだ気絶してないのか〉


〈さすが『霧雨』ギルドのリーダー。しぶといな〉


〈だが、もう勝負は決まっただろ〉


〈そうだな。この戦場にはハルカさんしか敵がいない。『閃光』ギルドの勝利で間違いないな〉


 しばらく愛菜さんをお姫様抱っこしたまま待っていると、遠くの方から足を引きずりながら歩く人影が見えた。


「さすがですね。あの攻撃で耐えるなんて」


「僕を舐めてもらっては困るよ。これでも和歌奈と一緒に死線を乗り越えてきたからね」


 見るからに重傷を負っているが、気絶することなく自分の足で歩いている。


「でも……今回は君たちの勝ちだ。おめで……とう」


 “パタっ”とハルカさんがその場に倒れ込む。


 そのタイミングで「『霧雨』ギルド1名の気絶を確認。リタイアします」というアナウンスを聞こえてくる。


 この瞬間、俺たち『閃光』ギルドの優勝が決まった。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。


「面白かった!」「続きが気になる!」等を感じた際は、⭐︎評価やブックマークをしていただけると作者のモチベーションが上がります。


 よろしくお願いします。<(_ _)>

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