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底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。13

〜星野愛菜視点〜


 ハルカさんの発言が引き金となり、4対6のバトルが始まる。


『紫電』ギルドが全滅し、『牙狼』と『霧雨』ギルドも2人ずつ失っている今、フィールドに残っている冒険者はアタシら『閃光』ギルド5人と、この場にいる敵6人のみ。


 そのため、これ以上敵が増えることがない点に関しては安心できるが、敵には龍馬さんとハルカさんというトップクラスの冒険者がいるため、アタシらが押されている。


「君たちの実力はこんなものかい?」


「くっ!」


 ハルカさんの剣技にアタシは防戦一方となる。


「愛菜さん!援護しま……」


「ハルカさんの邪魔はさせませんよ!」


「ファイャーボールっ!」


「っ!」


 アタシの援護に駆けつけようとした芽吹が、『霧雨』ギルドの2人に足止めされる。


 奇襲を受けたアタシたちは、龍馬さんとハルカさんの誘導によりアタシと芽吹、千春と美柑に分断された。


(千春たちは龍馬さん率いる『牙狼』ギルド3人に押されてる)


 チラッと確認した時、美柑が千春を守りながら龍馬さんと対峙していたが、分断する前よりも傷が増えていた。


 今は美柑たちの戦況を確認する余裕などないため、美柑が龍馬さんの攻撃を防ぐことができてるかはわからない。


(マズい。これじゃ、裕哉くんが来る前に全滅だ)


 裕哉くんが駆けつけてくれると信じて守りに徹しているが、長くは持ちそうにない。


 すると、危機迫った千春の声が聞こえてくる。


「美柑ちゃん!」


 その声に反応したアタシは美柑の方を見る。


 そこには剣を弾かれて無防備となっている美柑と、斧を振りかぶっている龍馬さんが見えた。


「これで終わりだ」


「美柑っ!」


「君の相手は僕だよ」


 美柑を助けに行こうとしたアタシの目の前にハルカさんが現れ、アタシの横腹に蹴りを入れる。


「かはっ!」


 その衝撃でアタシは吹き飛ばされる。


 一瞬意識が飛んでしまったが、なんとか意識を取り戻して受け身を取る。


 ハルカさんの攻撃を受けたことがロスとなり、美柑に龍馬さんの斧が迫る。


「やめろぉぉぉっ!」


 アタシは必死に立ち上がり美柑のもとへ駆けつけようとするが間に合わず、美柑が吹き飛ばされる。


「っ!」


 龍馬さんの一撃が美柑の横腹へヒットし、美柑が近くの岩山まで吹き飛ばされる。


 美柑が近くの岩山にぶつかる刹那、空から誰かが飛んできて美柑を受け止める。


「ぐっ!」


 そして、美柑を受け止めた誰かが代わりに岩山に激突する。


 もちろん、この状況で誰が現れたかなんて全員が理解している。


「裕哉くん!」


「裕哉先輩!」


「裕哉さん!」


「ごめん、間に合わなかった」


 裕哉くんが腕の中にいる美柑へ申し訳なさそうに話しかける。


「お…遅すぎるわよ……裕哉」


 斧の側面で殴られたことと千春のバフが間に合ったことで意識を保つことができており、重傷は負っていないようだ。


 だが、あのまま裕哉にキャッチされず美柑が岩山にぶつかっていたら、気絶してリタイアしていただろう。


「ごめんな。俺が囮役を全うできなかったから美柑が傷ついてしまった」


「こ、これくらい平気よ……」


 と、強がった返答をするが、意識を保っているのがやっとのようで、立ち上がる様子は見られない。


 その様子にホッと息をつくが、「なに安心してるんだい?」という言葉が横から聞こえてくる。


 ハルカさんの攻撃だと思って防御を取ろうとするが間に合わず、またしても横腹を蹴られ、吹き飛ばされる。


「ぐっ!」


 しかし、今度も意識を保つことができ、リタイアを免れる。


「タフだね。並の女の子なら気絶してもおかしくないよ?」


「あ、ありがとうございます。鍛えてるんで」


 アタシは何とか意識を保ち、立ち上がる。


 その際、芽吹と千春の様子を確認すると、2人とも美柑に気を取られ、攻撃を受けていた。


(1度集合したいが……それを許しくれる相手じゃないよな)


 アタシと美柑が吹き飛ばされたことにより、全員が分断されており、芽吹が『霧雨』ギルドの2人と対峙し、千春が『牙狼』ギルドの2人と対峙している。


 そのため助けに行きたいが、アタシの相手は和歌奈さんと同等以上の実力を持つハルカさん。


 裕哉も美柑を守りながら龍馬さんと戦うのは厳しいだろう。


「僕たちは裕哉ちゃんが間に合うのは想定内だからね。裕哉ちゃんが現れても慌てる人はいないよ。それよりも、『閃光』ギルドは絶望的な状況だね」


(確かに絶望的だ。裕哉くんも服が所々破けていることから、少しダメージを受けたんだろう。美柑は動けそうにないし、芽吹と千春に関してはリタイアするまで時間の問題だろう。アタシもハルカさんと対峙するとなれば苦戦を強いられる)


 だが…


「ふっ、ウチの裕哉くんを舐めてもらっては困る」


「ん?」


 アタシの発言にハルカさんの眉が“ぴくっ!”と反応する。


「ハルカさんは美柑を守りながら裕哉くんが龍馬さんと戦えないと思ってるんですよね?」


「そうだね。重傷の彼女を地面に寝かせて龍馬さんと戦うのは無理だからね。だって、彼女に迫り来る攻撃も気にしなければならないんだから。きっと、龍馬さんとの戦いに集中できず、互角の戦いとなるだろう」


 その考えは正しい。


 アタシもハルカさんの立場なら絶対そう思う。


 だが、アタシらは裕哉の実力を知っている。


(きっと美柑を守りながら戦ってくれるはず!)


 そんなことを思っていると…


「ちょっ!何してんのよ!」


「バ、バカ!暴れるな!」


「ひゃっ!ど、どこ触ってんのよ!変態!」


「だから暴れんなって言ってるだろ!」


 等々、ケンカしてる声が聞こえてくる。


「「………」」


 場違いにも程があるため、アタシとハルカさんは無言で裕哉くんと美柑に視線を移す。


 すると何故か裕哉くんが美柑をお姫様抱っこしていた。


「いいか、美柑。このまま動くなよ。あと、変なところ触ったら後でめっちゃ謝るから」


「ふんっ!」


 その光景を見たアタシとハルカさんが固まる。


「アイツ、美柑をお姫様抱っこして戦うのか……」


「あははっ!さすが和歌奈の弟子!面白いな!」


 そして、ハルカさんがめっちゃ笑っていた。

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