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底辺配信者、千春さんとダンジョンデートをする。2

 いろいろあって今日も女装してダンジョン探索を行う。


 今回も美柑や芽吹ちゃんと同様に80階層を探索する。


「今日は私の実力を裕哉さんに知ってもらうわ」


「千春さんはサポート系の魔法が得意と聞いてます。どんな魔法を披露してくれるのか、すごく楽しみです!」


「えぇ。私は主に味方の強化や相手の弱体化といった補助魔法と回復系の魔法をメインに使ってるわ。あとは愛菜ちゃんのサポートや芽吹ちゃんにヘイトが集まらないように遠距離魔法を臨機応変に使用してるわね」


「それは働きすぎな気がします!大変じゃないですか!?」


「そうね。最初は大変だったけど今では慣れたわ」


〈「慣れた」という言葉で解決できる仕事量ではないけどな〉


〈愛菜ちゃんのサポートと芽吹ちゃんにヘイトが集まらないようにするだけでも十分すぎるのに、さらに味方を強化するバフも担当してるんだから化け物だぞ〉


〈バフなどの補助魔法は切れないように細心の注意を払わなければならない。急に補助魔法が切れて動きが悪くなる、もしくは敵の動きが良くなると戦闘に影響が出るからな〉


〈以前、千春ちゃんが話してたけど、戦闘しながらバフやデバフが切れるまでの時間を数えてるらしい。「愛菜ちゃんのバフがあと10秒で切れるからもう一度補助魔法を使わなきゃ」といった感じで〉


〈ヤバすぎww。戦いながらやっていいことじゃねぇww〉


〈芽吹ちゃんに続き、千春ちゃんもやはり化け物だったか。『雪月花』がSランクパーティーと呼ばれる所以がわかったぜ〉


「そういうわけだから、今回は私のバフ効果を裕哉さんに体験してもらおうと思うわ」


「ホントですか!?俺、バフを受けるの初めてなんです!」


 一度もバフを受けたことのない俺は、バフを体験できるということでテンションが上がる。


「体が軽くなるということは聞いてますが、体験したことがなかったので一度体験してみたかったんです!」


「愛菜ちゃんたちは体が軽くなって、バフを受ける時は気持ちが良いって言ってるわね」


「そうなんですね!どんな感じかすごく楽しみです!」


「楽しみにしている裕哉ちゃんの初めてを私がもらうことになるのだから責任重大ね。一生忘れられない気持ち良い初体験にしてあげるから楽しみにしてて」


「はいっ!」


 俺はバフを受けれることに心の中でテンションを上げる。


〈なんかエッチな会話してんな〉


〈千春ちゃんの存在自体がエッチぃからな。全ての会話がエッチな方向にいってもおかしくねぇ〉


〈あれ?いつの間にかバフを受ける話から裕哉ちゃんの処女を千春ちゃんがもらう話になってたんだが〉


〈そんな話はしてねぇww〉


〈特殊プレイすぎるわww〉


〈てか、童貞じゃなくて処女なんだなww〉


「そういうわけだから、まずは裕哉ちゃんにバフなしでミノタウロスを倒してほしいの。もちろん、比べるために全力で討伐してね」


「わかりました!」


 バフを受けることができるため、千春さんの要望に応え、全力で牛を倒すことにする。


「お!発見!」


 すると、タイミングよく数100メートル先に牛が現れる。


「じゃ、倒してきまーす!」


「えぇ、全力でお願いね」


「わかりました!」


 そう言っと腰に収めている剣の柄を握る。


 そして、両足に力を入れて一気に距離をつめる。


“ドンっ!”という地面を蹴る音と“ヒュッ!”という風の音とともに、俺は牛の首を一刀両断する。


 時間にして約1秒。


 牛は自分が斬られたことすら自覚する間もなく魔石となり消滅する。


「千春さーん!討伐完了しましたー!」


 牛を討伐するため千春さんとの距離が離れた俺は、数100メートル先にいる千春さんへ大声で話しかける。


「………これ、バフなんて要らない気がするわね」


〈激しく同意ww〉


〈A級モンスターを瞬殺する奴にバフなんか要らねぇよww〉


〈千春ちゃんの負担を増やすだけだろww〉


〈今の状態のお兄ちゃんにバフを与えたらどれくらい強くなれるかなー!〉


〈バフのない状態のユウでも瞬殺することができた。きっとバフを受けたユウなら吐息で牛を倒せるはず〉


〈どこの化け物だよww〉


〈吐息でA級モンスターを倒せるやつがいたら見てみたいわ!〉


 俺はバフをかけてもらうため、千春さんのもとへ戻る。


「バフをお願いします!」


「えぇ、要らないような気もするけど、キラキラした目でお願いされると断れないわね」


 そんなことを呟きながら千春さんが持っている杖先から赤色の光が生まれる。


 その光が俺の身体へ触れると、吸い込まれるように消えていく。


「今のは身体強化のバフよ。これで攻撃力や防御力、素早さが少し上がったと思うわ」


「おー!軽い!」


 俺はその場で軽くジャンプをする。


〈身体が羽のように軽そうだな。見てるだけで軽さが伝わってくるぞ〉


〈20メートルくらいジャンプしてるからなww〉


〈バフ受けても20メートルはジャンプできねぇよ!バフって身体能力を少し上昇させるだけだから!〉


〈くっ!なんで今日に限って裕哉ちゃんはスカートじゃないんだ!〉


〈今その感想抱くの間違ってるからww。20メートルもジャンプしてることに驚けよww〉


「じゃあ、この状態でモンスターを倒してきます!」


「え、えぇ。全力でお願いね」


 なぜか表情を引きつりつつ返答をする千春さん。


「お!またしても牛発見!」


 すると、タイミングよく牛が数100メートル先に現れる。


 バフをもらった状態ともらってない状態を比べるため、先程と同じ動作で牛を倒す。


 俺は腰に収めている剣の柄を握る。


 そして、両足に力を入れて一気に距離をつめる。


 すると先程よりも大きな“ドンっ!”という地面を蹴る音と“ヒュッ!”という風の音とともに、俺は牛の首を一刀両断する。


 時間にして約0.5秒。


 牛は自分が斬られたことすら自覚する間もなく魔石となり消滅する。


「おぉ!千春さーん!バフってすごいですよ!俺、こんなに速く牛を倒したことないです!」


 俺は手放しで千春さんのバフを褒める。


「………そうね。見たことないスピードでミノタウロスを討伐してたわ。私のバフってすごいわね」


〈千春ちゃんが現実逃避しとるww〉


〈戻ってきて!現実逃避したくなるけど戻ってきて!〉


 そんな感じで、俺はバフの凄さを体験した。

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