底辺配信者、『閃光』ギルドに所属する。
【2章開始】
俺は『閃光』ギルドに所属することとなり、明日、ギルドのみんなに所属したことを報告することとなった。
「へー!お兄ちゃん、『閃光』ギルドに所属することになったんだ!」
「『閃光』ギルドは日本でも有数のギルド。ユウ、すごい」
「まさか裕哉くんが女性しかいない『閃光』ギルドに所属することになるなんて。今まで頑なに男性をギルドメンバーにしなかった和歌奈ちゃんが男性である裕哉くんをメンバーに加えたということは、それだけ今回のギルド対抗戦に燃えてるのね」
俺は今、美月と紗枝、そして七海さんと一緒に晩御飯を食べながら談笑している。
「『閃光』ギルドは男子がいないので俺が所属したら問題になると思いましたが、和歌奈さんには考えがあるらしいです」
「そう。和歌奈ちゃんが言うなら問題ないのでしょう」
そう言って七海さんは食事を再開する。
「でもお兄ちゃん、『閃光』ギルドなんて入って大丈夫なの?」
「ん、私も心配。あのギルドは日本でもトップレベルのギルド。強いモンスターを倒せないユウには場違いな気がする」
「俺もそう思ったんだけど、今どきギルドに所属してない冒険者って少ないから良い機会だと思ったんだ。それにトップレベルのギルドといっても俺のように雑魚モンスターしか倒せない冒険者もいるはずだ。俺はその人たちと仲良くするよ」
「なるほど!確かに『閃光』ギルドにもお兄ちゃんと同じくらいの実力の人がたくさんいると思うから、その人たちと楽しく探索すればいいね!」
「それなら心配いらない」
「あぁ!そして上手い冒険者から技術を盗んで今以上に強くなってやるよ!」
「その意気だよ!お兄ちゃん!」
「ん、いずれS級モンスターを倒せる冒険者になって」
「あぁ!任せとけ!」
俺は美月と紗枝の期待に応えることができるよう、頑張ろうと決意する。
その横で…
「はぁ、ボケが多すぎて困るわ。誰のせいでこんなバカな子に………うん。どう考えても私と和歌奈ちゃんのせいね」
そんなことを呟いてた。
翌日、俺は『閃光』ギルドの方々に挨拶をすることとなり、『閃光』ギルドを訪れる。
「おはようございます、和歌奈さん」
「あ、裕哉くんおはよー!」
ギルドに入った俺はロビーにいた和歌奈さんに声をかける。
「何やら忙しそうですね。バタバタしてますし」
「そうなんだよ!実は今から生配信することになったんだ!」
「へー、生配信ですか。何を配信するんですか?」
「裕哉くんが『閃光』ギルドに入ることを生配信するんだよ!」
「………はい?」
「裕哉くんが『閃光』ギルドに入ることを生配信するんだよ!」
「いや、聞こえてますから」
(聞こえなかったのではなく、和歌奈さんの発言の意味が理解できなかっただけだから)
俺がそんなことを思っていると、星野さんが話しかけてくる。
「なんか、ギルド対抗戦のために裕哉くんを自分のギルドに勧誘しようとしてる人たちが多くいるらしいんだ。だから裕哉くんは『閃光』ギルドに加わりましたってことを配信によって拡散するんだ」
「雑魚モンスターしか倒せない俺が必要となるくらい、ギルド対抗戦って人手がいるんですか?」
「裕哉くんが加わるだけで優勝がグッと近づくからな」
「へー」
「いや反応薄っ」
そう言われても雑魚モンスターしか倒せない俺が加わったところで優勝できるとは思えないので、リアクションが薄くなってしまうのは必然だ。
「愛菜ちゃんの言う通り、他のギルドは裕哉くんを自分のギルドへ誘おうと躍起になってるの!だからこの配信は裕哉くんのためでもあるんだよ!」
「俺のためですか?」
「うん!裕哉くんの素性を調べ上げたギルドが鬱陶しいくらい裕哉くんに声をかけてくるはずだよ!勧誘するために!」
「それは嫌だな」
「というわけで、さっそく『閃光』ギルドに加わったことを配信するよ!」
「そういうことなら分かりました。俺は何をすればいいですか?」
俺のために配信してくれるということなら断る理由なんかないため、俺は和歌奈さんの指示を仰ぐ。
すると、和歌奈さんの目が“キラーンっ!”と光る。
「ねぇ、裕哉くん」
「な、なんですか?」
「私たちは裕哉くんのために配信をするんだから、裕哉くんは私の言うことを何でも聞いてくれるよね?」
「そ、そうですね。和歌奈さんは俺のために動いてくれてますので、俺にできることなら何でもします」
俺は思っていることを素直に口にする。
「ふふっ!その言葉を待ってたんだよ!」
「………はい?」
突然、俺の言葉を聞いて満面の笑みとなる和歌奈さん。
「愛菜ちゃん!今の言葉、バッチリ録音したよね!?」
「もちろんです、和歌奈さん」
星野さんの持ってるスマホから「なんでもします」と言っている俺の声が聞こえてくる。
「なっ!」
「よし!じゃあ、さっそく、裕哉くんには裕哉ちゃんになってもらいます!愛菜ちゃん!あとはよろしくね!」
「わかりました」
「え、あ、ちょっ!」
俺は星野さんに引っ張られ、とある部屋に連れて来られる。
「星野さん!裕哉ちゃんってなんですか!?」
俺は和歌奈さんの発言で気になった部分を聞く。
「すまない。アタシは裕哉くんを守ることができない。なぜなら………アタシも裕哉ちゃんを見てみたいから!」
そう言って星野さんが部屋の扉を開けると、部屋の中には女物の洋服を手にした園田さんと化粧セットを手にした足立さんがいた。
「そういうわけだから、私たちは裕哉さんを裕哉ちゃんにすることになったの」
「ウチらに身を委ねてくれれば、可愛い裕哉ちゃんになりますから!」
「あぁ。あとはアタシらに任せろ」
「え、えーっと……み、皆さん。目が怖い……」
その後、とある一室から男性の叫び声が聞こえてきたが、誰も助けに来てくれなかった。




