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底辺配信者、みんなと帰還する。

「頼むから自分の実力を把握してぇぇぇ!!!」


 星野さんが本日何度目かの大声をあげる。


 だが、俺は自分の実力をしっかりと把握することができているため、首を傾げる。


「あ、ダメだ。アタシの言葉を理解できてねぇ」


〈諦めろ、愛菜ちゃん。コイツに分からせることのできる人なんていねぇ〉


〈師匠である和歌奈さんが諦めたんだ。なに言ってもダメだろ〉


〈きっとコイツは知力を代償に戦闘力を上げてるんだよ〉


〈その説、あり得るww〉


(俺がS級モンスターをキャリーバッグで倒せるほどの実力を持ってるって星野さんは言ってるが、そもそもS級モンスターがキャリーバッグで倒せるわけないし……うん。やっぱり奴は雑魚モンスターの『空飛ぶトカゲ』だな)


 俺は1人で納得する。


「もういいや。裕哉くんのことは置いといて、これからのことを話し合うか」


「そうね。裕哉さんの実力については私たちが指摘し続ければいずれ裕哉さん自身で気づいてくれるでしょう」


「ですね。ウチらが裕哉さんの異常さを指摘し続ければいずれ………気づいてくれますよね?」


「アタシが聞きたいわ」


〈でも俺たちがやれることは指摘し続けることだ〉


〈あぁ。俺たちは『yu-ya』に言い続けて、自分自身で気づかせるしかねぇ〉


〈俺たちや和歌奈さん、『雪月花』の3人の声も届かなかった今、『yu-ya』自身に気づいてもらうしか策はない〉


〈となると俺たちがやることは、ひたすら『yu-ya』にツッコミをすることだな〉


〈今とやってること変わらねぇww〉


 3人は俺の変なところを指摘し続け、俺自身でおかしな点に気づいてほしいらしい。


(俺におかしな点があるのか?)


 そう思い考えるも見当がつかない。


(まぁ、今後も指摘し続けるって言ってるから、いずれ気づくか)


 そんなことを思う。


「さて、今後について話すぞ」


「あれ?星野さん、もう大丈夫なんですか?」


「あぁ、千春と芽吹のおかげで少し回復したからな。まぁ、先ほどのやり取りで回復した体力を全て使い切ったけど」


〈そりゃ、大声でツッコミしてたら一瞬で体力なくなるわ〉


〈俺の愛菜ちゃんがいつの間にかツッコミマシーンになってしまった……〉


〈でも、愛菜ちゃんのツッコミのおかげで配信が面白いから、愛菜ちゃんには頑張ってほしいな〉


〈それww。愛菜ちゃんには無理せず頑張ってほしいww〉


「とりあえず、2階にレッドドラゴンが出現することがわかった。これは異常事態なので、一度、和歌奈さんに連絡して今後のことを決めたいと思う」


「わかりました」


「私たちもそれでいいと思うわ」


 俺たちは星野さんの提案に同意し、和歌奈さんにメッセージで指示を仰ぐ。


「ふむふむ、なるほど。和歌奈さんから一度帰還しろとのお達しだ」


「じゃあ、1度帰りますか。和歌奈さんの指示なら従うしかありませんから」


「えぇ。もともと下調べが目的だったから、この辺りで帰還して問題ないと思うわ」


「S級モンスターがいる中をこれ以上探索したくはなかったので助かりました」


 俺たちは和歌奈さんの指示通り、帰還する運びとなる。


 そのため、視聴者への挨拶を行う。


「申し訳ありませんが、本日の配信はここまでとさせていただきます。今日は短い時間となりましたが、視聴していただきありがとうございました」


〈短かったけど楽しかったぞ!〉


〈レッドドラゴンが出現する場所をこれ以上探索できませんので、仕方ありませんよ!〉


〈次の配信も見るからなー!〉


〈次も『yu-ya』とのコラボをお願いします!〉


「皆さん、ありがとうございます。また、次の配信で会いましょう」


 俺たちは星野さんの言葉に合わせてカメラに向けて手を振る。


 そして、カメラをOFFにする。


「さて、和歌奈さんのもとへ行くか」


 俺たち4人は『閃光』ギルドを目指して歩き始めた。





 和歌奈さんのいる『閃光』ギルドに到着する。


 そして、和歌奈さんの部屋を訪れる。


「まさか、2階層からS級モンスターが現れるなんて。裕哉くんを連れて行って正解だったよ」


「そうですね。アタシらだけじゃ全滅してた可能性がありましたから」


 真面目な顔で話していたので「俺なんかいなくても全滅してないよ」という話の腰を折る言葉は飲み込む。


「今後については七海会長と話してみるよ。とりあえず今日は私の依頼を引き受けてくれてありがと。特に裕哉くんは私のギルドメンバーじゃないのに、引き受けてくれて助かったよ」


「いえ、これくらい問題ありませんよ。また困ったことがあればいつでも依頼してください」


「うん!さすが私の弟子だよ!」


 和歌奈さんが真面目な顔から満面の笑みとなる。


 どうやら真面目な話は終わったようだ。


「さて、裕哉くん!私からお願いがあるんだー!」


「お願いですか?」


「うん!今度、年に1回行われるギルド対抗戦があるんだよ!」


 ギルド対抗戦とは、日本にあるギルドの中で1位を決めるイベントで、ダンジョン1階層を魔法で競技場や森などのステージへと変えて冒険者同士が戦うイベントだ。


 その様子はドローン型のカメラにて生配信されており、誰でも見ることができるため、冒険者ではない視聴者からも人気の高いイベントとなっている。


「去年『閃光』は『牙狼』というギルドに負けて2位だったんだ」


『牙狼』とは日本にあるギルドの1つで、所属している冒険者の数が最も多く、実力者が多いギルドだ。


「日本で1番強いギルドは?」と聞かれたら全員が『牙狼』と答えるくらい日本で1番強いギルドだ。


「去年は『牙狼』に負けて悔しい思いをしたから、今年こそは『牙狼』に勝ちたいんだよ!そこで私の弟子である裕哉くんに『閃光』ギルドに所属してもらい、ギルド対抗戦に出場してもらいます!20歳以上の冒険者なら誰でも参加できるからね!」


 このイベントは冒険者なら誰でも参加できるというわけではなく、20歳以上の冒険者という決まりがある。


 そのため、昨年まで19歳だった俺は昨年のギルド対抗戦に参加できなかった。


「えーっと、出場してもいいのですが、『閃光』ギルドって冒険者と職員が女性しかいないギルドですよね?男である俺がギルドに入っても大丈夫なんですか?」


「もちろん!大丈夫じゃないよ!」


「大丈夫じゃないんかーい」


 どうやら大丈夫じゃないらしい。


「でも安心して!その点は考えてあるから!」


「まぁ、和歌奈さんに考えがあるなら俺は構いませんよ」


「よしっ!というわけで今日から裕哉くんは『閃光』ギルドのメンバーだよ!よろしくね!裕哉ちゃん!」


「………裕哉ちゃん?」


 和歌奈さんの呼び方に引っかかったが、俺はスルーすることにした。


 後に、スルーしたことを盛大に後悔するとは思いもせずに。


【1章完結】

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[一言] ・・・ちゃん? おっと私の好みの展開の予感(wktk)
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