壊れたワタシの治し方
――あれは雨の日だった。私の平凡な毎日が音を立てて、ガラガラと。壊れた日。
そして、憎くも愛おしく、大嫌いで愛している貴方に会った日。いや、出会ってしまった、日。
私は精神を病んでしまい、この前まで働いていた所を辞める事となった。
皆は「無理しないでね。」「今までお疲れ様。」と口々に言っていたが、私には、私にとっては全てどうでもよかった。もう、そこまで気が回らなかったとも言えるかもしれない。
そこまで私は疲れ切っていたのか、と、他人事のように感じていた。
荷物を纏めて帰ろうと帰路についていた時だった。
――「ねぇ、どこに行くの?そのまま歩いて行くと何があるの?」と。
鮮やかな、とてもこの世のものとは思えないほど奇麗な白い傘。幻覚なのかと思った。
だって白い傘なんて見たことも聞いた事も無い。
――「ねぇ、聞こえているんでしょ?どうして聞こえないフリをするの?」
私は何も言えなかった。というよりも、何も言ってはいけない気がした。何故話しかけてくるのだろう。何故気にかけてくるのだろう。何故、私なのだろう。
何故、ばかりが頭の中に溢れかえっていた。何故、何故、何故。わからない。理解が出来ない。
――「何か言いたいことがあるなら言いなよ。今までそうやって一体何人の自分を殺してきたのさ。」
まただ。何故、この人はそこまで踏み込んでくるのだろうか。
自分を殺す事は慣れているはずなのに。何故躊躇っているのか。
――「ま、何も言わないならそれで良いけどさ。」
諦めてくれたんだ、とふっと気持ちが軽くなる。知らない人のはずなのに何故か安心感を感じてしまう。
この人は一体…いや、何故私を知っているのだろうか。
――「53人。そこまで沢山の自分を殺すかねぇ?」
どうせ貴方にはわからない、と言いかけた口が言葉をそのまま飲み込んでしまった。
そもそも貴方は、いや、貴方で合っているのか。聞いた。聞いてしまった。
――「僕は、ね。お姉さん自身だよ。信じてもらえなえないかもしれないけれど。」
あぁ、そうか。
この人に対して私が発言が出来なかったのも。何故、で頭の中が溢れていたことも。
全て答えは簡単な事だった。
あぁ、こんなにも憎くて愛らしくて、死ぬほど大嫌いだけど愛してしまう。
今まで殺してきた 私 だ。
ごめんなさい、と私はぽつりと呟くように声を絞り出した。
――「もう、自分を殺す必要は無いんだよ。自由になっていいんだよ。」
それを聞いた私は自分でも気づかないうちに一筋の涙が零れ落ちていた。
あぁ、雨が降っていて良かった。私の涙に誰も気づかないから。
私は少しだけ微笑みながら、家に帰った。
初作品ですので、ここが駄目、ここが良い等あれば是非ともコメントでご指摘ください。
何本か短編を書いて、PCに慣れてきたら長編書きたいと思います。