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ターリアのユメのセカイ  作者: ハル
第1章 マッチ売りの少女(Den lille Pige med Svovlstikkerne)
3/6

逆行転生2

 暗闇を進むうちに身体が軽くなってきた。それでも前に歩いている感覚があるから不思議だ。

 そんな感覚を楽しく感じ始めた頃、不意に足が何かにハマってしまった。と同時に身体中が絡め取られたような感覚に襲われる。

 しまった。何処かで何かを間違えてしまったと思い身を捩らせるがダメ。どんどん身体の自由が効かなくなっていく。それでもオレはなんとか抜け出そうと身体中をよじらせる。

 「コノッ、クソッ」

 「おい巻島、何と戦ってるんだ!?」

 ー授業中の教室だった。

 窓から見える空も、校庭から聞こえる声も、机も椅子も教室も、何もかも懐かしい。そうやって急に切り替わった視界に少しボーっとしていたら、いつの間にか近くに居た担任の女教師に軽く小突かれた。懐かしのさっちゃん先生だ。咲子先生でさっちゃん。

 「私の授業中に居眠りとはいい度胸だな。よし、どんな夢を見てたんだ?言ってみろ。」

 これはちょうど記憶にある場面だ。確か前回はしどろもどろな答えになって恥ずかしい思いをしたんだ。

 それならば、あの時すぐには思いつかなかった返しをしてみよう。

 「すみません、夢の中で授業受けてました」

 さて、どうでる?

 「ん?そうか…ならこの問題解いてみろ!」

 さっちゃん先生は一瞬怪訝な顔をした後、少し不機嫌そうに黒板を指差し答えた。

 予想通りの展開にオレはしめた、と思う。あの時出来なかった妄想の為に何度も解いた問題だ。

 「出来ました」

 「む…」さっちゃん先生はオレの書いた式と答えをしげしげと眺めたあと、少し嬉しそうな顔をした。

 「さては予習してきたな。居眠りはいかんがしっかり予習しているのは偉いぞ」

 「どうも」

 「みんなも、これから授業はどんどん難しくなっていくからな。しっかり予習復習するんだぞ」

 ふぅ、どうやら今回は恥をかかないで済んだみたいだ。

 ほっとしながら席に着くと、後ろから小声で話しかけられた。

 「すごいね巻島くん、ボクなんか予習してても分からなかったよ」

 ー柔らかい風が吹いた気がした。

 それと同時に切ない気持ちになる。

 そうだ、この声にオレは憧れを抱いたんだ。

 振り返るとそこには緩めのお下げの似合う可愛い女の子、オレの初恋の人、荻野陽奈おぎの ひなが居た。

 「夢の中でどんなお勉強してたんだい?何だか戦ってたみたいだけど。」

 陽奈はイタズラっぽく、猫のように目を細めながら問いかける。あれが寝言だと思われてるのはちょっと恥ずかしいな。

 「うん、実は全然違う夢を見てた」

 「やっぱり、どんな夢」

 う、さすがに「キミに告白したくて未来から来た」なんて説明出来ない。

 「ブループレアデスってゲームやってる夢」

 「えー!?BPやってるの?ランクは?武器は?好きなフィールドは?」

 やたら食いついてきた。ちなみにブループレアデスは当時オレがハマってたマイナーゲーム。

 「え?荻野さんもやってるの?」

 「うん、メッチャハマってるよ。かなりマイナーなもんだから仲間が居なくて困ってたんだ。」

 と言いながら手をすくめてみせる。

 「巻島くん、良かったら今度…」

 「こらそこ、ヒソヒソ話しをするな!!」

 …さっちゃん先生に邪魔された。せっかくいい感じだったのに。

 と思ったら、後ろから小声で「後でね」だって。

 これから楽しくなっていきそうだ。

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