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睡気

「ただいま。」

夕暮れ時に蓮木は帰宅した。


そして荷物をソファーに投げると、自身もソファーに制服のまま身を投げる。

「....疲れた。」


今日は体育があった日、疲れはより一層だ。


蓮木はソファーの上で寛ぐ。

ここは自宅。一番安心できる場所だ。だから思い切りだらけることができる。

制服がヨレてしまおうと、スカートがめくりあがった状態になろうとお構いなしだ。


そうしてうつらうつらと睡魔が彼女を襲う。


「鈴?帰ったの?....って!」


娘のそのあられもない姿を見た母は驚愕する。


「あんたってば、年頃の女子が....。」


「....お母さん?」


「あんたねぇ、せめて着替えてきな?」


「はぁい....」


重い体を持ち上げた彼女は制服を脱ぎ、ラフな服装へと着替える。


そうして再びリビングに降りると、どかっとソファーに再び倒れこんだ。


「ああ...、寝れる...。」


そうして瞼を閉じようとしたときに、何者かが彼女の顔をペロッとなめて、その邪魔をした。


「ん?」


ヘッヘッヘッヘッヘ!


そこにいたのは飼い犬のペロだった。


「ペロ....そっか、お散歩いかなきゃだね。でも..ちょっとだけ」


再び彼女が目を閉じると。


ペロペロペロ


とペロがまた顔をなめる


「.....わかった。いこっか。」


根負けした彼女は、小袋とリードをもって散歩に出る。


まだかろうじて日が出ている住宅街を、彼女たちは歩いた。


「上着もってくればよかったな...。」

もうすぐ夏が近づいてきてるとは言っても、まだ少し肌寒い。


そこにもう見飽きた顔が現れる。


「はーすきー!!」


「うわ」


「えー!うわってなによ!うわって!」


朝だろうと昼だろうと夕方だろうと元気いっぱいな木塚。

パンパンに入ったエコバックを抱えている様から、おそらくお使いの帰りだろう。


「お!今日はダブルハスキーか!おーしおしおし!元気にしてたかハスキー2号!」


そういいながら木塚はペロの頭や首の下をなでる。


「勝手に名前つけるな...。」


しかし撫で続けてもペロは無表情のままうんともすんとも言わない。


「ねぇ、この子しっぽ振らないんだけど!」


「....へたくそ」


「あ!やば!もう帰んなきゃ!今日ギター探偵がある日なんだから!」


「は?」


「知らないの!すっごい面白いんだよ!今日スペシャルなんだから!」


「へぇ」


といい、木塚は去っていった。


「私たちも、かえろっか」


家に帰ったら今度こそ寝る。夕飯までの短い時間だけど、絶対寝る。そう決めて蓮木は帰宅する。


「..ただいま」


「あ!お帰り!お夕飯できてるから、手洗って食べな!」


「え?」


食卓を見ると、そこにはすでに料理が並べてある。


「早い...。」


「今日、お父さん遅いみたいだからね。早めに食べちゃおうって思ってね。」


手を洗った鈴はテーブルに着く。


「じゃあ!いっただきまーす!」


「....まーす」


「どうよ今日のエビチリ!エビが安かったんだ!」


「...辛い」


夕飯を済ませたらすぐ寝る。もうこれ以上は先延ばししたくない。


「...ごちそうさま」


「はーい。お粗末さん。あ!そうだ、もう始まってるかな?」


そういって母はリモコンを使ってテレビをつける。


「よかった!始まったばっかりだね。」


食器を流しに置いた蓮木はそのまま自室へ行こうとする。


「あ、鈴!これ、面白いんだよ!見ていきなよ!」


「..眠い」


「まぁ、そういわずにさ!損しないって!」


そういわれしぶしぶソファーに座ってテレビを見る。


『どんな人でさえも、彼の奏でる旋律を欺くことはできない。そう、彼がギター探偵、アキラ!』


(ああ...これか、キツネが言ってたやつ)


つまらなかったら、即寝てやろう。そんな軽い気持ちで見始めたのが運の尽きだった。


―――――――――――


『ええ、私の譜面は完成しました。犯人は間違いなく、あの人だ!・・・』


「ああ!またいいとこでcmだよ!終盤になるといつもこれだもんね!」


それは予想以上に面白かった。蓮木もその話の流れにズルズルと引かれ、眠れないでいた。


「ね!面白いでしょ....ってアンタすごい顔してるよ」


母はわらいながらそういう。


それもそのはず、彼女の眠気はすでにマックス状態。


(終わったらすぐ寝てやる..。)


よってきたペロをなでながらそう誓った。


――――――――――

「あー!やっと終わった!面白かったぁ!」


「....寝る」


蓮木はふらふらと自室に向かった。


「その前に、歯磨いてお風呂入りな、お風呂で寝ちゃだめだよ!」


....まだ寝るまでの道のりは長かった。


ちゃぽんと湯舟につかる彼女。体を洗うなんて面倒なことは先にやってしまって、静かに湯舟に体を入れる。


(.....ねむ)


ゆっくり瞼を閉じようとする。


(...いけない)


前にも風呂で寝かけて散々な目に遭った。何とか意識を保とうと努力する。

(えっと...1.2.3.4.5.6.2.3.7..........)


パッと目を開く


(だめだ、えっと何すればいいのかな。羊だっけ)


(羊が一匹、羊が二匹、羊が......さ.....n...)


またパっと目を開く


(これは違うな...もう上がろう)


なんとか這うように風呂から上がる。


そして髪の毛もそこそこに乾かしてルームスエットを着る。


「おやすみ...。」


「はーい、おやすみー!」


バランスボールでストレッチする母を横目に彼女は自室へ戻り、ベッドに横たわる。


(寝れる...至福。)


その時、急にスマホの着信音が鳴り響く


「...なに」


迷惑そうにそれを拾い上げて、相手も確認せずに耳に当てる。


『あ!ハスキー!よかった起きてた!あ、ギター探偵見た?』


「おやすみ」


そういって木塚からの電話を切ろうとする。


『あああ!まってまってまって!!この間の課題のさ、四番がわかんなくて!教えてよ!』


「タヌキに聞けば...」


『だってタヌキほとんど電源きってるんだもん!つながんないよ!』


「英語なんて、答え見ればいいでしょ...。」


『英語?違うよ!物理だよ!』


「物理..?」


『そそ。......え?もしかしてやってない?』


「記憶に...ない」


『ありゃ、藤峰っち提出物には厳しいよぉ~。』


「....まじか」


蓮木は急いで鞄を開ける。


『できたらおしえてねぇ~』


机にノートと教科書を開いて机につく。


「寝か....せろ...。」






登場人物紹介

・母(蓮木 靖子(はすき やすこ)

蓮木家の母。気の強い性格で旦那はいつも尻の下、だけど夫婦仲は良好。漫画やドラマが大好き。

娘がおでこちゃんなのは母親譲り。


・ペロ(ハスキー犬)

子犬の時に里親として蓮木家にもらわれてきたオス。名前の由来はペロペロよく舐めるところから安易につけられている。飼い主に負けず劣らずよく寝る。

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