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04 指輪の起動

 地下の倉庫にて暗闇の中、薄っすらと光る指輪があった。


「キドウシマシタ」


 と、突然の無機質な声。

 全くもって感情の感じられない声でさらに、


「スキャンヲカイシシマス」


 さっきの光と違い、青白い光が指輪から広がる。

 まるで、水面に物が落ちた時に出来る波紋のようにも見える。

 その青白い光の波紋が幾重にも重なり、地下倉庫を埋め尽くす。

 壁や地面、天井や、品々からは反射して波紋が戻って来るようにも感じる。

 しかも、俺の魔力をグングン吸い取っていく。

 しばらくの間、口を開けて”ほけー”としていた、誰かに見られていたら超絶恥ずかしいところやで。

 人の呆気にとられた顔を見るのは好きやけど、自分のそんな姿は誰にも見せとうないわ。

 悶死してしまうわ。

 と思ったところで、さらに声が聞こえる。


「状況を理解しました。 マイマスター指示をどうぞ」


 ん?どうした?

 急にさっきまでの無機質な声ではなく流暢に話すじゃないの。

 ってか、指示? 俺が指輪に指示するんか?

 こっちが状況を理解出来てへんけど、指示をくれと言うなら言ってやろうじゃないの。


「指輪よ指輪よ指輪さん、この倉庫にあるものを全て納めてくださいな」


 まぁ無理やろうと思いつつ、ダメもとで無茶ぶりをしてみた。


「了解しました。10秒お待ち下さい」


 は?

 10秒?

 秒っていうのは時間の単位で、そんなに長くない時間の単位であると知っている。

 爺ちゃんと昔、お風呂に一緒に入った時は100まで数えるのがルールで数を数える時のタイミングというか”間”を教えてもらったっけ?

 最近、王都でも時間とは何ぞや?と教育があるらしい。兄貴が自慢げに言っとったわ。

 俺は昔を思い出しながら、10秒を数える。


「いーち、にーい、さんまのしっぽ、ごりらのむすこ、なっぱ、はっぱ、くさったとーふ。っと」


 するとどうだろう、指輪が指に収まった時と同じような眩い光が部屋を埋め尽くし、真っ白な空間に。

 驚きの白さやで。

 白い空間が一瞬点滅したと感じた瞬間、”ドクン”頭に強い衝撃が走る。

 まるで鈍器で激しく殴られたような衝撃だ。


「が、がぁぁあぁぁあぁぁぁぁああ」


 俺は割れそうな頭を押さえて必死に頭痛を耐える。

 どれくらい経っただろうか。

 しばらくの間、頭を押さえて必死に痛みに耐えるべく、座り込み、さらに体を丸く縮めこんでいた。

 最終的には体を丸めたまま横に寝転んで、いや、うずくまって耐えていたようやわ。

 体温は激しく低下し、ガタガタぶるぶるで力が入らへん。

 顔や背中、腕などから変な汗が出てきてやめられない止まらない。

 時間と共に徐々に頭痛も収まり体の震えも収まったところ、目を開けてみれば、さらに別の頭痛に悩まされる。

 全部無くなっとるがな……

 途方に暮れるっちゅーんはこういう事か。

 地下の倉庫にあった、木彫りの置物などの郷土品、爺ちゃんが持ってきた数々の魔道具も、長年積み重なっていた埃も何もかもが無くなっとった。

 そこに目に見えるものは、俺と指輪と床と壁。


「えっと、指輪さん? どゆこと?」


 普段の俺なら、うぇーい、なんでやねーん!

 とか、いやーまさか俺がドッキリに会うとはなぁ、ってなんでやねん!

 とかツッコミが入るところが、あまりにもあまりな状況で、何も考えずに素で聞いてしもた。

 転移したという訳でも無く、間違いなく自身が居た地下倉庫ってのは分かる。


「マスターの魔力ではギリギリの容量でしたが、死ぬ事は無いと判断し、実行しました。 こちらが品目です」


 死ななければ良いって、どんだけやねん。

 まぁ、ええわ。 確かに死なんければええわいな。

 あの頭痛はもう二度となって欲しゅーないけどな。

 ほんで?品目?

 指輪から薄く青い光の膜が目線に合わせて具現する。

 ブゥンという音が聞こえたような気もする。気のせいか?

 驚く事に俺の目を右に動かせば、薄い膜も右に移動し追従してくる。

 それでいて、文字は母国の文字で俺でも読める。

 その品名の文頭部分には精工な絵とも言える先ほどまで地下倉庫を埋め尽くしていた品々の姿形を表している事で、さっきまで倉庫にあった物が一覧で表示されているのが分かる。

 ってか、爺ちゃんに聞いてた魔道具の正式な名称っぽいのまで見れるってどんだけやねん。

 どういう原理かは分からんけど、そっか、地下にあった物の全てを文字と絵姿にしてこの薄っぺらい膜に焼き付けてしまったんか。



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