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短編

「はいごれいのれい子さん」

作者: れい子

「はいごれいのれい子さん」


 そう言って絵本のタイトルを呼んだのは、私が居る幼稚園の園長先生でした。

 背後霊はいごれいのれい子さん、いつも読み聞かせの時間になると、周りの子達がこの絵本を読んでと先生にお願いします。

 だから、この絵本は読み聞かせの時間の定番絵本でした。

 ただ、私はこの絵本があまり好きではありません。嫌だな、と思っていると園長先生が絵本をめくり読み始めます。


「れい子さんはとっても元気な女の子でした。いつも幼稚園の中を駆け巡り、皆と仲良くしていました」


 園長先生が明るく読んでいるので、周りにいる皆もつられてにこにこと聞いていました。


「ある日、れい子さんは幼稚園の中にある池に間違えて入ってしまいました」


 先程の態度と一変、園長先生が私達を怖がられるために声を低く、ゆっくりと喋りだしました。


「れい子さんは寒いよ、寒いよとひっしに言いましたが、そのまま池の中で寒くて死んでしまいました。死んでしまったれい子さんははいごれいとなり、自分と同じ寒くて寒くて仕方がない子に対し、私と同じだね、と言うのです」


 物語の終盤に差し掛かり男の子は、怖くねーしと強がり、女の子は、意味が分かってない子が半分、ちょっと泣いている子が半分程いました。


「でも、大丈夫! れい子は皆を守ってくれるはいごれい。皆が幼稚園でケガをしないようにいつも見守ってくれてるんだよ。おわり」


 最後はやはり明るく読み聞かせる園長先生に、皆は甲高い声を上げたりぱちぱちと拍手を送っていました。


 ただ、私は怖くて怖くてたまりません。寒気がして、絵本を読んでいる最中はなぜか落ち着けません。

  でも寒いと先生に言ってしまうと、物語に出てくるれい子さんに話しかけられそうで怖いです。だから何も言えずじっと待っています。

 ふと目の前を見ると、女の子が下の方を見ながら手を上げています。その手は震えており、何かに怯えているようでした。

 もしかして寒いのかな。そう思った私は話しかけてみることにしました。


「私と同じだね」

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