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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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月光

 結局、大工さん達は陽が落ちるまで作業をした上に蛍に明かりの提供を求め、脅威のペースで作業を進めその日の内に狼ハウスを完成させていった。

 

 完成した狼ハウスは何と小さいながらも2階建てで、仕切りだけの簡易な部屋とはいえ1階に6部屋、2階に4部屋があり、1階にトイレ、2階にテラスまで付いている。もちろん人が入っても壊れるようなやわな作りはしていない。


 狼たちは完成した狼ハウスに狂喜乱舞し、最初は好きな部屋の取り合いで大分揉めていたが一狼の一声で騒ぎは沈静し、今は当番制で夜警に当たっているはずだ。







「ふう、やっと落ち着いた」

「お疲れさまでした。ご主人様」


 テーブルの食器を片付け、システィナが淹れてくれた緑茶を啜る俺を見て侍祭様が笑いながら労ってくれる。


「システィナも昨日まで熱があったのに無理はしてない?」

「はい。主な原因は魔力枯渇と疲労だと思います。2日も寝たらすっかり良くなりました」

「そう、良かった。でも一応今日も1人でゆっくり休んだ方が良いね」

「ふふ、分かりました」


 全部分かっていますというようなシスティナの笑顔に思わず赤面しかけながらも、かろうじてポーカーフェイスを保って頷く。


「蛍と桜も、引き続き部屋で謹慎ね。一応今日まで」

「ふ、いいだろう。特に異論はない」

「え~!桜もそろそろソウ様と一緒に寝たい!」

「桜さん、申し訳ないですが、今日だけは譲って貰いますわ」

「あ、そっか……それなら仕方ないか。今晩は我慢するよ」


 うん、結局全員にバレバレだった。まあいいけど。


「で、明日はウィルさんにお金を返した後に、リュスティラさん達の所に全員で行くから装備の修理や新調とかあったら明日までに考えておいて」

「はい」

「うむ」

「りょ~かい」

「はいですわ」


 各自の『窓』の確認とかもしたいところだけど、今日はいいか。ちなみに俺の『窓』の内容は


『富士宮 総司狼  業:-10 年齢:17

 職 :魔剣師 

 技能:言語

    読解

    簡易鑑定

    武具鑑定

    手入れ

    添加錬成+

    精気錬成

    夜目  

    魔剣召喚(1)

 特殊技能:魔精変換』

 

 金に糸目を付けない添加錬成が功を奏したのか、添加錬成が+になっていた。おそらく気が付いていなかっただけで、葵の添加錬成中に+になっていたんだと思う。そのおかげで葵のランクをギリギリで上げることが出来たのだろう。


 ただせっかく+補正がついたが、今回かなりの量の魔石を買い漁って消費したので、しばらくは添加錬成の魔石は自分たちが塔で狩った魔物の魔石の中から回すことになる。


 擬人化出来る3人には無理に添加錬成することはない。敢えて魔石を消費してまで俺の楽しみを減らす必要は全くない!


 問題は『魔剣召喚(1)』。これを使用した際に新規加入した刀については、必要になってくることもあると思う。今のところ最初から擬人化出来たのは蛍だけ。葵ですら無理だったことを考えると今後召喚する刀達も、基本的に擬人化は覚えていない可能性が高い。

 だから錬成に回せる魔石は擬人化を覚える前の刀達に使っていくつもりだ。


 召喚自体は、正直に言えば早く召喚したいという気持ちはあるが、葵とこれから初めて一夜を共にするのに、その直前で新しい刀を召喚するのはちょっと失礼な気がするから、召喚は葵と結ばれた日以降にやると決めていた。


 加えて、更に刀が一振り増えるとなれば俺の装備をどうするかという問題もまた出てくる。


 最近では左手は閃斬固定で、右手は刀娘を使うことが多い。それぞれ使用感が違うのは困ったものだが、誰をいつ使っても戸惑わないように素振りや型の練習時には全員を万遍なく振るようにしている。


 実戦では、それぞれ刀娘達の持つスキルが違うので、探知系と刀術優先なら蛍。速さと隠密系優先なら桜。魔力、魔術系優先なら葵。みたいに状況に合わせた使い方が出来ればいいなぁと思っているが、同じ武器を使い続けることで戦い方が安定するのも確かなので、その辺の検討もこれからしていかないといけない。


 ただ俺の希望としては、刀大好き人間なのでやっぱり手元にある刀達は皆使いこなしたい。

 その為に訓練量が多少増えるとしても、その為なら頑張れる気がする。伊達に3年間、毎朝4時起きで蛍を振り続けて来た訳じゃない。



「ご主人様?どうかされましたか?」

「あ!っとごめん。ちょっといろいろ考えてた」

「ふ、何を考えていたかは大体わかるが、お前の場合はとにかく体作りが優先だぞ」

「そうですわね。少なくとも重りを全解放しても自在に動ける位には全身を鍛える必要がありますわ」

「うぐ…」


 うちのお姉様2人に言われてしまったらもう逃げられない。もう少し訓練メニューを増やそう。多少無理してもシスティナが治してくれるからなんとかなるだろう。


「…お手柔らかにお願いします。さて!じゃあそろそろ俺は風呂に入って部屋に行くか。葵、後でね」

「はいですわ!主殿」





 1人で室内風呂に入り、ゆっくりしてから部屋に戻る。今日は俺の個室じゃなくて寝室の方だ。

 そして、ニードルホークに壊された窓は、窓枠ごと綺麗に修復されていた。心なしかガラスの透明度も上がっているような気がする。いつもながらベイス商会の大工さんの力には驚かされる。


 今、この部屋の中は明かりがついていない。俺の部屋以外の各個室と、この寝室には光魔石が設置されているので魔石に魔力さえ通せば明るくなるのだが、魔力が使えない上に葵が手元にない俺では明かりはつけられない。もしどうしても明かりが欲しければ自分の個室に行ってランタンを持ってくるしかない。


 ま、どうせすぐ明かりは消すし、今日はカーテンを開けておくといい感じに月明かりが差しこんで室内は仄かに明るい。

 窓の外は裏庭で、衝立と湯気で良く見えないがどうやら蛍が露天風呂に入りつつ一杯やっているらしく、お盆に乗った酒瓶が見える。


 蛍は相変わらずだ。俺は苦笑しながら窓から離れてベッドに腰を下ろす。


「主殿」


 呼ばれて顔を上げるといつの間に部屋に入って来たのか葵が部屋の入口に立っていた。


「うん」


 葵は小さく微笑むとしずしずと近づいてきて俺の正面に立ち、静かに顔を寄せ俺の唇を軽く(つい)ばんで窓の方へと歩いていく。


「葵?」


 葵は窓際まで行くとふわっと着物を鞘に戻して、纏めていた髪をほどき首を振る。するとどこにそんなに長い髪が押し込まれていたのかという程の髪が滝のように流れた。


 月の明かりに照らされた葵の身体、そのシルエットはいっそ妖しい程だった。


「主殿、こちらへ」


 影になって良く見えない筈なのに分かる、妖艶な雰囲気で俺を招く葵に吸い寄せられるように近づいていく。


「怖いくらいに綺麗だ…」

「ふふふ…わたくしも緊張していますわ」


 葵の手が静かに背中に回されて抱きしめられる。蛍やシスティナほど大きくはないが十分な大きさの胸が俺の胸板で潰れ、柔らかな感触と暖かい温もりに包まれる。


「まさか器物として生まれたわたくしが、こうして殿方と肌を合わせることが出来るとは…」

「うん…」

「わたくしが人と触れ合うのはその身体を斬り裂く時だけだと思っていましたのに、こうして主殿を抱きしめることが出来る……わたくしは幸せです」


 葵の目から流れる一筋の滴。俺はそれを見て、自分からも葵をきつく抱きしめ返す。


「これからはずっと一緒だ。いつだってこうして触れ合える」

「はい」


 頷く葵を静かに抱き上げベッドへと運ぶ。


「主殿」

「葵」


 束の間、視線を合わせた俺達は自然と唇を合わせた。


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