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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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シャアズ

 今のシャドゥラは完全に力を使い果たしてしまっていてまさに死に体で、普通に捕らえることも容易だが蛍は捕縛は全く考えていないらしい。あくまで命をかけた決闘として最後まで決着をつけるつもりなのだろう。


「ではゆくぞ。『蛍刀流:光刺突・派生の一【乱華(らんげ)】』」


 重心を落として刀を構えた蛍はこのまえ塔の中で見せてくれた物理的貫通力のある光線を突きと同時に撃ち出す魔法を放つ。

 放たれた光は身動きしないシャドゥラの胸を一瞬で貫く。よし!これで勝負有りだ。


「え!」


 そう確信した瞬間、眼前が光に包まれる。


「く!…こ、これは?」


 一瞬強まった光に思わず過敏に反応してしまったが光は直視出来ないほどではない。やや目を細めて光の中を探る。

 そこに見えた光景は蛍に現段階で最高と言わしめるだけのことはあるものだった。


「まるで光の華です」


 後ろで呟くシスティナの言葉に俺も全くもって同感だった。蛍の放った光刺突はシャドゥラを貫いた後、その後ろに刺さっていたクナイに反射し更に背後からシャドゥラを貫く。反射によって僅かに分光した光はまた別のクナイに反射し、そこで反射した光はまた別の…


 そうしてシャドゥラを中心に乱反射した光線はありとあらゆる角度からシャドゥラを貫き続ける。それでいてクナイで囲まれた範囲外に漏れた光は無害化されるという緻密な構成。見た目の華やかさとは対照的に恐ろしいほどに殺傷能力の高い魔法だった。


 おそらく光が華のように乱反射していたのは時間にすればほんの僅かな時間だったと思う。だがその間にシャドゥラを貫いた光の数はもはや数えるのも馬鹿らしいほどだ。その結果、地面に横たわるシャドゥラの姿はほぼ黒焦げで原型をとどめていなかった。



「凄いね…これを考えていたからリュスティラさんに鏡付きのクナイを作って貰ってたんだ」

「うむ。だが魔鋼を磨いた鏡では効率が悪いな。かなり精度が落ちる。この辺はリュスティラとディランに要相談だな」

「はは…充分な威力だと思うけど」


 シャドゥラの行く末を確認せずに戻ってきていた蛍はあれでもまだまだ不満らしい。


「さて、お前の番だ。準備は良いな」

「うん。ただ、始まる前に一瞬だけ戦場全体に目くらましをかけてくれると助かる」

「分かった。確かにこれだけの人数に大っぴらに漏洩する訳にはいかぬな。まあ一部には露見しつつはあるがな」

「ちょっと待ってソウ様。桜が持ってきたから大丈夫だよ」


 いつの間にか近くにいた桜が俺に鞘に入った葵を差し出している。おぉ!これは助かる。刀娘たちのことはどうやら一部には知られつつあるようだが、まだまだフルオープンにはしたくない。

 本来は葵が前線から下がって行った形にしておいて蛍さんに目くらましをしてもらい、その瞬間に葵を呼び寄せようと思っていたのだが、正直行動としては不自然過ぎるのでこっそり葵を回収して来てくれた桜には感謝である。

 ご褒美に頭を撫でてあげよう。


「はにゃ~ん。ソウ様の手~」


 桜も岩の下で寂しい時間を過ごしていたのできっと甘えたいのだろう。俺も気持ちは同じだが今はお預けだ。


『主殿、準備はよろしいようですわね』

「ああ」


 俺は葵の問いかけに小さく頷くと閃斬と葵を抜き前へと出る。時を同じくしてシャアズも大剣を肩に乗せたままゆっくりと斜面を下りてくる。

 あんな大きな剣を持って不安定な坂を下りてくるのにまったく危なげが無い。全身が満遍なく鍛え上げられ体幹もしっかりしている証拠だろう。


「待たせたか?」

「……」

「は!俺と言葉遊びをする気もねぇってか」

「何を話したところでここでお前は死に、赤い流星は潰える」

「赤い流星……か。まあまあ面白かったな」

「お前のそのお遊びのせいで何人の人達が……」

「おいおい、やめてくれ。お前にはわかるだろ(・・・・・・・・・)


 駄目だ…何故だかこいつは本当に分からない。理解したくない。話しているだけでいらいらする。見ているだけで心がざわつく。


「なんとなくお前は俺に似てる。うまく言えねぇが…そうだな、振り幅の違いみたいなもんだ。お前のことは良く知らねぇが俺の技能の『直観』が教えてくれる。お前、自分が見限った物がゴミに見えるだろ」


 やめろ…


「その顔、心当たりがありそうだな。まあぶっちゃければ俺もそうだ」


 やめろやめろ…


「おそらくお前はそれなりに許容範囲が広いんだろうさ。だからこそ他人の為に憤ることができる」


 やめろやめろやめろやめろ……


「ただ俺の場合はその許容範囲が著しく狭い。っていうか俺が許容出来るのは『俺』だけだっていうだけのことだ。だから俺以外が全てゴミに見えるんだよ。 ゴミ達が作った盗賊団のボス…ほら笑えるだろ!」

「やめろ!俺はお前とは違う」

 

 …いや本当にそうか?……本当は…違わない。常日頃から感じていた自分の危うさ。俺の判断1つ。俺が悪だと判断したものに対する苛烈な行動。

 俺が悪だと判断する範囲が広くなればなるほど俺はシャアズに近づいていく。いや、もしも俺だけが正義だと思うようになってしまったら今のシャアズそのものだ。


『主殿!惑わされてはなりませんわ!』

『ソウ様!桜達がソウ様の鏡になるよ!』

『ああ、お前が道を踏み外しそうな時はいつだって私の峰打ちを脳天に落としてやる』

「ソウジロウ様。どんな時でも私はあなたを信じています!!」


 みんな……そうか、そうだったよな。わかっていたじゃないか。彼女達がいる限りそんなことにはならないって結論はもう出ていた。それなのにいつの間にかシャアズの雰囲気に飲まれていた。


「違わないさ。俺はお前がゴミに見えない…つまりお前が俺と同種の人間ということだ」

「……もういいか?俺は別にお前と同じでも構わない。ただお前と同じ生き方はしない。それだけのことだ」

「ほう…ま、違いねぇ!じゃあやろうか。だがお前の戦いを見させてもらったがあの程度ならすぐに終わっちまうだろうがな」


 シャアズが白い歯を剥き出して笑いながら大剣を構える。せっかくの金髪イケメンが台無しの下品な笑顔だ。ただ強い。蛍と立ち会ってる時のような威圧感がある。

 確かにこれは出し惜しみをしてられるような状況じゃなさそうだ。


『葵。頼む』

『了解しましたわ』


「ふ!」


 ガキン!!


「な!…てめぇ」


 ちっ、流石に決まらないか。一気に首を狙った一撃をしっかりと大剣で受けられてしまった。


「さっきまでは手を抜いてやがったか」

「手の内を簡単に見せる訳ないだろ」

「はん!言ってくれるぜ!これなら少しは楽しめそうだ!」


 シャアズが俺の刀を押し返すと大剣を振り回しているとは思えない程の速さで攻撃を繰り出してくる。っのやろぉ!なんて速さと力してやがる。さっきまでの俺だったら瞬殺レベルだぞ。


『主殿!』

『まだ大丈夫!』


 強いシャアズと戦うことを俺が決めた理由。それは作成してもらってから常に俺へと多大な負荷をかけ続けている重結の腕輪×4の存在だった。こいつは魔力を込めれば込める程に重くなり互いに引き合うというもので本来ならパーティリングのような使い方をするためにディランさんが作ってくれたものだ。

 だが俺はこれを両手両足に装着し、葵に魔力を込めて貰うことで重力がやや弱いこの世界で筋力を落とさないための訓練器具として使っていた。しかも蛍の指示の下、結構序盤から地球よりもきついレベルの重さを設定されていた。

 そして入浴中ですら外すことなく常に共にあったこいつの負荷を解放することでシャアズとも戦えるはずだというのが俺の目論見だった。

 だから決闘開始と同時に葵に魔力を抜いて貰ったのである。さっきまでの俺の動きを見て油断しているシャアズの予想を遙かに超えた速さを出せれば一気に仕留められるかもと期待したのだが残念ながら防がれてしまった。

 だがそれほど余裕がある感じでもなかったのでこれならなんとか通用する。


 これはさっきまでの囲まれた状態ではシスティナ達との連携や体力の問題で切れなかった手札であり俺の切り札でもあった。

 これで戦えないようなら恥も外聞も投げ捨てて蛍に助けを求める所存だ。


 だが、幸いなことに今のところはなんとか互角に戦えている。


「お前も『豪力』持ち…いや、その速さ『敏捷補正』も『+』だな?くくく!なるほど!中身が似ると技能構成も似るのかもな!」


 いやそんなスキル持ってないし。俺の日々の努力をスキルの一言で片付けないで欲しい。食事で箸を使うのも、トイレでマイサンの照準を合わせるのだって必死だったっちゅうの!

 ていうかお前『豪力』に『敏捷補正』持ちかよ!


 俺は心中で盛大に毒づきながらも剣戟を続ける。身体的な速さは俺が上、力はシャアズが上。細かい動きに関しては死ぬほど練習してきた歩法のおかげで俺が上、全体的な剣での戦いについては経験の差でシャアズが上。武器に関しては俺の閃斬と葵の方が質的には上だが、技と手数の俺に対してパワーと頑丈さが売りのシャアズとは一概にどっちとは言えないがまあ互角と言えるだろう。

 ちなみにシャアズの武器はこれだ。


『巨神の大剣(封印状態)

 ランク : C+  錬成値 MAX  

 技能  : 頑丈(極)、豪力、重量軽減 

 所有者 : シャアズ 』


 いろいろ突っ込みたい部分はあるがそれは後でもいい。今のところ問題なのはとにかく頑丈で閃斬でも斬れないってこと。そしてシャアズ本人の『豪力』と武器の『豪力』が相乗効果でとんでもなくなっていることだ。

 一度でもクリーンヒットされれば下手すればシスティナのスーパー回復術をもってしても間に合わない程の致命傷を受ける可能性が高い。それを常に頭に置きながら戦うしかない。



 1剣1刀を手に突っ込んだ俺の頭上に迫る大剣の振り下ろしを、閃斬で受け流し葵で斬りつけシャアズがかわすと俺が踏み込んで閃斬で薙ぐ。それを大剣の柄で受けたシャアズがやくざキックで俺の胴を蹴り飛ばすとすかさず間合いを詰めてきて大剣をぶん回してくるので、閃斬と葵を2本とも防御に回して受け止める。が、馬鹿力のせいで2メートル近くもノックバックさせられてしまう。


 くそっなんてパワーだ。まともに受け止めるだけでヤバいとか意味わからん。しかもこっちは連戦の疲労からか身体が怠くなってきたっていうのに!



『主殿!このままでは元々疲労していた主殿の方が先に力尽きますわ』

『…やるしかないか』

『ですが今の主殿の身体では長くはもたないと思います。そうですね…1分。1分で勝負をかけましょう』

『了解。あっちの方もいける?』

『私の魔力もそろそろ限界ですが一回なら問題ありませんわ。ただし主殿の間接使用ですから威力の方がどれほどかは…』

『いいさ。これで駄目なら蛍に助けて貰うよ』

『…それはなんだか面白くありませんわね。必ずここで決めますわ!』

『ふ、頼りにしてるよ』

『はいですわ!』


 葵と一瞬でそんなやり取りをまとめると慎重に構えを取りながらシャアズを伺う。

 シャアズは俺を弾き飛ばしたことで間合いが空いたのを幸い、向こうも息を整えているところのようだ。ならばちょうど良い。後は俺がうまく立ち回れるかどうかだけだ。


 失敗したら死ぬかもしれないとか考えるのは良くないよなぁ…ていうか生きて帰らないとシスティナや刀娘達といちゃいちゃ出来なくなるってことか…

 うあ!それだけは絶対に嫌だ!絶対勝つ!


 っしゃ!気合入った!後は深呼吸でもして………

 



 さて、やるか。


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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ 小説1巻~3巻 モーニングスターブックスより発売中 コミックガンマ+ にてコミカライズ版も公開中
― 新着の感想 ―
[気になる点] まさかなぁと思ってたらやっぱり 仲間の命かかってるのに重り付けたまま舐めプ戦闘してたのか…… それで疲労蓄積してるとかソウジロウはアホなのか…… こういう部分で主人公がイマイチ格好良く…
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