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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第3章

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及第点

「おう、遅かったな。ソウジ」


 ザチルの塔の一階ロビーに入った俺に手を上げて近づいてきたのは革装備に身を固めたトォルだった。

 その後ろからアーリとフレイも笑顔でついてくる。なんだかその位置関係がトォルハーレムっぽくてムカつくので取りあえずトォルを無視してフレイに声をかけることにする。


「おはようございます、フレイさん。今ちょっと冒険者ギルドに寄って来たんですがウィルさんが改めてアルに感謝してしましたよ」

「そ、そうか!アルの奴も最近は自分が必要とされることが嬉しいらしくてな。楽しそうなんだ。いい仕事を紹介してくれてフジノミヤ殿には感謝している」


 まあアルの件に関してはかなり俺にもメリットがある話だったのでそんなに感謝されるいわれもない。アルのお蔭でウィルさんがこれほど早く冒険者ギルドを立ち上げることができたのだから。


「そうだ。これがギルドカードです。今日探索を切り上げたら皆さんも登録してください。ウィルさんに事前登録の許可を貰ってます。

 明日以降は場合によっては混んでしまって登録を待たされる可能性もありますから」

「普通に俺を無視したことは取りあえず置いといてやるが、それってなんか意味あるのか?」

「ちっ!

 じゃあトォル以外は今日探索後に登録ってことでよろしくお願いします」

「おい!待て待て待て!なんで俺以外なんだよ!俺だって登録するよ。するって!」

「だったらうだうだ言うな。このリア充!」

「なんだそのりあじゅうってのは。っていうか俺に対する当たりきつくねぇか?お前」

「きつくしてるんだから当たり前だ」


『リア充ってソウ様のことだよね』

『はい、世間一般ではトォルさんよりも数百倍ソウジロウ様の方がリア充だと思います』


 俺の後ろで桜とシスティナがこそこそと何か話しているが聞こえない振りをしておく。


「ソウジロウ。いつまでも遊んでないで早くしろ」

「おっと、ごめん蛍さん。じゃあ行こうか」

「けけけ!ソウジも師匠にはまるっきりだな」


 あいつはしばらく温泉禁止だな。

 戦いに飢えている蛍さんの催促を最優先し言い返したいのを我慢してザチルの塔1階層の扉を探す。


「あ」

「冒険者ギルドの職員の方のようですね」


 扉を探してロビーを見回すと冒険者ギルドの職員と思われる人が手作りのチラシを探索者達に配りながら質問に応対していた。

 それなりに人だかりになっているようで探索者達の関心の高さがうかがわれる。この様子なら明日のギルドは大盛況かもしれない。

 うんうんと頷きながら改めて扉を探すが、ザチルの塔も選択型の塔な上に超高層で過去の最高到達階は83層のためロビーにある扉の総数も83。ある程度順番は決まっているようだが何も知らないと探すのも一苦労だ。


「1階層だからおそらく一段目だよねシスティナ」

「そうですね。おそらくあの辺が人の出入りが多いみたいなので低階層への扉だと思います」

「なるほど。よし、行こう」


 ぞろぞろと連れだって1階層らしき扉の方へと向かって歩いて行くとその先にフレスベルク領主から派遣されてきているらしい兵士が1人立っている。

 レイトークにもいたが、何かあったときに領主へ連絡が出来るようにするための連絡要員兼探索者達を正しい扉へ案内するための人材だろう。


「1階層への扉は何処になりますか?」

「それならあそこの札が立ててある場所だ。あそこから左回りに2階層、3階層で一周したら2段目もあの上の扉からだ」

「あそこですね。ありがとうございました」


 兵士に頭を下げるとまっすぐと1階層の扉へと向かう。その道すがらロビーの中に茶色のローブを纏った細身の男達が探索者へと話しかけている姿を目にする。


「あれは何をしてるのかな?」

「…あれは聖塔教の宣教師です」


 なんとなく呟いた俺の問いかけに答えを返してきたのはいささか意外なことにアーリだった。


「聖塔教?」

「はい。『塔は世界の不浄を魔物に変換しているから討伐してはならない』という教義を広めようとしている宗教団体です。

 確かアーロンの塔辺りが政教圏だったと思うのですが…」


 アーリは宗教団体はあんまり好きじゃなさそうだな。表情が苦々しい。俺も悪人にまで人権を謳うような宗教が多かったから宗教という物に対してはあんまり良いイメージがない。

 某狂信者集団の事件、なんてのも良く聞く話だったし。人間自分で考えなくなったら碌なことをしなくなるということなんだろうかと個人的には思う。

 世の中には宗教に救われたという人がいるって言うのも頭では分かっているんだけどね。


「ソウジ。絡まれる前にさっさと行こうぜ」


 今回ばかりはトォルに賛成せざるえない。俺は頷きを返すと足早に1階層への扉をくぐった。




「さて、では1階層を抜けるまではおまえ達3人に付いていってやろう。いわば仮免許試験と言ったところだな。

 ソウジロウ達もそれでよいな」


 1階層に入り後続の邪魔にならないように少し移動したところで立ち止まると蛍さんはフレイ達へと告げた。


「もちろん俺は構わないよ」

「はい。私も」

「桜もいいよ~。フーちゃん達の仕上がりも見たいしね」

『あたくしも構いませんわ』


 フレイ達は3人で顔を見合わせると頷き、それぞれの武器を握りしめる。


「時間はかけずに行くぞ。だが、なるべく敵を避けずに近くいる敵は倒すこと」

「「「はい」」」


 三人の返事が実にすがすがしい。蛍さんの人徳だろう。


「フレイさん。前に言った通り、索敵と道案内はフレイさんの仕事ですよ」

「うむ。分かっているフジノミヤ殿。あれから自分でも使いこなせるように訓練はしていたんだ」


 そう言うとフレイは目を閉じて僅かに平耳を持ち上げるとぴくぴくと耳を震わせた。


「…こっちに2体、あっちに1体、中央の階層主までの間だと…こっちから行った方が遭遇率は高い」

「了解。じゃあこっちからだな」

「行きましょう」


 3人は迷うことなく一本の道を選んで歩き出す。それを見た蛍さんは満足気な笑みを浮かべている。おそらく蛍さんの気配察知でも同じような結論が出ているのだろう。

 フレイが今したのは平耳族の優れた聴覚を活かした索敵。言わば音響索敵ともいうべきスキル外スキルである。

 

「フレイのあの聴力はなかなかの物だな」


 慎重に進んでいく3人の少し後ろを歩きながら蛍さんが呟く。


「俺も聞いたときは驚いたよ。村1つを網羅できるほどの聴覚を一族全員が持ってるっていうんだからね」

「その力が大きすぎて逆に活用することに思い至らなかったというのはいささか皮肉なことですけど」


 3人は4層までの経験があり戦闘経験が残りの2人よりも豊富で音響索敵をしているフレイを先頭に中陣に回復を担うアーリ、後衛にトォルという隊形を組んでいる。

 回復役のアーリを守りつつ進むには間違いのない隊形だろう。幸いこの塔というダンジョン内には罠的な物はほとんど報告されていないため盗賊職的な技能はほとんど必要とされないのも有難い要因と言える。


「そろそろだな…」


 蛍さんの呟きとほぼ同時にギィシャァァという耳障りな音が聞こえてくる。


『タワーゴブリンナックル(1階層) ランク:H』

『タワーゴブリンクラブ(1階層) ランク:G』


 おおっ!ゴブリン出た。俺の地球でのイメージでは緑色の鼻のでかいぼろぼろの服を着たやつだが、それよりは餓鬼やグールって感じに近い。某有名小説が映画化されたやつの指輪を盗んだやつがそっくりである。

 装備や戦い方によって鑑定上の名前は変わるらしい。今回のは素手のゴブリンと棍棒を持ったゴブリンか…まあゴブリンって言えば最弱の魔物としてスライムといい勝負のはずだから問題はないだろうけど。


「行くぞ!フレイは右、俺は左、アーリは後方警戒しつつ場合により援護!」


 トォルが指示を飛ばしながらアーリを追い抜いて棍棒を持ったゴブリンへと走っていく。その一歩前をフレイが小剣を2本逆手に構えたまま素手のゴブリンへと向かう。

 アーリは今回、レイピアを構えたまま後方支援に回るようだ。なかなかスムーズな連携だ、この一週間同じ宿に泊まり戦い方を3人で話し合っていたらしいのでその成果だろう。

 前衛に上がった2人がゴブリンと接敵するのはほぼ同時、トォルの動きが軽装剣士の面目躍如と言わんばかりに速かったせいだ。


「ふ!」

 

 素手ゴブの右かぎ爪振り下ろしをフレイは左手の手甲で弾き返すと、体勢を崩した素手ゴブに右の手甲で顔面に拳を入れる。フレイの手甲は格闘用のため拳部分に棘が付いているため見ている方は痛々しい。


「ギャァア」


 だがフレイは苦痛の声を上げるゴブリンに構わずに左手の小剣をがら空きになった素手ゴブの首へと一閃させた。

 そして、時を同じくして棒ゴブの棍棒を長剣で受け流したトォルが体勢を崩した棒ゴブの背後から首を斬り落とし戦闘が終了する。


 フレイ達はゴブリンが落とした魔石を素早く拾ってポーチに入れるとすぐさまフレイの音響索敵に従って移動を始める。


「この先にウルフ系魔物2匹」

「了解。じゃあ次はフレイが後方を頼む。アーリは俺と前衛だ」

「承知した」

「分かったわ」


 そしてフレイの索敵通り角を曲がると同時にタワーウルフ2体と接敵する。


『タワーウルフ(1層) ランク:H』

『タワーウルフ(1層) ランク:G』


 今度走り出したのはアーリとトォル。トォルがまず一体を受け持ちウルフ相手に距離を取らせない立ち回りを繰り広げる。

 アーリは中距離を保ちつつレイピアの鋭い突きを何度も繰り出し少しずつウルフの足を奪っていく。やがて痺れを切らしたかのようにウルフが三角跳びを試みてアーリの死角を取ろうと壁へ跳ぶ。だがアーリの攻撃で蓄積していた足へのダメージは自分の勢いを吸収出来ずにバランスを崩して床に落ちる。そこを逃さずアーリはウルフの眉間をレイピアで突き通した。

 その直後剣技でウルフを追い詰めていたトォルもとどめをさして2戦目も終了した。いずれも危なげのない戦いだったと言えるだろう。

 戦う人員を交代したのもそれぞれの武器と戦い方から有利な相手を考えてのことだと思われる。


「問題はなさそうだな。3人とも動きに迷いがない。この一週間のしごきに耐えたことで身につけた動きがうまく発揮できているようだ」

「そうだね。フーもアーリも近づかれても焦らずに対処出来てるみたいだしね」


 蛍さんと桜の言葉通りその後も3人は遭遇する魔物達を全て危なげなく殲滅し、1階層主であったゴブリンファイター(ランクF)も3人がかりできっちりと倒しきって3人で手を叩き合っていた。


「よし。これなら及第点を与えてもよかろう」


 2階層への階段を昇ったところで蛍さんから掛けられた言葉に3人の表情が喜びに染まる。



「この先魔法や属性攻撃をしてくる魔物、もしくはハイドベアーのように特殊な能力を使ってくる魔物が出てくる階層までは3人で協力すればいいだろう。

 ただし、先ほど言ったような魔物がいる階層まで行くのなら装備を一新して対策が出来るまでは控えるようにしろ。この上の階層に出る魔物についてはソウジロウが先行して攻略していくから後で情報はおろす。

 死にたくなければ勝手に上層には踏み込まぬことだ」

「今の装備で行ける範囲でお金を貯めて経験と装備が充実してからってことか」

「トォルだけならどんどん上に行ってもいいけどな」

「行かねぇよ!俺はソウジよりも師匠の言葉を信じるからな。師匠が行くなって言うなら行く訳ないだろうが!」


 ふん、蛍さんの言いつけをきちんと守ろうとするところだけは評価してやろう。


「その言葉忘れるなよ。せっかく鍛えてやったのにあっさり死なれては我らの努力も無駄になるからな」

「はいは~い。じゃあ仮免許試験合格ってことで3人にプレゼントがありま~す!」


 そう言うと桜が懐からリュスティラさん謹製の鉢金を3本取り出して3人へと渡す。


「え?これは…フジノミヤ殿達が付けているものと同じものではないのか?」

「はい。そうですよフレイさん。私たちがリュスティラさんという技師にお願いして新しく開発して貰った装備です」

「耐衝撃の付与された魔銅が中に仕込んであるから多少頭をぶつけたりしても意識が飛んだりはしないと思うよ」


 師匠面して一週間しごきにしごき、今日も偉そうにすると決めていた以上師匠連としては3人の頑張りに何か報いてあげた方がいいだろうと皆で話していた。 だけどあんまり分不相応な装備をあげるのはかえって危険なところに踏み込みやすくなってしまう。でもこの鉢金なら今の3人の為に丁度いいだろうとリュスティラさんに3人分追加発注しておいたのである。


「ちょっと待って下さい。今、魔銅が仕込んであるとおっしゃいましたか?」


 受け取った鉢金をおそるおそる撫でながらアーリが聞いてくる。


「言ったけど…なんかまずかった?そのくらいならトォルにも影響はないはずだけど」 


 軽装剣士としてのトォルは金属製の装備を身につけると途端に弱っちくなる。ただ留め具程度の金属は影響が無いため鉢金の中に仕込んだ金属片くらいは問題ないはずだった。


「いえ…魔材に属性付与した装備なんてこの程度のサイズでも私たちの稼ぎではとても手が届かない金額だと思ったものですから」

「ああ!そっか…でも一個大金貨1枚だから気にしなくてもいいよ」

「…フジノミヤ殿。私たちは大金貨など持ったこともないのだが?」


 なるほど…確かに日本円で100万円相当となればそうそう手に入る額じゃないか。大金が手元にあることに加えて見た目が日本円じゃないせいでちょっと金銭感覚がずれてきてるかもしれない。ちょっと気をつけるようにしよう。


「弟子達の成長を祝う物でもあるし、命を守る物だから遠慮無く受け取って欲しい。その代わりなんか助けて欲しいことが出来たらお願いするからその時は手伝ってくれると嬉しいかな」


 まあ厳密に言えば俺の弟子ではなく蛍さん、桜、システィナの弟子なのだがその辺はちょっと見栄を張ってもきっと許されるはずだ。


「そう言うことであればわかりました。押しかけ弟子のような形の私たちに厳しくはありましたが熱心な指導をして下さった恩はこれが無くとも決して忘れません。何かあればいつでも遠慮無く言って下さい」

 

 そう言ってアーリが鉢金を巻く。細身の身体に鉢金がよく似合っている。


「うむ。私などはアーリよりも多くの借りがある。それこそ命を掛けて返さねばならぬほどのな。フジノミヤ殿が頼むことなら『どんなこと』でも断ることはない。いつでも無理を言って欲しい」


 フレイが平耳の位置を調整しつつ鉢金を巻く。髪や平耳に大半が隠れてしまうがそれでも顔が引き締まって見える。その凛々しい顔とフレイが『どんなこと』の中におそらく含めたであろうエロいことへの妄想にちょっとどきどきしてしまうのは男の悲しい性だ。


「だな…ほんのちょっと前まで1階層すら突破出来なかった俺達をここまでにしてくれたのは間違いなく師匠達だ。それは大げさでもなんでもなく俺達の人生を切り開いてくれたってことだ。

 レイトークで命を助けられたことも大きな恩だが、塔で戦える力をくれたことの方が恩としてはでけぇ。何かあれば何を差し置いても協力することを俺も誓う」


 くっ、鉢金を巻いたトォルがストリート○ァイターⅡのリュウに見えてきた。なにげにちょっと似ているんだよな…ちょっと格好いいとか思ってしまった。

 それにトォルが感じていることというのは結構深い。塔で戦える力が身についたと言うことは自分の身を守れるようになったということはもちろん、収入の増加に繋がる。収入が増えれば生活水準が上がる。生活水準が上がれば余裕が生まれ、自分の望む形で生きたいように生きていくことが出来るようになれるかもしれない。

 それはまさしく未来を貰ったことと同義。

 強さが即収入に繋がるこの世界だからこその価値観だろう。


「その時は遠慮なく頼むとしよう。今日の所は2階層までの間で少しでも多くの戦いを経験しておけ。無理はするなよ」

「じゃあ、陽が沈む前には切り上げてロビーで集合することにしよう。そのままギルドに行って登録するってことで」


 3人は黙って頷くと2階層の奥へと消えていった。2階層の敵はまだ確認してないが1階層の戦いぶりを見れば2階層までは問題ないとした蛍さんの判断は間違っていないと俺も思う。


「さて、では我らも行こうか。今日のところの目標は5階層辺りにしておくか」

「マジですか?そんなに急がなくてものんびり行っても良くない?」


 刀を使って戦えるのは嬉しいが別にギリギリの戦いがしたい訳ではない。余裕のある魔物相手に無双出来るくらいが俺的にはちょうどいいんだけど。


「ソウジロウよ。装備を良くして、ちょっと訓練したくらいでは強くなったとは言えぬぞ。結局最後は多種多様な戦闘経験こそが必要になってくる。またあのような戦いはしたくないのだろう?」

「…そうだね。あんな戦いはしたくないかな。でも無理はしたくないなぁ」

「分かった分かった。ではこうしよう。一応5階層を目指して進んでいくが出会った魔物に苦戦するようような魔物がいた場合はそいつを楽に倒せるようになるまでは上には行かない」

「うん、わかった。それで行こう」


 確かに戦闘経験は必要だし蛍さんの提案は妥協点としては妥当だろう。


「よし。では2階層は桜の気配察知で進んでみるかの」

「は~い!じゃあ行くよ。まずはこっちからね」


 桜の先導で2階層を進む。

 桜、システィナ、俺、蛍さんの順である。桜は索敵担当時は先頭を行き、会敵したら遊撃に移行。システィナが前に出て壁になり俺と蛍さんでアタッカーをするが後方の警戒は蛍さんが担当する。

 蛍さんが索敵担当時はシスティナ、蛍さん、俺、桜の順に隊列を組みなおす予定だ。


「さっそく来るよ~。ちょっと素早い系だから落ち着いていこうねソウ様」

「了解!」


 ちょっと振り返って笑顔を見せた桜が次の瞬間視界から消える。と、同時に通路の奥からウキャウキャと甲高い鳴き声が聞こえてくる。


『タワーモンキー(2層) ランク:G』

『タワーモンキー(2層) ランク:G』

『タワーモンキー(2層) ランク:H』


  

 どうやら猿型の魔物らしい。ニホンザルの2倍くらいの大きさで血走った目と鋭い鉤爪が目立っていてる上に壁や天井を蹴りながら立体的に動いているのをみると恐怖心を掻き立てられる。

 だが、こんだけ素早く動く相手3体ではシスティナ1人では壁役はきつい。俺がビビッて動けなくなるようだとシスティナが危険に晒されることになってしまう。それだけは男としてやっちゃだめだ。


「システィナ!相手は3体だ。2人で抑えるよ。蛍さん、桜は抑えてる間に頼む」

「はい!」


 返事が聞こえたのはシスティナだけだが別に気にはしない。共感で了承の意は受け取っている。

 俺は葵と閃斬を抜き放つと右の壁を蹴って飛びかかってきた猿の鉤爪を閃斬で受け止め…


「うおっ!」

 ウギィィィ!


 受け止めたつもりの一撃があっさりと猿の鉤爪を斬り飛ばしたことに思わず声を上げてしまう。なんて斬れ味。斬補正(極)は伊達じゃないな、下手すると葵より良く斬れるかもしれない。


「やあ!」


 少し離れたところで魔断を振り回しているシスティナもその動きが格段にいい。魔断自体の性能は魔力強化的なものだけで属性付与の機能も今は使っていないからシスティナが身につけた斧槌術によるものだろう。

 システィナは襲い来る二体の猿を一体は槌の部分で弾き飛ばし、一体は斧の部分で袈裟斬りにした。

 斬った猿を即死させるほど深くは入らなかったが床でのたうつ猿を冷静に槍部分で突き刺しとどめを刺す。

 俺の方も爪を飛ばされ腕を押さえて喚く猿を仕留めるべく間合いを詰めようとしたところで共感で蛍さんから不要との指示が来たので構えを解かないまま足を止める。


【蛍刀流:光刺突】

 

 と、同時に蛍さんの声が響き猿の眉間に光が突き刺さった。


「…え?」

 

 その光は充分な殺傷能力があったらしく、猿は悲鳴もあげるまもなく絶命し塔へと吸収されていく。

 今の攻撃についていろいろ言いたいことはあるがひとまずはあと一体。と思った時にはシスティナに弾き飛ばされて体勢を崩していた猿の眉間にクナイが刺さり勝負は付いていた。

 3体ともが確実に魔石を残して消えたのを確認してから俺は後ろにいる蛍さんへと振り返る。


「蛍さん!魔法で攻撃出来るようになったんだ!」

「うむ。桜の魔法を見習って魔法のイメージがしやすい名前をつけ、さらに自身の刀術と組み合わせるようにしたら格段に使いやすさが向上してな。ちょっと実戦で使ってみたかったのだ。

 すまぬなソウジロウ。おまえの獲物を横取りした形になってしもうて」

「全然構わないって。俺も新しい剣の斬れ味は実感出来たしね。葵を使ってあげられなかったから葵がちょっと拗ねてるけど」

「くくく…それはどうでもよいな」

『きぃぃぃ!どうでもよくありませんわ!わたくしの見せ場の邪魔をしないでくださいませ山猿!』


 金切り声を上げる葵を楽しそうに見下ろしながら蛍さんは満足気に頷くと魔石を回収した桜とシスティナへと次に向かうように指示を出す。



 結局その後の数度の戦い全てにおいて全く苦戦することもなく2階層の主の間へと到達。そのまま戦いへと突入する。2階層の主はタワーモンキーの上位種らしき魔物だった。


『タワーコング(2層) ランク:G』


 大きさはニホンザルからゴリラほどの大きさになり太くなった身体はパワーが上がっていそうだがその分モンキーのような機敏な動きはなかった。

 どっちかというとパワータイプの方がうちのパーティは戦いやすいためシスティナがタゲを取り刀娘2人と俺でサクッと倒した。

その勢いで3階層へ突入した俺達は結局、蛍さんの言うとおり苦戦らしい苦戦もなく5階層までを突破して6階層に入ったところで塔から出た。


「ソウジロウもシスティナも落ち着いていて良い動きだったな」

「ありがとうございます。やはり良い装備を準備して頂いたことによる安心感が大きいと思います」

「一撃の攻撃力も確実に上がったし、桜や蛍さんの中・遠距離からの援護もかなり大きいかな」


 蛍さんや桜の魔法やクナイなどの投擲攻撃は近接一辺倒だった俺達の戦い方にかなりのバリエーションを持たせることに成功していた。

 これにより狭い通路などでも戦力を余らせることがなくなり戦闘時間は短縮、それに伴い体力的にも精神的にも余裕を失わない戦いが出来たと思う。


「時間的にもちょうど良い時間ですね」


 システィナに言われ空を見ると確かに太陽が傾きまもなく夕暮れという時間帯にさしかかるところだった。

 6階層から飛び降り塔の外に着地した俺達は今日の戦いの反省点を指摘し合いながらロビーへと戻った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 討伐してはならないってしないで街中がモンスターで溢れて廃墟になったらそいつら責任取れるのかね(笑)
2021/08/26 18:50 退会済み
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