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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第2章

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リスタート

「ああ!きもちぃぃ~」


 その感極まった声を聞いてゾクゾクしながらも俺は手を休めない。そうしないと正気を保てないからだ。


「くっはぁあぁぁん!もう離れられ…」


 ばっしゃ~ん!


「ぷは!ちょ!てめぇソウジ!何すんだいきなり」

「変な声出すなら追い出しますよ。気持ち悪い」


 空になってしまった桶に再びお湯を汲んで洗体を再開しながら本気の殺気をこめるくらいの視線を送る。


「まあそう言うなってそれだけこの温泉とやらがすげぇんだからさ。これがなければあの7日間の地獄には耐えられなかったと断言できるね。俺は!」

「そんなこと自信満々に言われても…

 でも,この7日間で3人とも見違えましたよ。これなら油断さえしなければ1階層や2階層で不覚を取ることはないと思いますよ。

 まあ俺はまだ1階層しか行ったことないんでなんとも言えませんが」


 身体を流し,タオルを頭の上に乗せつつ湯船に浸かる。室内と露天を男女で日替わりで使っているので女性陣は今日は室内風呂の方である。


「…まあ,ソウジと師匠には感謝してるよ。命を助けて貰ったばかりか稽古までつけて貰っちまったからな。アーリもきっと同じ気持ちだと思う。

 …本当はバクゥが死んだとき探索者はもう引退しようと思ったんだけどな」


 トォルはタオルを顔に乗せ空を仰いだ。


「アーリが言うんだ。バクゥが塔で救ってくれた命だから塔に入ることはやめたくない。少なくとも塔に負けたまま逃げるのは嫌だって…

 あいつはあんなおとなしそうな感じだけど言い出したら聞かないし,行動力も半端ないんだ。こりゃいくら反対したって駄目だなって思ったら俺が強くならなきゃいけないってことに気が付いたんだ」


 トォルを庇って死ぬほどの怪我を負ってしまうような無茶をしてしまうくらいだ物腰は穏やかだが内には激しい物を秘めているのだろう。


「あいつとバクゥは相思相愛でな…」

「え…」

「は!やっぱり気づいてなかったか…あぁもちろん俺もあいつが好きだぜ。だがあの2人なら祝福しても良かったんだ。

 だけどよ…バクゥが死んじまった以上,他の誰かには渡したくねぇ。そうなるとやっぱり強くないとなぁ」

「だから蛍さんのしごきに耐え切れたのか…蛍さんが言ってたよ。

 限界までやらせてねを上げたら少し緩めて最適な練習量を決めるつもりだったって。ちょっと見直したって感心してた」

「なんだそうだったのかよ!だったら早めにくたばっておけばもう少し楽が出来たのか。

 …それにようやく言葉が砕けたな」

「悔しいけど女のために頑張る奴は嫌いじゃない」

「へへ…まあ,あいつが応えてくれるかどうかは微妙なところだけどな」

「まあ,せいぜい頑張ってくれ。トォルが先に死んだらアーリさんは俺が貰うから安心してくれていいし」

「な!てめぇ!あんだけ綺麗どころを独り占めしといてふざけんじゃねぇぞ!」


 慌てた様子で詰め寄ってくるトォルを笑いながらするりとかわして湯船を出て置いてあったタオルで体を拭う。


「さあ,明日は装備がある程度仕上がる日だ。俺達も気合い入れていかないとな」


 明日は技師夫妻の下に行って装備の仕上がり具合を確認してその日はその装備の使い心地を確認。問題なければその翌日から動き始める予定だ。

 手持ちのお金も一気に使い込んでしまったしある程度安定した収入を得るためにもザチルの塔へと入るつもりである。

 魔石の売却代金を使わずにいれば多分この屋敷で死ぬまでのんびり暮らせた気もするがそれはなんだか違う気がした。

 それに鍛えることを怠り,戦うことを忘れたらこの世界では危険に対処できない。この屋敷が街から少し離れていることもありいきなり盗賊とかに襲撃されるということもあり得なくはない。

 蛍さん達も刀としての本能なのかどこか戦いを求めている感じもする。それに戦いの中で魔石を集めて鍛えていかないと葵も錬成出来ないし,魔剣召喚の回数も増えないだろう。

 と,いろいろ理屈はつけたがやっぱり俺も大好きな刀達を振っていたいだけなんだろう。

 

 俺達は風呂を出るといつもように全員でシスティナの手料理を思う存分味わい合宿の打ち上げを終えると明後日塔に行くなら最初だけは一緒に行くと言う約束をして明後日塔の前での集合を約束すると3人を送り出す。

 その後は当然お楽しみの夜を過ごした。

 




「おう,来たか。だいたい出来たよ…ふわぁ~あ…

 悪いね,ここんところまともに寝てなくてさ。じゃあ上で渡すから行こうか」


 店で出迎えてくれたリュスティラさんは目の下にクマを作りつつも満足気な表情に見える。本当にこの7日間に全力を尽くしてくれたのがそれだけで分かる。 

 リュスティラさんの後について2階に上がるとディランさんが出来上がった装備を1つずつテーブルの上に並べているところだった。

 幾分こけた顔つきでこちらをギロっと睨み付けたディランさんだが次の瞬間僅かに口角を上げると無言で顎をしゃくり俺達を招き入れてくれた。

 やはり無理はしたようだがやり切った感が俺達にも感じられる。


「まずはソウジの剣から行こうか。これだ」


 リュスティラさんに渡された剣は注文通りの100㎝程の長剣だった。綺麗な銀色の両刃の直剣である。


「軽い…それに凄い手にしっくりと馴染む」

「そうだろうさ,指の長さや関節の可動域まで調べたうえで拵えたからね。総魔銀製の会心の一品だよ。今回は下手な属性効果は一切付けずに魔銀の容量全てを斬補正につぎ込んだから斬れ味だけはそんじょそこらの剣には負けないよ」


『閃斬 

ランク: C

錬成値: 最大  

技能 : 斬補正++』


 凄い。斬補正が++,しかも錬成値がMAXだ。これはこの武器をもう手が加えられない程に完成させたということじゃないだろうか。


「これ,凄いです。リュスティラさん装備してみてもいいですか」

「ああ,それはお前の為に作った剣だからな。私としてもそれだけの剣が打てたのは初めてだ。大事に使ってくれ」

「はい。『装備』」


 ただでさえ手に吸い付くようだった閃斬がまるで手と一体化したかのように感じる。



『閃斬 

ランク: B

錬成値: 最大  

技能 : 斬補正(極)

所有者: 富士宮総司狼』


 おぉ…さすが俺専用と言うだけのことはある。装備した途端ランクが上がってスキルが極まった。これはもう同ランクの中の武器じゃ最強クラスなんじゃないだろうか。


「これは…リュスティラさん!ありがとうございます!」

「気に入って貰えたようだね。後は防具の方はこれだ。申し訳ないが素材が入手出来なかったからこっちは全部魔鋼製になるが手甲には耐物理,脚甲には敏捷補正を付与してある。

 鎖帷子の方には魔力を含む攻撃に対しての耐性を付けた。単属性の耐性だと汎用性に欠けるからな。それに比べれば魔耐性の方は耐性の強度は落ちるが幅広い攻撃に対処できる」


 相手に合わせていちいち装備を変えられないことを考えれば最善の選択だろう。特殊なエリアとかで特定の耐性が欲しい時は対応する耐性のついたローブやマントを上から羽織ればいい。

 

「で最後がこれだ。おまえが言っていた鉢金。額に1つと側頭部に各1,後頭部にも小さい物が結び目の両脇にくるように各1ずつ耐衝撃を付与した魔銅製の板金を縫い込んである。

 これを着けておけば壁や床に叩きつけられて頭を打つようなことがあっても頭部を衝撃から守れるはずだ。ソウジの発案で作ってみたがこれは売れるよ。最初に取りかかって完成させてすぐにベイス商会に売り込みに行ったんだが…既に問い合わせがじゃんじゃん来てるらしいからな。形や作り方が周囲に知れ渡る前に一稼ぎさせてもらうよ」


 商魂たくましいリュスティラさんの言葉に思わず笑みがこぼれる。


「それは良かったです。私たちの依頼で苦労した分,がっつり稼いでください」

「あぁ,しっかり稼いでいい素材を仕入れたら…またおまえ達の装備を作ってやるよ」


 ぶっきらぼうなように見せて実は照れながら頬を染めるという高等技術を駆使するリュスティラさんはかなり可愛い。人妻でなければ是非口説きたかったかもと思わせるほどだ。

 おわ!ディランさんの顔が超怖い!っていうか冗談ですよ!冗談!ちょっと妄想しただけで釘刺してくるってどんだけ愛しちゃってるんですか。


「さあ,次はシスティナだね。まずはこれを持ってみてくれ」


 リュスティラさんが持つには重すぎたのかディランさんがシスティナへと手渡した武器は槍と斧と槌が合体したかのような長柄武器だった。

 基本はもともとシスティナが使っていたアックスハンマーと似ているが今度のは斧と槌に加えてその間から槍のような穂先が作られていて『突く』ことも出来る武器になっている。


「素材は魔鋼製まででしか作れなかったが勘弁してくれ。付与は魔力増幅を付けてある。回復魔法を使うならいざというときに役に立つはずだ。

 後はうちの旦那が新しい試みをしてみたかったらしくてな手元を見てくれ」

「…斧と槍と槌のマークと窪みが3つ?」

「そうだ。私が付けた魔力増幅の隙間に回路を通したらしい。そこに属性の付いた魔石を入れれば対応する部分の武器に属性を付けられる。私の魔力増幅にも若干干渉しているらしいから悪くない威力まであげられるらしい」

「それは凄い。それは魔工技師と魔道具技師の技術を融合した武器ということですよね」

「あぁ…私の作る武器を誰よりもよく知ってるのはうちの人だからね。私たちでなけりゃここまで精密な作業は出来ないと思うよ」


 さらりと惚気てくるリュスティラさんだがそれだけ自信作なのだろう。


「では装備してみます。『装備』」


『魔断

ランク:C+

錬成値:最大  

技能:魔力増幅+

特殊機能:属性付与(槍-空き 槌-空き 斧-空き)

所有者:システィナ』


「素晴らしい出来です。感謝いたします」


 装備した魔断を眺めてシスティナが満足気な吐息を漏らす。


「よし,どんどん行こう。ローブはこれで胸甲,手甲,脚甲はこれだな。ローブは大鋼狼の毛をより合わせて作ったから大分防御力は上がっているはずだ。更に旦那が小さな魔石を縫い込んで陣を組んでるからさらに耐物理は上がってる。

 胸当てには魔耐性。手甲は要望通り小盾にしてあるが4属性防御はこの大きさだとちょっと厳しい。だから魔耐性を付けたが手の甲の部分から魔力を流し込めるようにしておいたから瞬間的に魔力を流し込むことで耐性を上げられるはずだよ。脚甲はお決まりの敏捷補正だね」


 システィナは渡された装備を1つずつ確かめながら装備していくと感嘆の声を漏らす。


「私からは何もありません。お二人の技にただただ感心するばかりです」

「ありがとうよ。そう言ってもらえるのが職人としては最高の瞬間さ」

「じゃあ次は桜かな?」

「はいよ。まずはクナイだっけ?一応魔鋼製で属性も言われた通りつけておいた。多少色味が違うから分かると思うが心配だったら自分で目印をつけておいておくれ。

 後は,サービスでクナイをしまえるように加工した帯を作っておいたから試してみておくれ」

「あ,それいいね。あとは懐に何本かと脚甲の中に仕込んでおけばいいかな」

「脚甲に敏捷補正を付けて,手甲は極力薄く鍛えて魔耐性を付けたが強度はあまり過信しないでくれ」 

「うん,了解」

「後は隠密用の装備は旦那特製の魔道具だ」


 そう言ってリュスティラは一本のネックレスを取り出して桜に首にかける。


「こいつに魔力を通せばうっすらと身体を闇が覆うはずだ。あんまり濃くするとかえって不自然になるからその辺の出力調整がかなり難航したらしいが最後は良い物が出来たらしいよ」


 リュスティラの解説にディランさんが親指を立てている。


「うん,完璧だよ。ありがとうリュティ」


 桜がリュスティラさんに抱き付いてお礼を言うとリュスティラもまんざらではなさそうだ。

 

「最後は私か」


 満を持して前に出てきた蛍さんにリュスティラさんも不敵な笑みで応える。


「まずは手甲は桜と同じやつにしたよ。物理的な防御よりも魔耐性に主点があるからその辺を考えて使ってくれ。

 でこいつが頼まれてたやつだ。一応10個準備していおいたが足りるかい?」

「ああ十分だ」


 蛍さんはリュスティラが渡してきた物を満足気に受け取る。蛍さんが依頼していたのは桜が頼んだクナイの形を少し変えた物だった。

 刃の部分は同じだが持ち手と刃部分の間に平たい四角の部分がある。四角部分は良く磨き上げられていて顔が映りそうだが鏡が欲しい訳でもないだろう。


「で,最後がこいつだ。悪いが今のところは形を作るのが精一杯だった。一応小さな魔石を縫い込んでほんの少しだけ水耐性が付いているがこいつは桜の帷子と同じように継続して開発させてほしい」

「ほう,未知の物を僅か七日で形にしたのか。たいしたものだ」


 そこに置かれているのは紛れもなくブラジャーだった。まだ布を繋ぎ合わせただけの俺から見れば粗末なものだがこれを着けている皆を考えるだけでご飯三杯いけそうだ。


「一応全員分作ってはみたから持って帰って感想を聞かせて欲しい」

「分かりました。任せて下さい!」


 ゴン!


 痛い…


「お前がする訳ではなかろうが」

「…はい,すいません。ちょっと興奮してしまいました」

「あははは!お前たちはいつも楽しそうだな」


 そんな様子を見ていたリュスティラさんが楽しそうに笑う。俺としてはそんなに笑わせるようなことはしてないつもりなんだけどね。


「あ,そうだ。お金は足りましたか?」


 これだけのものを全員分揃えて貰ったんだからかなりの金額になったはずだ。ほぼ全額を預けてあるが足りなければなんとか稼がないとならない。


「ああ,問題ない。これは返しておく」


 ディランさんがじゃらりと布袋をテーブルに置く。


「これは?」

「今回の仕事は私達にとっても良い仕事だった。新しい技術,新しい形の装備,開発しがいのある目標…金銭には変えられない物をたくさん貰った。それもこれもあんたたちと一緒に仕事ができたからだ。

 だから半分だけ貰っておく。ま,もっとも次からはしっかりと貰うけどな」

「分かりました。俺達の装備はこれからもお二人にお願いしたいと思いますのでよろしく」


 俺の差し出した手をリュスティラさんがしっかりと握り返してくれた。


 よしこれで準備は整った。俺達で塔をぎゃふんと言わせてやる。


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