表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

195/203

神刀

 やっべぇ、やっぱり蛍とサシでやりあって勝つなんてまだ早かったか?


 俺がいまできる全ての力と戦術をつぎ込んで攻撃をしているのに、銀蛍は一度として刀を打ち合わせることすらしない。つまり俺の攻撃は完全に見切られ、銀蛍の攻撃に俺が対処しきれていないということだ。スキルに頼って、かろうじて致命傷は避けているが、傷は増えていくばかりだ。時折システィナが戦いの隙をついて俺に気付かれないようにこっそりと【回復術】を飛ばしてくれていなかったらとっくに死んでいたかもな。

 

『主君、そろそろ……』

『殿、命、危険』

『……だな。わかった、だけどもうちょっとだけ手伝ってくれ。心の中では絶対に勝てるわけないと思っているのに、まだ俺のなかにやり切っていないっていう想いがあるんだ』

『…………わかりましたでございます』

『……委細承知』

『ありがとう、楓、椿。引き続きふたりの力も貸してくれ』

『『はい』』


 ここまで追い込まれてひとつわかったことがある。


「俺は弱い」


 懲りずに銀蛍との間合いを詰めて、連続攻撃を続けながら断言する。純粋な俺の力は、せいぜいひとよりちょっと強い程度のものだ。


「だけど……それは『ひとりなら』だ」


 銀蛍の攻撃が迫ると<楓>の【直感】が教えてくれる。すぐさま俺は<蛍>から仕込まれた歩法で体を滑らせ回避を試みるが、かわしきれずに太腿を斬り裂かれる。だが、すぐに<システィナ>の【回復術】が傷を塞いでくれる。一瞬動きが鈍った俺の隙を、誤射のフリをして投擲された<桜>のクナイが銀蛍の足元に刺さって埋めてくれる。銀蛍の攻撃を致命傷の手前で防いでくれているのは<リュスティラ>さんと<ディラン>さんが作ってくれた装備のおかげだし、俺がいまここに立てているのは、<メリスティア><葵><雪><澪><雫><霞><陽><一狼><マゼンダ><グリィンスメルダニア><ガクシャ>そのほかの<従魔たち>、そして<ウィル>さんが作ってくれた冒険者ギルドの冒険者たちと<トォル><アーリ><フレイ>の弟子たちのおかげだ。


「ひとりじゃ勝てなくても、皆の力を借りたなら!」


 俺はこの戦いが始まってからずっと、楓と椿に【大局観】と【展望】で銀蛍の動きを分析させていた。そしてふたりは俺の期待に応えて、銀蛍の動きにいくつかの法則性を見つけてくれていた。それは本物の蛍にはない法則。俺が蛍との稽古で一番やられた動き、無意識のうちに俺の意識に刷り込まれた苦手意識。それゆえに俺の潜在意識から生まれた銀蛍はその動きに縛られている。


 左手の楓を横薙ぎに振る。すると銀蛍は滑るように俺の左手の外側に動く、だがその動きこそが法則。本物の蛍なら馬鹿のひとつ覚えみたいに続けることのない動きだ!

 その動きを誘うつもりだった俺は、いつでも方向転換が出来るように体重も残しているし、わざとセーブして放った楓での薙ぎ払いも即座にキャンセルできる。攻撃をキャンセルした俺は、残した体重を一気に左へ傾け、体ごと銀蛍に寄せて肩からぶつかりにいく。だが、銀蛍もそんな体当たりを受けてはくれるほど甘くはない。


 だが俺の動きは予想外だったのか、わずかにバックステップをして下がるのが精一杯に見える。そして俺の本命はそこを狙っての椿での振り下ろし。銀蛍は回避が間に合わないと判断したのか、俺の攻撃を初めて擬態した蛍丸で受けようと横向きに掲げた。だが、俺には【不抜】の効果が最大に乗った<椿>がいる。 

 

 俺の全部を注いだ一撃は、銀蛍の蛍丸の中ほどをすっぱりと断ち斬り、そのまま俺の手に抵抗を感じさせないほどの斬れ味で振り切られた。そして、俺の視界の端に銀蛍の右肩から先が宙を舞っているのが見えた。


「やった!」


「駄目です! ご主人様!」

「ち、あの馬鹿! 桜、しばらくあいつを止めろ!」

「了解!」


◇ ◇ ◇


 あ、あれ? なにがおこった? ……どうやら意識が飛んでいたらしい。たしか俺は、銀蛍の右手を斬り飛ばして……そこまで考えたところで顔の左半分と体に激しい痛みを感じた。


「う! ……っつ!」

「ご主人様! じっとしていてください。いま【回復術】を」


 顔を流れる何かが口に流れ込んで、口の中に鉄の味が広がる。どうやら、かなり出血しているらしい。


「システィナ……俺はどうなった?」

「え……あの、傷は治します」

「違う! どうして俺はここに寝ているんだ」

「……ご主人様があの銀色の蛍さんの右腕を斬って、動きが止まったところに左腕に蛍丸を出しなおした相手がご主人様を袈裟切りに……ご主人様は左目から左頬、左胸から右脇腹まで斬り裂かれました。その後、蛍さんがご主人様を引きずってここまで……いまは桜さんが足止めをしています」

「……そっか」


 俺は斬られたのか……目を開けようとしても左の視界が回復しない。左の眼球を斬り裂かれたか……胸の傷も結構深い。たぶん、R&D製の鉢金と魔纏衣を装備してなかったらやばかった。眼球や傷はシスティナなら完全に治してくれるだろうから、そんなに悲観することじゃない。問題なのは……


 俺の視界に、いつになく厳しい表情をした蛍が映る。まあ、そうだよな。蛍の目を誤魔化せるはずがない。


「ソウジロウ、相手を斬ったあとに油断したのも問題だが……それはまあいい。むしろあいつを斬ったことは称賛に値する。だが…………なぜ切っ先を逸らした! あの体勢であのタイミングなら、椿がいればあいつを頭から真っぷたつにできたはずだ!」

「……ごめん」


 確かにあの一瞬、俺は銀蛍を真っぷたつにすることができた。だけど……最後の最後で、どうしても蛍の姿を斬ることを躊躇してしまった。それは俺が銀蛍を悪人として認定できていなかったということだ。あいつはおそらくアクティブに人を襲うような魔物ではなく、受動的な防衛システムのようなもの。いわば流体金属のロボット。そこには善も悪もなかった。だから最後に目にした蛍の顔に躊躇してしまった。


「愚か者が……あいつは私がもらうぞ」

「……うん、頼む。でも、ちょっと待って。システィナ、起こしてくれる」

「でも、まだ治療が……」

「いいから、頼む」

「……はい」


 システィナに支えてもらいながら、なんとか立ち上がると半分になっている視界の中に蛍を探す。その動きを察して動いてくれたらしく視界に入ってきた蛍の手を取ると、力を振り絞って引き寄せ強く抱き締める。


「ソウジロウ?」

「……蛍なら勝てると思うけど、俺の蛍に対する信頼度は底なしだからまさかもあり得ると思うんだよね」


 俺の体感では、銀蛍は蛍よりもほんの少し強い。魔法や戦術を加味すれば蛍が上回るだろうが、もしものことがあったら困る。


「だが、私以外にいないだろう。桜や雪なら足止めはできるだろうが……」

「うん……だから、ひとつだけ試してみたいことがあるんだ」

「なんだ? やるなら早くしろ。桜も、後ろも長くはもたんぞ」

「わかってる、じゃ、やるよ」


 俺はそう言うと、さらに体を押し付ける様に強く抱き寄せると同時に、強引に蛍の唇を奪う。


「おい、ソウジロ……ぅむ!」


 俺は戸惑い、抜け出そうとする蛍をしっかりと抱きしめ、その唇を舌でこじ開け……


「ん、ぬぐ……ん! ええい! こんなときになにをしているのだ、おまえは!」


 時間にしてほんの数秒だっただろう、俺のまさかの行動に驚いていた蛍は、正気に戻るとすぐに力づくで俺を引き剥がした。逃げられてしまったのはちょっと残念だが、目的は達成できたのでまあいい。


「おまじないみたいなものだよ、あとは任せたからね。蛍」

「……ふん、全部終わったら覚えておけよ」


 さすがの蛍も重傷患者に体罰を与えることはできなかったようだ。元気だったらいつものあの脳天割りを食らっていたところだ。


「ご主人様、早く横になって下さい。すぐに傷を塞ぎますから。それと……こんな状況で蛍さんにしたみたいなことをするのはダメですからね」

「ははは……さすがの俺でもしないよ。それに、いまの行動にはちゃんと意味があったんだよ」

「え?」  

 

 【回復術】を発動しながら首を傾げるシスティナに笑みを返し、まあ傷のせいでうまく作れたかはわからないが、銀蛍へと向かう蛍へと【武具鑑定】を使う。


『蛍(蛍丸) ランク:S++ 錬成値:最大 吸精値:999

 技能:共感/意思疎通/擬人化/気配察知++/殺気感知++/刀術(極)/身体強化++/

 攻撃補正++/武具修復/光魔法++/蛍刀流+/流水+』


 これはさっきまで蛍の鑑定結果だ。あくなき強さを求め続けた蛍は、この三年も修練を怠ったことはない。その結果、ほとんどのスキルを【++】まで上げ【刀術】については【極】に達していた。さらに、蛍が独自に編み出し昇華させてきた歩法は【流水】という体捌きの新しいスキルとして、【刀術】と【光魔法】の複合技として編み出した戦術は【蛍刀流】として発現している。


 しかし、一方で吸精値のほうは夜の錬成を繰り返し続けているうちにランクアップしないまま蓄積し、999で頭打ちになっていた。この数値になったのは半年ほど前のことだが、それ以降はどれだけ夜をともにしても蛍の吸精値が上がることはなかった。


 だが、俺は蛍にはまだ上のステージがあると確信していた。蛍自身の努力に加えて、カンストした吸精値、あとはきっかけさえあれば……


「蛍さんはまだ強くなる」

「……でも、いますぐというわけには」

「いや、見て! 蛍が光った」


 銀蛍と打ち合い始めた蛍がわずかに発光したのを俺は見逃さなかった。くるくるとめまぐるしく動き回っている銀蛍と蛍を片方の目で追いつつ、わくわくしながら再度【武具鑑定】を使用した。


『蛍(蛍丸) ランク:神刀 錬成値:最大 吸精値:最大

 技能:共感/意思疎通/擬人化/気配察知(極)/殺気感知(極)/刀術(極)/身体強化(極)/

 攻撃補正(極)/武具修復/光魔法(極)/蛍刀流(極)/流水(極) 特殊技能:神気』


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ 小説1巻~3巻 モーニングスターブックスより発売中 コミックガンマ+ にてコミカライズ版も公開中
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ