領主たち
「それでは皆様、本日の最後の議題を始めたいと思います。これについては議題というよりは報告……に近い形になると思いますが、面白いものを報告できるかと思います。では、あとはよろしくお願いします」
領主セイラは必要最低限の言葉で会議の再開を宣言すると、アノークさんへと進行役を引き継ぐ。アノークさんはさすがに大商会のトップ、この豪勢な顔ぶれの中でもまったく臆することなく頷くとゆっくりと立ち上がる。
「中には面識のあるご領主もいらっしゃいますが、改めて自己紹介させていただきます。私はベイス商会、会頭アノーク・ベイスと申します。今回ご報告いたします商品の販売について全権限を委託されています。形のうえでは独占販売になりますが、そのあたりの理由はおいおい説明していきます。まずは皆様にこちらをひとつずつ差し上げます。……お願いします」
アノークさんの指示を受けたフレスベルクの侍女たちが今回のために持ち込んだ小型のアイテムボックスを内蔵したポーチを各領主の前に置いていく。その間にちょっと目の前の領主たちを確認しておこう。
まずは、ここ混迷都市フレスベルクの領主。
『セイラ・マスクライド 業:2 年齢:22 種族:人族 職:細剣士』
金髪の細身グラマーの美人で、探索者の街と呼ばれるこのフレスベルクにおいてでさえ、慎重で堅実な施政をする名君と噂されているまだ若い領主だ。選択型で超高層外観のザチルの塔を管理している。領主という因果な役目を負っているにも関わらず業が二と低い、頭は固いが信用はできる相手だ。
次が湖上都市レイトークの領主。
『イザク・ディ・アーカ 業:9 年齢:39 種族:人族 職:舞槍士』
まあ、このおじさんとはいろいろあったからいまさら説明はいらないかも知れないが、茶髪でマッチョ。細かいことは気にしない、豪快なおっさん領主だ。あと意外と義理堅い? 選択型でプリン型の三層構造なレイトークの塔を管理している。塔での収益よりもどちらかというと観光の町として儲けているみたいだ。
こっからが新顔、まずは世界二番目の探索者の街、アーロンの領主。一番はフレスベルクね。
『アムラ・レイモン 業:15 年齢:36 種族:人族 職:双剣士』
男の領主で金髪のイケメン、服で隠れているがかなり鍛えられているっぽい細いマッチョ? 事前情報によると軽薄で女たらしみたいだが、人の判断は実力主義で、有能な人材を揃えているらしい。選択型で外観が十階建ての四角いビルのような形をしたアーロンの塔を管理、このアムラ自身も探索者からの成り上がりみたいでアーロンの最高到達階層の記録はこいつのパーティが持っているらしい。
次が研究者の街インタレスの領主。
『ウーラ・カービス 業:-1 年齢:58 種族:人族 職:究明士』
白髪で細身、だが背筋も真っ直ぐで歳を感じさせない、かくしゃくとした女性だ。白衣のようなローブを身に纏っていることからもわかるように自身も研究者で研究が大好きらしい。研究を邪魔されるのが嫌いで争いごとを忌避するタイプ。選択型で外観がピラミッド型のインタレスの塔を管理。研究以外に興味がないせいか、世俗の業には関わりが薄そうでなんとマイナスだ。
正直、ここまではまだいい。癖はありそうだが、常識的で話が通じそうな気配がある。問題は次からだ。
賭博都市ダパニーメの領主。
『エイビズ・モロ 業:56 年齢:43 種族:人族 職:賭博士(【読解】:美食士)』
薄くなった茶色の頭髪、たるんだ頬肉、醜く突き出た肥満の腹、いまもシスティナや葵を嘗め回すような目で見ているように好色で強欲との評判を否定もしない男。汚い噂が絶えない、賭け好き、卑怯、美食家で飽食家。あの視線はむかつくが、間違ってもお近づきにはなりたくない。外観が日ごとに変わる変遷型のダパニーメの塔の管理をしてる。
次が宗教都市ルミナルタの領主。
『カミル・オルタナ 業:72 年齢:61 種族:人族 職:神官(【読解】:偽神官)』
見た目は温和な近所のお爺ちゃんって感じの雰囲気。長髪の白髪で細身の体を宗教都市らしく神官服のようなもので覆っているが、【読解】がもう偽物って看破している。噂でしかないが、日本にもいるインチキ宗教家のように信者から財産を巻き上げ、綺麗な女性信者には加護を与えると言って猥褻な行為をしているらしい。高すぎる業をみるとおそらく事実だろう。神殿の外観をしていて、中が日ごとに変わる変遷型のルミナルタの塔の管理者。
で、ここからはいろいろツッコミどころが多いふたり。
まず、主塔のある領主としては最後になる試練の街ミレストルの領主。
『テリオス・ブルーニ 業:0 年齢:41 種族:人族 職:観照師』
ひとことでいえばナイスミドルなおじさま。濃い茶色の髪をオールバックにきめて、おしゃれな口髭をたくわえている。会議には興味がないのか目を閉じて腕を組んだまま微動だにしない。それにしても、職が観照師? どういう意味だ? あとでシスティナに確認しとこう。対応型で外観が平べったい円柱型のミレストルの塔を管理。
そして最後が、管理している塔が副塔なのにもかかわらず領主会議に出席している交易都市ジェミナザの領主。
『ロマリナ・キャニスライ 業:-4 年齢:211 種族:長命族 職:豪商(【読解】調停者)』
見た目は老婆。目も開いているのかどうか分からないくらいしわくちゃなのに、なぜか眼光が鋭い印象を受ける。白長髪を纏めてアップにしていて、杖を手にし背中も曲がっているが……なんでだろうか、不思議と落ち着く雰囲気がある。長命族という初めて見る種族で二百歳越えとかマジでビビるけど、それだけ長く生きていても業がマイナスだし、読解上の職を見ても悪い人ではなさそうだ。選択型で外観がツインタワー(右十階層、左五階層)のジェミナザの副塔を管理している。交易の要衝で様々な方面から商人が出入りして、街が大きいため会議に名を連ねているらしい。
あとは、主塔討伐がなされたメギド、ラグナ、イナリスも本来はメンバーらしいのだが、ここ数回全員が欠席をしているらしい。まあ、あの街の雰囲気からすると領主も影響を受けているのかもな。




