39 弱い格上の魔物
街を出るとすぐに……
男達に後をつけられた
俺は小声で
「ちゃちゃ 盗賊だよ」
ちゃちゃはコクりと頷いた
イネスが呆れた感じで
「また盗賊なの」
「みんな 可愛いからね それにね 可愛い亜人って1人 20億エン以上するだろ 護衛なし 3人で60億以上の亜人 そして 可愛いイネス クレス付きだからね」
「うわぁっ 恐ろしいわね」
「気づいたかい イネスの美しさが罪ってことに」
「はいはい もう このままだと いつまで経っても王都に着けないよ まったく だから ギルドのおじさんも言ってたじゃない 最低でも帽子くらい被るようにって それに 装備も」
「イネスのミニスカート姿も似合っているよ」
「もう」
「ふっふっ」
セルリの街を出て これで5度目なのだ
「大丈夫だよ すぐに噂になって襲ってこなくなるさ」
「前回も言ってたよね それ」
「さあ 走るよ クレスは俺 イネスはちゃちゃ」
……
「またか」
「はい お願いします」
ギルドのおじさんも呆れていた
「まあ 盗賊がいなくなるのはありがたいがな
冒険者の多くが北の街に 獣族狩りに行っているので盗賊達が活発に活動しているからな」
「なるほど じゃあ 後2 3回お願いするかもしれませんね」
「ははっ それは頼もしい しかし無茶だけはするなよ 盗賊達も馬鹿じゃない 油断せずに襲ってくるようになるぞ」
「そうですね 気を付けます」
結局 この宿に逆戻りね
俺はイネスと長く一緒にいられるから嬉しいけどね
イネスは違うのかい
わ 私だって
あっ
……
「起きて」
「んっ どうした」
「あっ おはよう クレス どうしたの」
クレスが俺の部屋に慌てて入ってきた
俺の横で寝ていたイネスは今起きたようだ
「ギルドの人が来て すぐにギルドに来て欲しいって 強い魔物が出たみたい」
まだ眠いけど起きるか
まあ 弱い俺には あまり関係ないと思うけどね
はぁあ 眠い
「起きるか じゃあ ちゃちゃと行ってみるよ
ばにらとちょこと一緒に先に食事しててね」
ギルドに入ると13人の冒険者が集まっていた
皆 レベル30以上のD級冒険者達だ
ギルドのおじさんがいきなり 頭を下げてきた
「すまない 力を貸して欲しい E級の君達に 頼むのは間違っている 分かっているが頼む」
話を聞くと街のすぐ側まで魔物が迫っているそうだ
魔物はD級の大狼の魔物の群れ その数 およそ50匹
この街の兵士と冒険者を合わせても勝てないそうだ
被害を少しでも抑えるように命をかけて戦うらしいが
盗賊退治の処理で
このギルドのおじさんには世話になっているからなぁ
「分かりました この子は弓の名手です 街の塀の上から攻撃するので籠城しましょう」
「いや 街は広い どこから入られるか
俺達が迎え撃つから 君達は塀の上から弓で攻撃頼む」
おいおい 死ぬつもりかよ まったく 英雄みたいな真似を 仕方ない
「それだと犠牲が まずは この子の ちゃちゃの弓の腕を見てください ダメそうなら 街を出て迎え撃ってください 行くよ ちゃちゃ」
「なっ すまない 皆 門の内側で待機いつでも出られるように
街に入った魔物の足止めはE級冒険者に頼んである 行くぞ」
俺とちゃちゃは塀に上がる
魔物の様子を見ると200メートルくらい離れた場所に
大狼の魔物の群れがいた
「じゃあ ちゃちゃ 後はよろしく」
ちゃちゃはコクりと頷き 矢を放ち始めた
命中する毎に 歓声がわく
大狼の魔物は1匹 また1匹と倒れていくが数が多い
俺達の攻撃に気づき向かってくる
数は まだ50匹前後
魔物の速度を考えると弓では10匹くらいしか倒せないかな
このままだと街に入られてしまう
仕方ないよね 俺も頑張りますか
「ちゃちゃ ちょっと行ってくるよ ここはよろしく
街に入られそうだったら 本気出していいから
剣 置いていくよ
魔物が来ます
みんな 塀から降りて 街の中へ」
俺は大きな声で叫んだ
なるべく見られたくないからね
まあ 見張りのために残る人も多いだろうけど
さて 行きますか
「飛翔」
俺はジャンプして大狼の魔物の上空に
「魔那よ 我に力を」
俺は幻影の巨大な光の玉を纏う
「月の精霊達よ 我に力を 月岩弾」
巨大な岩を次々に落とす
そして 地面に着地し
「土人形召喚」
巨大なゴーレムの幻影を出し 上空から殴りつけていく
もちろん 幻影なので ダメージは無いが
俺はなるべく それに合わせて杖で殴ったり
岩を投げて倒していく
3分もしないうちに 大狼の魔物の群れは全て倒れた
いつも倒している雑魚だからね
しかし俺とちゃちゃはE級
魔物は格上のD級の魔物50匹だ
よし 後は
俺は跪き
そして
倒れた
すぐに ちゃちゃが駆け寄って来る
小声で
「宿まで よろしく」
ちゃちゃは小さくコクりと頷き
俺を背負って街の中に向かう
すぐにギルド職員や兵士達 冒険者達が駆け寄ってきた
「無茶しやがって 大丈夫なのか」
「魔力を使いすぎただけです 1日休めば回復します」
「くっ 今すぐ 魔力ポーションを持ってこい
後は 俺が背負う」
ギルドのおじさんが そう言ったが
ちゃちゃは首を横に振った
そして そのまま宿に向かって歩く
俺は目を瞑り寝たふりだ
街に入ると拍手喝采だ
賞賛の声が鳴り響く
強い冒険者なら こんなことにはならないだろうけど
俺とちゃちゃは弱いE級の冒険者だからね
また 噂で英雄が1人増えるかな
宿に着くとクレスとイネスが心配して話しかけて来た
俺は眠ったふり 続行中
クレスとイネスにギルド職員が頭を下げていた
街を守るためにギルドのルールを破って無茶をさせてしまったと謝っていた
「もう 心配したんだからね」
「うん ほんとに 大丈夫なの」
「ごめん ごめん 何ともないよ 俺が強いの知っているだろ 知られるのが嫌なだけだよ イネス 2人だけの秘密だよ」
「もう 何が2人だけの秘密よ クレスもいるでしょ」
「ふっふっ 心配ないみたいね」
「でも 俺は重症みたいだから 部屋から出られないんだ 暇だから ねぇ」
「何が ねぇ よ まったく」
「えっ じゃあ クレスいいよね」
「うん」
「あっ 裏切り者」
「ふっふっ」
「イネス 俺は体力余ってるからね」
「まったく バカなんだから」
「そういえば ちゃちゃは」
「えっ そうね あれっ 見てくるね」
しばらくして ちゃちゃは和弓と剣を持って戻ってきた
「ちゃちゃ ありがとう 矢と魔物はギルドの人達に任せていいからね」
ちゃちゃはコクりと頷き 抱きついてきた
「クレス ごめん」
「えっ」
「ちゃちゃからだって」
「ふっふっ ちゃちゃちゃんは 頑張ったもんね」
「まったく」
俺は部屋から出られないので 部屋で1日過ごした
……
……
……
……
……
今日はここまでにします




