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ワールドリメイク 世界奪還戦線  作者: husahusa
第三章 東西戦争
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第二十六話「ウヌス教 Ⅱ」

「まあそんなわけで俺は間接的ではありますけどウヌス教と関わりを持っています」


 比嘉が一通り話し終える。


「んじゃあ話は早いじゃん! その幹部の人に会いに行けば!」


 少し興奮気味に和人が言う。


「あのなあ……そんな事はもうやったんだよ」


 すかさず中島が横やりを入れる。

 和人もそりゃそうかと少し苦笑い気味で返す。


「で、どうなったんです?」

「門前払いだよ」


 中島が肩をすくめてお手上げのポーズを取る。

 恐らく取りつく暇もなく追い返されたのだろう。

 結局そこでは詳しい話は分からなかったと中島は言う。


「その後何か進展はあったんですか?」

「一つだけあったな」


 今度は話す事を少し迷い気味に歯車が言う。

 言いにくい事なのか、その先の言葉が中々出てこない。

 和人は少し不審に思いながら急かす。


「今回の調査任務で行く場所にウヌス教の教団の一つがあるらしい、ネビュラが出始める前の西日本に」

「そうなんですか! 一石二鳥じゃないですか!」


 この話題の内容で余りポジティブな事が無かった反動か、嬉しさを隠さずに和人が声を一段階高くして言う。

 そんな和人とは裏腹に他の面々は暗い顔をしている。

 勿論和人もその様子に気づく。

 良い話題かと思っていたが、どうやらこれもそうではないらしい。

 和人は周りの空気で察する。


「キナ臭いって言ってた事と関係しているんですね?」


 一気に確信を付かれたのか、歯車は目を丸くして数秒固まったかと思えば、大笑いをする。

 そんな歯車に和人は戸惑いを隠せないでいる。


「あっはっは! いやすまねえ、直ぐに気づけるってのはお前のいいところだぞ和人」


 笑いながら上機嫌に和人を褒める。

 だが直ぐに真面目な表情に戻る。


「……この任務に和人を名指しで指名してきた奴が居る」

「俺を指名?」

「ああ、言っちゃあ悪いが初めての任務で両足を負傷し事実上の失敗をした奴をだ」


 任務の事実上の失敗という言葉で少し気分が落ち込むが、今はそこじゃないと更に聞き返す。


「どういう目的で?」

「名目は一応オルギア『デルタ』の返却だ。任務難易度は最低ランク、だが現在デルタを所持している者は持ち場から離れる事はできない。だからこっちから任務協力って形で出向く際に受け取れとさ」

「はあ……まあ受け取るのは良いんですけど、なんか回りくどいですね」


 そうは言う和人だったが、少しばかりしこりを残しながらも一応は納得する。


「そう言えば指名してきたのって誰なんです?」

大島恭平(おおしまきょうへい)って奴だ」

「大島恭平……確かメディアの幹部クラスの人ですよね? パンフレットに載ってるのを見た事あります」


 大島恭平、メディアの数ある部門の一つ創造部門の幹部の一人である。

 創造部門は魔法と科学の観点から全く新しい物を生み出すという考えのもとに日夜研究している部門である。

 和人らがネビュラと戦う為に与えられたオルギアもこの部門が作り上げた物の一つだ。

 そんな見ず知らずの部門の幹部が直々に和人を指名したのだ。


「えっと、一回も会った事が無いんですが」


 困惑気味の和人は大島恭平の名前を聞いてそう答える。

 何処の誰かもわからない人物からの指名なので仕方ないと言える。


「だろうな、実際に相手さんも和人と会った事は無い筈だ」

「じゃあなんででしょうね?」


 和人にはまるで見当が付かない。

 だが歯車にはおおよその見当、というより答えに近いものを持っていた。


「ウヌス教で門前払いされたと言ったろう? その時に俺達とやりとりしたのが大島当夜(おおしまとうや)って奴だ」

「え? 大島って……」


 だんだんと和人にも話が見えてきた。

 面識のない和人を指名した大島恭平、そしてウヌス教徒で歯車らを門前払いした大島当夜。

 偶然とは言えない同じ苗字、彼らが親子なら歯車が言う今回の任務のキナ臭いと言う部分も理解できる。


「まあ大島なんて苗字は珍しくねえ、たまたま今回同じ苗字の他人が都合よく出てきたなんて事もあるが……」

「都合が良すぎますよね」

「ああ、無関係とは思えないおそらく奴らは親子か血族者だろう、何が目的かは知らんが、参加するにしても用心に越したことは無い」


 一体何故そこまで自分に拘るのか和人にはわからなかった。

 ただ知らないうちに何か大きなことに巻き込まれているのは確かだった。

 和人は一層気を引き締めて任務に臨む事を決意する。


 ---


「そう言えば猫又さんは?」


 一通りの話は終わり、そろそろかと帰り支度をする為に歯車が立ち上がった時だった。

 不意に疑問に思った和人から出た言葉は寧ろ遅いぐらいだった。

 今までいた仲間の一人猫又案作の姿が見えないのだ。

 一種動きが止まった歯車は直ぐに何時もの口調で答える。


「ああ、猫又か……実はなああいつは別の部隊に配属になったんだよ」

「え!? そうなんですか!?」

「急な事だから驚くのも無理はないと思うが、今この部屋にいる奴らが新しい部隊のメンバーだ」

「そう、なんですか……」


 残念そうにする和人を前に歯車はそそくさと帰り支度を済ませる。

 これ以上追及されたくないとばかりに部屋を後にする。


「これで()()だなんて一言も言ってねえのになあ」


 歯車の額から冷や汗が零れ落ちる。


「ホントすぐ気づくってのはお前の良い所だよ和人」


 そう言う歯車の表情は怒りで満ち溢れていた。

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