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ワールドリメイク 世界奪還戦線  作者: husahusa
第二章 本部襲撃事件
22/30

第二十一話「第三勢力」

 -5月23日 16:10-


 一直線に落ちた黄色い鳥。

 いや、落ちたのではなく本部に突っ込んでいったのだ。

 歯車たちはその一瞬の出来事を見ている事しかできなかった。


「俺は中を見て来る! お前らは外で待機していてくれ!」

「えっちょっと!」

「隊長!?」

「俺も!」

「いや大丈夫だ!」


 暫く呆けていたが、一番最初に動いたのは歯車だった。

 ついて行くと言った中島を制止して一人本部の中へと走っていく。

 幾ら上官の命令とはいえ、未確認の敵を目の前にしておとなしく待っている程優等生では無い三人。

 誰が言うまでもなく自然と三人も本部の中へと進もうとした時、後ろから声を掛けられる。


「もう一人はどうした?」


 振り返るとそこには見覚えのない一人の男。

 明らかに初対面で馴れ馴れしく話す様子に、中島は何処かで会ったかと自身の記憶を辿る。


「貴方こんな所で何してるの……」

「一応この場所は関係者以外立ち入り禁止なんだけどね……」


 二人の言葉で考えのベクトルを変える。

 そうだ、今はそんな事を考えている場合では無い。

 この場所に来るのは一般人では無い、もちろんメディアの職員の服装はしていない。

 此方の味方では無いとするのなら――。


「お前もあの鳥の仲間か!」

「お前だけ遅せーんだよ」


 中島を馬鹿にするように鼻で笑う。


「目的は何?」


 猫又の問いに一気に男の笑みが消え無表情になる。

 余りの落差にぞっとする三人。

 改めて男を敵だと認識し三人は臨戦態勢になる。


「だから遅せーんだよ、そんなんで奴らに勝てるのかよ……『騎士邁進(ナイト・オーダー)』」


 瞬間男の周りから眩い光が溢れ出す。

 咄嗟に目を閉じる三人は一体何が起きているのかわからない。

 

 ――目を閉じている時に奴は何を。


 三鶴城は目を閉じた瞬間、そう考えた。

 眩しさに耐えながらなんとか目を開けた時に見た光景は、まさに三鶴城が考えていた通りだった。


「危ない!」


 猫又に斬りかかろうとする何者かと猫又との間に滑り込み、剣のオルギアでその斬撃を受ける。


「重いっ……!」


 やがて眩しさは弱くなり、三鶴城の前にその何者かの姿が浮かぶ。

 状況から察するに先ほどの男しかいないのだが、三鶴城の目の前には白い騎士がいた。


「誰?」

「はあ? さっきからずっと目の前に居ただろうが!」


 白い騎士の大剣が三鶴城の剣ごと切り刻まんと唸りを上げる。

 ビリビリと重い重圧が身体中を襲う。

 ゼロ距離でその雄叫びを聞いた三鶴城は一瞬怯んでしまう。


「死ねやあ!」


 男はその隙を見逃さずに力任せに大剣を振り上げる。

 勢いのまま三鶴城の身体も宙を舞う。


「コスタリカ!」


 宙を舞う三鶴城にトドメを刺そうと今度は大剣を振り下ろそうとした男に猫又の操るコスタリカがトップスピードで男の腹部に衝突する。


「ぐう!」


 潰れたような声を短く上げ怯んだが、それも一瞬で瞬時にコスタリカを掴み地面に投げつけ潰す。


「ふざけんなよてめえ!」


 男の標的が三鶴城から自分に変わったことを確信した猫又。

 中島にアイコンタクトを送る。瞬時に中島も猫又が何を考えているのか理解する。

 男の攻撃を躱しながら次第に三鶴城からゆっくりと離れていく。

 そして中島は気づかれない様に三鶴城を起こし、安全な場所まで運ぶ。

 長くチームとして動いている者達だからできる事だった。


「くそってめえ! 逃げてんじゃねえ!」


 はっきり言って集中状態の猫又は三人の中で一番強い。

 しかしそれは『コスタリカで遠距離攻撃できる』と言う絶対条件の元でのみだ。

 つまりは猫又自身が安全な場所で一方的に攻撃出来るという環境でのみ、その絶対的な集中力を発揮しコスタリカを操る事が出来なければ一番強いという状態にはならない。

 しかし今の状況は到底猫又が最強になる状態とは程遠い。

 コスタリカも破壊され、次第に追い詰められていく猫又だったが、彼には一切の焦りは無く、寧ろ白い騎士を本部の出入り口付近にまで誘導していた。


「よくやった猫又、後は任せろ」


 背後から聞こえてきた声に思わず笑みがこぼれる。

 きっと来ると思っていた。

 だからこそこんな無茶をした。


「待ってましたよ、大地さん!」


 猫又の背後から複数の兵士達を連れ現れたのは戦闘部隊のNo.2神室大地(かむろだいち)

 猫又がアサルト第23部隊に来る前に配属されていた時の部隊長だ。

 猫又の移動と同時に神室も戦闘部隊のNo.2にまで昇格していた。その事を猫又も知っていた。

 必ずこの場にいると信じて、神室が居るという保証も無く白い騎士を入り口前にまで誘導していた。

 だが、神室は居た。

 神室もまた猫又の期待に応えるべく、白い騎士へと応戦する。


「雑魚共がいくら増えても同じなんだよおおおおお!」


 一連の流れを見ていた白い騎士は痺れを切らし、乱暴に大剣を振り回しながら神室へと向かっていく。

 そこに何の技術も無く、一直線に突っ込んでくる様子を見て、神室は冷静に部下たちに告げる。


「一斉射撃」


 神室の合図と共に無数の音が響く。

 部下達が手にしているのは銃型のオルギア、幾らリーチのある大剣と言えどもその間合いに入らなければ意味は無い。

 白い騎士は神室に近づこうとするも無数の銃弾に為すすべなく撃たれ続け、次第にその足の進みは小さくなり遂には全く動かなくなった。


「油断するな、打ち続けろ」


 神室が一瞬手が緩んだ部下達の気を再び引き締める。

 止まる事の無い無数の銃弾は白い騎士に向かい続ける。完全に動きの止まっている白い騎士に向け尚も銃弾は打たれ続ける。

 白い騎士の動きが止まってから数秒、その白い身体からは赤い液体が流れ出ていた。

 誰もが白い騎士の死を確信し、神室が攻撃を止めさせ率先して近づく。


「全く、相変わらず後先考えない奴だ……」


 先ほどとは違う声が白い騎士から発せられる。

 神室は一瞬戸惑うが、すぐに白い騎士にトドメを刺す判断を下し、更に近づく。

 その時、上空から物音が響く。

 見ると先程侵入した者が上から落ちてくるではないか。


「余所見をいている場合では無いのではないか?」

「くっ!」


 不意に大剣を突き付けられようとしていたのを既の所で躱す。

 先ほどまでの荒々しく大剣を振り回すだけの戦い方では無く、ただ神室を殺す為だけに振るう冷たさすら感じる剣筋にまで変わっていた。

 機械的にただ神室を殺そうと最善手のみを振るう。

 本来の剣という物の使い方としてはこの上なく正しいのだろうが――。


(人間味を感じないなあっ)


 躱すのに精一杯の神室はそう感じていた。

 白い騎士の雰囲気が変わってからもう一人の敵の事に構っている余裕は無く、少し目線を向ける事すら難しい状況になっていた。


(まっ、あれやったの亞月さんでしょ、ならとりあえずは大丈夫かな?)


 改めて白い騎士に向き合う神室。

 大剣の構えから覇気まで何から何まで違う。

 特に変わったと感じたのは殺気だった。

 先ほどまでは子供が駄々をこねる様に大剣を振り回しているに過ぎなかったが、今はただ此方を殺すことだけを考えているように思う。


(まるっきり別人だね……ならっ!)


 神室が先手を取ろうとした時真後ろから突風が吹き荒れる。


「なっ!?」


 そう、亞月の手により上から落ちてきたもう一人の敵、黄色い鳥がその大きな両翼を乱暴に振り回していたのだ。


「どいつもこいつも力任せかよ!」


 その中には壁ごと敵をなぎ倒した亞月も含まれていた。


「さっきから気が散りすぎているぞ貴様」


 後ろには黄色い鳥が、目の前には大剣を振り被る白い騎士が。

 突風で思う様に動けない神室はとうとう『自身の能力を使う覚悟』をする。


「ザポイエア」


 そう呟いた瞬間神室の右腕は巨大に肥大化し、化け物の様な見た目になる。

 白い騎士が振り下ろした大剣をものともせず、亞月が黄色い鳥にしたように神室も剣ごと白い騎士を殴り飛ばす。

 白い騎士は勢いを止められず後方に吹き飛ぶ。

 幸い吹き飛んだ飛んだ方向に障害物は無く、数秒倒れ込んでいたが、追撃のダメージを受ける事無く起き上がる。


「ははは! 貴様のその腕! そうか! お前もか!」

「は? お前も?」

「ああ、こんな貧弱な肉体でなければ貴様なんぞっ!」

「何言ってんだあんた! この腕の事知ってるって! あの施設の!?」


 神室は急に取り乱す。


「残念だが、この肉体の限界が来たようでな。それに迎えが来たようだ」

「アホかお前! 何のんきな事言ってんねん! むちゃくちゃして!」

「は? どこから出てきた!?」


 神室が一切の気配を感じる事無く現れた少女。

 見ると左脇にはつい先ほどまで後ろで暴れていた黄色い鳥までいる。


「待て!」

「待つかあほ!」


 そういって少女は右脇に白い騎士を抱えると完全に消えた。


「あの子は、あいつらは一体?」


 周りは重傷を負った兵士達と半壊した本部のみが残っていた。

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