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ワールドリメイク 世界奪還戦線  作者: husahusa
第一章 失敗したスタートダッシュ
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第九話「修行二日目」

 -4月13日 AM9:00-


 昨日と同じ時間に仁王立ちで和人の前に立つ三鶴城。

 今日も修行が始まる。


「昨日で和人自身の強さは大体わかったわ。だから今日はデルタと一緒にかかって来なさい!」

「師匠はどうするんですか?」

「決まってるじゃない、素手よ」

「え?」


 思わず聞き返す和人。

 そのリアクションを見て三鶴城は思わずため息を付く。


「貴方ねぇ……もう昨日の事を忘れたの?」


 そんな事は無い、和人はハッキリと昨日の出来事を覚えている。

 三鶴城には手も足も出なかった、要するに和人はなめられているのだ。


「流石に舐めすぎじゃないですか……」

「また負けるのが怖いの?」


 三鶴城の挑発に迷うことなく乗る。


「バースト・オン」


 和人はデルタの能力を使った。


---


「いいんですかあれ」


 中島が歯車に言う。


「あれぐらいしないと和人は強くならないんだとさ……」

「そうですか」


 中島はいささか納得できない様だった。


「心配か?」

「ええ、まあ」

「だよなあ……何でこんな最前線に飛ばされたのか。司令官の息子だからか……あのオルギアもそうだ、俺すら見た事も無い代物だ、健人、油断するなよ」

「はい」


 返事をするとそのまま何処かへ行った中島。

 残った歯車は和人と三鶴城の戦いを顔を顰めながら見ていた。


---


「能力を使ってもその程度!? 論外ね!」


 三鶴城の蹴りは和人の腹部に命中する。

 ノーガードでそれを受けた和人はしかし、昨日に比べ痛みはかなりマシだった。おかげで直ぐに反撃に移る事も出来た。


 一方三鶴城は昨日とは違う点に気づいていた。

 戦闘開始から約10分、昨日と変わらず、ひたすらに三鶴城が和人の攻撃をいなしそして一撃を加えるという形は変わっていなくとも、その一撃を加えた腕や足には軽度の火傷が見られた。

 三鶴城は成程、間違いなく炎の性質だと一人で納得する。


「ふふっ……成程、確かに舐めすぎていた様ね」


 三鶴城は和人も見たことないオルギアを取り出す。


「あれ、師匠のは剣じゃ……」

「サブウェポンって所よ」


 三鶴城が二つ目のオルギアを起動させた。

 すると右手に風、左手に電気を纏う。

 オルギアの元は『黄金のブルドーザー』パナマ南部のコクル地方で発見された黄金細工である。


「次のはかなり痛いわよ」


 ノーモーションからいきなりトップスピードで和人の目の前まで近づく三鶴城。そのまま和人を渾身の力で殴り飛ばす。

 勿論ガードなど間に合わなかった和人はこれまでで一番後方に吹き飛ぶ。

 数十メートル先から大きい音が響き渡る。


---


 -4月13日 PM18:00-


「ああ、酷い目に合った……」


 部隊の仲間とともに夕食を取る和人。

 周りはその様子に笑い合っている。


「この二日間で随分とやられたみたいじゃないか」


 豪快に和人の肩を叩く歯車。


「はい、手も足も出ませんでした……」


 和人は痛みと悔しさから下を向きながら答える。


「ははは! 最初はそんなもんだ!」

「でも丈夫さは保障するわ」


 歯車に続き三鶴城がフォローする。

 しかし、三鶴城も本心で言っていた。

 三鶴城はあの時戦いの興奮で一切の手加減などせず、全力で和人を殴りつけた。

 我に返った時にはすでに遅く、和人ははるか後方にいた。


 ――やってしまった。

 慌てて和人が吹き飛んだ方向に向かう三鶴城。

 数メートル近づいた時に、前方から急突進してきたものを、これまた反射的に殴り飛ばした時に和人だと気づいたのは殴り飛ばした後だった。


 確実に只者では無い。

 それがこの部隊の和人の印象になっていた。

 歯車には和人の役割が理解できた、それは『盾』。

 後から来た中島から受け取った和人の戦術学校での成績表を見た時に確信した。


 模擬訓練においてのいかに相手に攻撃したかの数値、アタックは学年最下位。

 逆に相手からの攻撃を受けた数値、ヒットは学年一位。

 そして、戦闘不能となった回数、0。

 盾と表現するしかない。


 あのデルタというオルギアもそうだ、属性は炎といっても、能力の種類は肉体強化に当たるだろう。

 より盾としての性能を上げる為の処置だろう。

 歯車は疑問に思っていた配属先にも合点がいくが……。


「どうせなら盾で殴り潰すぐらいじゃねえと」

「はい?」

「いや、なんでもねえ……」


 訓練直後と言うのに、なんの疲れも見せず食事に食らいつく和人を見て、歯車はこれが若さかあるいは……。

 あまり深く考えない様にする。


「あ、おい和人! 俺の分まで食っただろう!」

「え!? 俺じゃないですよ!」

「あ、俺っす」

「猫又てめえ!」


 珍しく賑やかな食卓に思わず笑みがこぼれる三鶴城。

 しかし、もう一人はしかめっ面で和人を睨みつけている。


「中島健人君! お顔が怖いよー」


 三鶴城が中島の顔を表手で挟む。


「やめろ! 戦闘狂!」

「ひどーい!」


 三鶴城は身をクネクネさせている。

 中島はそんな三鶴城を冷めた目で見つめる。


「……今わからない事を考えても仕方ないんじゃない?」

「……そうやって先延ばしにするのが良くないんだ」


 言いながら、ようやく夕食に手を付ける中島。

 三鶴城はその様子をどこか寂しそうに見つめていた。


「あ、和人!」

「はい?」


 猫又が思い出したかのように声をかける。


「明日はネビュラとオルギアについて勉強ね」

「えー! 学校で散々やりましたよ……」

「ま、復習も兼ねてね」


 和人は猫又にブーイングをしている。

 その様子に笑顔を零す者。

 不貞腐れている者。

 様々な考えを置いて、夜は更けていく。

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