2 この世界について
本日3話目。
世界観の簡単な説明回。
すみません(^_^;)溺愛はこの次の次あたりからになります。
彼女ーーー魔王様に名前を教えてもらってから俺と魔王様は別の部屋に向かっていた。
あ、ちなみに魔王様の名前は迂闊に口にだすわけにはいかないので俺は魔王様呼びていくことになった。
本当は本名で呼びたいけど、この地下の魔王様の住みかも確実に安全とは言えないらしいので、仕方ない。
遺跡のような部屋の場所から移動したのは何やら本がいっぱいある部屋。
そこについてから魔王様は地図らしきものを持ってきて俺に説明してくれた。
「まず、この世界には人間と魔族・・・大まかにこの2種類が存在するの。人間は魔力を持っていても使える人と使えない人がいて、使える人を魔術師と呼んでるの。でも魔術師が魔法を使うのはとっても危険なことなの」
「危険?」
「魔術師が魔法を使うために必要な魔力は魔術師自身の魔力・・・すなわち生命力を魔力に変換して魔法を使うの。だから魔術師は自分の命を削りながら魔法を使うの」
「俺は魔力がないみたいだけど・・・俺でもそれはできるの?」
「魔力=生命力と言っても、異世界人であるあなたにどんな影響があるのかはわからないわ。でも・・・もし魔力を持つようになっても魔法は使わないで。もし使えばどんな事態がおきるか想像できないし、魔力をもったら私の『死の魔力』の影響を受けて、たちまちジュンが死ぬかもしれないから・・・」
「・・・ごめん。変なこと聞いて。続けて」
馬鹿な質問をしたことを反省して続きを魔王様に促すと魔王様も頷いて言葉を続けた。
「人間の説明はそんなところ。じゃあ、なんで人間は危険なことなのに魔法を使うのかと言えば・・・結論から言えば敵対している魔族を殺すためなの」
「魔族・・・」
「私も大まかな分類では魔族だけど・・・魔族にもいくつか種類があるの。『魔物』と呼ばれる魔力を持って魔法を使える生き物と・・・人間にそっくりな姿をして知能と魔力に優れた『魔人』と呼ばれる種族ね。それで・・・その魔族と人間は互いが互いに本能で殺し会うことが宿命づけられてるの」
「なんでそんな・・・」
「さあ?昔からそんな感じで不毛な殺しあいを続けているから改めて理由を説明しようと思っても難しいわね。ただ言えることは互いが互いに嫌悪感を抱いてるから本来なら人間と魔族は互いに殺しあうことになるの。私の場合は少し事情が違うけど・・・」
「違うというと?」
「私・・・というか、魔人は人間と違って寿命という概念が存在しないの。だから永遠とも言える時を生きることが出来るんだけど、魔人は1000年以上の時を生きると魔力の器が進化するの。そうして進化した魔人は今までの何十倍もの魔力を得てさらに強化していく。ただ、たいていの場合はその前に人間に殺されるからそこまで行く魔人はほとんどいないんだけどね」
「・・・・・」
「そうして進化した魔人のことを人間は魔力を極めしもの・・・『魔王』と呼ぶようになったそうよ」
それってつまり魔王様は・・・
「そう・・・私も1000年以上の時を生きて魔王と呼ばれるようになったの。私以外にも魔王と呼ばれる魔人は他に4人いるんだけど・・・みんな人間を殺すことが好きな連中なのよ。私は向かってくる相手が多くて仕方なく応戦してからそうなっちゃっただけなんだけどね・・・軽蔑したかしら?」
俺はその質問に首を横に降って答えた。
「降りかかる火の粉を払うことは仕方ないことです。だから魔王様を軽蔑なんてしません。むしろ安心しました」
「安心?」
「ええ。魔王様は殺すことが好きなわけじゃなくて仕方なく殺すことしかできなかったって・・・そこに安心しました」
これが殺すことが好きなだけの狂人なら軽蔑もするだろうけど、少なくとも魔王様は殺すことを仕方なくやってきたという。なら魔王様は・・・
「魔王様を軽蔑なんて絶対にしません。そんな優しいあなたを俺は好きになったんですから」
人を殺したことをとやかく言うつもりはない。俺はそんな聖人でもなければ心が綺麗なわけでもない。例え悪役になろうとも、例え世界中から疎まれていようと魔王様と一緒にいれるならそれでいい。魔王様が生きていてくれるからそれだけでいい。本気でそう思うようになった。
「そう・・・ありがとう」
そんな俺の言葉に魔王様はどこか安心したように微笑んだ。
「それで・・・話を戻すけど、私以外の魔王には魔人と魔物の配下がかなりの数いるのよ。私は・・・私以外の生き物が側にいることが出来ないから一人だったけどね。人間でいうところの国と土地とを持って人間を殺すことが私以外の魔王のやり方。人間もそれに対抗して色々やってるみたいだけど・・・多分その一環で異世界からの人間を召喚したんでしょうね」
そう言って魔王様は本が山積みになってるところから水晶らしきものを取り出してきて目の前においた。
「これは?」
「少し待ってて・・・これで見えるかしら?」
しばらく待つと何やら水晶が濁りだして徐々に形になっていき・・・そこには監視カメラのような映像が写り始めた。
「人間の言葉で『千里眼』と言うのかしら?遠くのものを見るための道具なのだけど、これなら私の魔力を直に浴びないから遠くの様子が見えるのよ」
そう言われて見ればそこに写っていたのは・・・