絶望に潜む希望になるお仕事
次で完結します。
まずは住民の避難、そして安全の確保だが、奴がその間大人しくしている保証はない。
幸いなことにアースと同じで待機組は一箇所に固まっている。
空間ごと覆えるバリアを張れば解決できるだろう。
「ミリア、もう一度転移できるか? アースの近くに冒険者共々集まっているはずだ。そこに全員を転移してくれ」
「できるけど、そんなことをするより外に逃げたほうが……」
「全員を守る。被害を最小限に抑えることが重要だ」
敵の強さは予想できない。
こちらの最強戦力であるアースやミリアが無理と言っているんだ。
生半可な覚悟じゃ倒せないだろう。
「でも、勝率なんか皆無だ。逃げたほうが……」
「いいからやるんだよ!」
誰が上司かなんて言っている場合ではない。
人命が懸かっているんだ。
ミリアにとってはハイエルフ全員が助かればいいだろうが、それは負けを前提にした話だ。
勝つためには、やることをやってからではないと、背中も見せられない。
「あの、すみません。私からもお願いします。何もできませんが、見捨てるとこれからの人生、ずっと後悔しそうで」
「ミリア……お願い、助けてあげて?」
「すみません。わたくしも協力しますので、どうか助けて下さいませ」
「ああもうっ! わかったよ! やるよ!」
そして、今度はすぐにその場にいた全員が転移する。
アースの傍へ急に現れた俺らを見て、集まっていた人々は騒ぎ出した。
「静まれ! 今からあれを倒す! そのために一箇所に集まってくれ! 死にたくないやつは集合しろ!」
「最悪逃げることも考えているが、あいつを野放しにはできない。皆の者、協力してくれ!!」
見た目は丸焦げだが、頼りになる騎士様のお言葉だ。
築き上げてきた信頼もあってか冒険者や住民は素直に従ってくれた。
その間も、邪神のようなものはジッとしている。
今がチャンスじゃないか?
「ミリア、防御というのは咄嗟に発動できるか?」
「そうだね。軽い衝撃くらいなら、ボクだけでも防げるよ」
「よし、アース頼んだ」
『フン、まずは力比べといくか』
そういい、今まで待ての姿勢だったアースが突進していく。
巨獣大合戦のようだが、それでもアースのほうが小動物に見えるのは敵の巨大さ故だろうか。
「グガァァアァァァア!!」
『グ……何という硬さだ。地面から生えてるかのように動かぬ』
そのまま腕で薙ぎ払おうとしたり、俺も苦しめられた尾でダメージを与えようとするも、奴はビクともしない。
あろうことか、一連の攻撃に対して困惑しているようにも思える。
そして、アースがブレスを放った。
「………グァウ?」
『ぬっ! いかん。ミリア殿、頼むぞ!』
「水魔法――神秘のベール、風魔法――不可視の領域!」
ミリアが防御すると同時に、邪神もどきからもブレス放たれる。
おそらくアースの行動を真似したのだろう。
辺り一面は火の海に包まれた。
「おいおい、あんなのどうやって倒すんだよ」
「せめて封印でもできれば……」
「魔力切れを待つか? でもハイエルフ達がここにいるってことは、あと何十年待てば良いのやら……」
バリアの外側は火の海。
そして内側は、人々の絶望に包まれていた。
「くっ、ボクだけじゃ持たない。セレナ、リーフも手伝ってくれ!」
「それがわたくしの贖罪でもあります。わかりましたわ!」
「あの、えっと……」
リーフはこちらを心配するようにチラチラと見てくるが、何よりも優先すべきは人命救助だ。
「俺のことは良い。任せた」
「……はいっ!」
「それとレティ、まだ眠っている同胞たちを起こしてくれないかな? 数十年眠っていたかもしれないけど、少しは役に立ってもらわないとね」
「わ、わかった!」
しかし、状況は最悪だ。
可能性があるなら、アレしかない。
「よし、ミリア、リーフ、アース。ロックストームアタックを仕掛けるぞ」
「え? シャチさんは何をするんですか?」
「指示するだけだ」
「働いてください」
「もちろん俺も動く」
作戦はこうだ。
アースの突進でも動かないなら、打撃ではなく削り取ってしまえば良い。
要は壁壊しの応用だ。
どんなに硬い相手でも、ドリルのように回転数を上げた攻撃には耐えられないはず。
「まずミリア。地下の壁を破壊したようにロックブラストを頼む」
「了解だよ」
「次にリーフ。風でトンネルのようなものを作れるか? できればミリアの作り出した岩を押し出し、回転数を増すようなトンネルが好ましい。技術としては難しいが、やってくれるか?」
「えっと、上手くいくかわかりませんが……やってみます」
「よし」
これで出来ないと言われても、作戦の要だ。
失敗するにしても、チャレンジしなければ始まらない。
チャンスはまだある。
例え失敗しても、それを生かして次に繋げれば良い。
「最後にアース……ミリアが削った場所に、至近距離でブレスを放ってほしい」
『フン……造作もない』
「よし、ならいますぐやるぞ!」
やることが決まれば行動あるのみ。
「ロックブラスト! 五連打ァ!」
「風よ、周囲に集まれ! そして旋風となりて目標に進んでください!」
まず、ミリアが壁を削った容量で、奴の腹に打ち込む。
そして、それをリーフがサポートする。
言っている言葉は丁寧だが、ミリアの魔法を竜巻のような風が後押ししている。
あの凶暴そうな魔法が、リーフの魔法なのだろう。
そして。
『散れ――』
アースのブレスが放たれる。
そして、奴……邪神のようなものに、確かに風穴を開けた。
『グォォォォオ!』
「勝利の雄叫びか!」
「やったか!」
「俺たちの勝利だ!!!」
それを見ていた住民からも、次々に勝鬨が上がる。
だがしかし。
「おい、なんで消滅しないんだ?」
「そうだね……残念だけど、まだ気配は、いや! 逆に強くなっていく!」
「え? え?」
目の前の奴は、そのまま倒れることなく縮んだ。
そして、膨大な魔力が周囲を包み込む。
「まずい、瘴気だ!」
「セレナさん、ミリアさん! 防御を!」
勝利宣言が嘘だったかのように、一瞬で周囲は禍々しい霧に包まれる。
バリア内にいた俺たちは無事だったが、その中に入れなかった味方もいる。
「……嘘、だろ?」
「アースさん! アースさん! 反応してください!!」
大きさ的には、人間の二倍くらいだろう。
しかし、そこまで縮んでも脅威が圧縮されただけらしい。
そして、こちらの最大戦力。アースドラゴンが一瞬にしてやられた。
「ハハハ……ボクに、どうしろって?」
「おい、ミリアしっかりしろ」
「無茶言わないでよ。あとはボク一人でアイツをどうにかしなきゃいけないんだ。もう逃げてもいいよね?」
「おい、目の前の仕事から逃げるなよ」
こいつが別の国へ行っていた理由は不明のままだが、ここでミリアに逃げられたら被害は必ず出る。
なら、いま戦力が揃っているこの状態で、目の前の奴を倒すしか無い。
「……わかった。お前はここにいろ」
「え?」
「後は俺に任せろ」
女性を守るのも、男の仕事ってな。
最終回! 社畜さん死す! デュエルスタンバイ!
こんなんじゃ……満足、できねぇぜ。




