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最終確認でダメ出しを食らうお仕事

あと2話に増えましたが、今日中に完結します。

 

 どうしてこうなったかは聞くまでもない。

 セレナの洗脳技術の応用だろう。


「こうなったからには仕方ないね。レティの相手はボクが……」

「お前は攻撃できるのか?」

「……いや、無理だ。最悪死ぬことも覚悟している」


 溺愛しているらしいお互いを戦わせるのは酷だろう。

 奴の立体映像もニヤニヤしてこちらを見ている。

 それなら俺がやるしかない。


「ミリアを傷つけたとなるとレスティアが悲しむ。俺が相手をしよう」

「あ、レティを傷つけてもタダじゃおかないよ? その場合はボクが何倍にもして君を痛めつけるからね」

「……面倒くさいな」


 一瞬だけ、レスティアに殺されるならミリアも本望か? とも思ったが後味が悪すぎる。

 それなら、多少面倒でも引き受けたほうが良い。


「じゃあ、任せたよ。騎士さんは……無効化できればいっか」

「確かにその通りだが」


 ミリアも自前の刀を構える。

 こうなるなら、レスティアに刀を渡さないで正解だったな。




 背後から剣戟の響きが聞こえる。

 同時に、俺とレスティアによる戦いも始まった。


「くっ、手加減なしかよ」

「…………」

「火魔法ってのは、相手にすると厄介だな」


 武器である短剣は投擲した。

 今は拾っている余裕もない。


 しかし、手はある。


「ぐっ、今だ!  十手固め!」

「…………!」


 俺に十手術は使えない。

 しかし、刀を捉えて逸らすことはできる。


 素手だと油断した隙を狙い、固まったレスティアにすぐさま腹パンを叩き込む。

 少女に対して酷い仕打ちだが、今はそんなことを言っている余裕はない。


 そのままレスティアは蹲って倒れた。どうやら無力化には成功したらしい。


「……ふぅ、いっちょ上がりか。そっちは……うごぉ!!」


 もう片方はどうなったのか様子を見ると、鋼鉄かと思えるような拳が腹にはいった。

 そのまま少しだけ浮遊して床に崩れ落ちる。


「ボクは言ったさ。レティの痛みを何倍に増幅させて返すと」

「今は、そんな場合じゃ……ないだろ」

「大体、こんな少女のお腹になんてこ……っ!」


 話の途中で、ミリアが真後ろに魔法を放つ。

 何があったのかと顔を向けると、そこにはもう一人の騎士がいた。


「…………」

「何だハンスか。驚かせやがって」

「誰かと思えば、弱い方の騎士さんか。ならいいや」

「…………」


 多分こいつも洗脳状態にあるのだろう。

 しかし、俺らの辛辣な言葉に少し泣いたような気がした。


 そして更に、もう一人の騎士も立ちはだかる。


「おい、倒したんじゃなかったのか?」

「ボクはレティを痛みつける極悪人を片付けただけさ。他の人なんて知らないね」

「このババア」

「水魔法――神秘のベール。広範囲魔法――煉獄の炎!」


 ベールがレスティアとミリアを包み込む。

 同時に、この空間は全て焼き尽くすような炎に包まれた。




 あとに残ったのは、丸焦げにされた男三人と、無傷でいる女性と少女だった。


「よし、進もうか」

「おい待て」

「キャ! ふ、服を着なよ……」


 鎧を着ていた騎士二人はともかく、俺の衣服は今しがた焼かれたばかりだ。

 しかし、俺の裸よりも重要な案件がある。


「キャ? だと。何いまさら可愛娘ぶっているんだ。もっと可愛げのない悲鳴をあげろ」

「そこ!? ボーイッシュなのは認めるけど……これでもボク、乙女なんだけど」

「は、乙女? ババアの間違いだろ」


 二回目の煉獄が放たれた。

 そして続けて三回目の炎に焼かれ、これでもかというくらいにこんがりと焼ける。

 ウェルダンを通り越して炭だろこれ。


「さて、じゃあボク一人で向こう側へいくね」


 ミリアは意識のないレスティアを置いて、さっさと扉の向こうへ行ってしまった。

 騎士二人は俺に巻き込まれて丸焦げだし、使い物にならないだろう。


「……俺も行くか」


 気は進まないが、先に進むしか無い。

 さすがにミリアだけに任せるわけにはいかないので、俺も最後くらいは見届ける。


 そう思い開けた扉の先は、予想外の空間が広がっていた。




「え?」

「おやおや、遅かったですね。この方のおかげで、今しがた完成したところですよ」


 どこかの実験施設を想像していたが、そこは遺跡だった。

 いや、墓地というのが正しいのかもしれない。

 透明なケースがいくつも並べてあり、まるで魔法陣のようなものを取り囲むようにして広がっている。


 そして、その中心には磔にされたセレナとリーフ。

 あれだけの強さを誇りながら、地面に蹲っているミリアがいた。


「しゃ、シャチさん! ここは危険です! 逃げて!」

「先生ぇ……どうして」

「ぐぅ…………」


 三者三様の反応をしてくれるが、まだ状況を把握できない。

 しかし、状況把握なんて後回しだ。この一瞬が命取りにもなる。


「奴を攻撃しろ! 相棒!」

「フッ、一体何を……ウボァー!」


 何も俺の仲間はハイエルフだけじゃない。

 ここにはリーフがいる。つまり、囚われていた相棒もいる。


「おかえり、スラリー」


 槍状になって白衣の男を刺したスラリーは、喜びを表現するようにその場で飛び跳ねた。




 まずは白衣の男を確かめる。

 胸に手を当てても鼓動は感じられない。やったか?


「あの、シャチさん。解いてくれるとありがたいのですが……」

「ちょっと待て。まずは安全を確保してからだ」


 奴は完成したといった。

 しかし、それが何かわからない以上油断はできない。


 警戒しながらも、回収した短剣でリーフの拘束を解く。


「そ、その、あまり近づかないでもらえますか?」

「ん? どうしてだ」


 一瞬嫌われたと思って落ち込んだが、その視線は下に向けられていた。

 釣られて俺も下を見る。


「……ちょっと待て」


 名前も知らぬ男から白衣をぶんどった。

 それを着ると、リーフの視線もようやく上を向いた。


「……変態が」

「ちょ! ち、違いますよ!」


 わめくリーフは無視し、ついでにセレナも解放する。

 その際にも警戒は怠らないが、最後はミリアだ。


「おい、お前が無力化されるなんてどうした」

「………げて」

「ん? 何だって」

「……早く逃げるんだ!!」


 いきなりのミリアの大声に、カプセルから同胞を助けようとしていたリーフも、白衣の男に近づいていたセレナも動きを止める。


 そして、中心に描かれていた魔法陣が光りだした。


「時間がない! 今すぐここから離れろ!」

「でも、私達の同胞たちが!」

「くっ! 人手が足りない! はやく皆を集めるんだ! こっち側に集めて! まとめて転移する!」


 ミリアが指示した位置は、カプセルの四分の一といった範囲だった。

 逆に言えば、それ以外の範囲にいるハイエルフは見捨てるらしい。


「そんな! 目の前にいるのに!」

「このままじゃ全員死ぬぞ! 三分間待ってやる! その間に出来る限り集めて!」


 どこぞの大佐かとツッコミたくなるが、魔法陣の光り方から見た助け出せる限界までの猶予なはずだ。


 こうしている間にも、魔法陣は着々と輝きを増している。


「ボクは外の三人を回収してくる! セレナとリーフはそのまま集めて!」

「でもカプセルが硬くて……え、スラリーちゃん?」


 ここでもスラリーは活躍する。

 重くてリーフの細腕じゃ開かないような蓋を、次々と持ち上げては去っていく。

 羨望の眼差しでスラリーを見るその姿は、まるで恋する乙女のようだ。


「俺も負けていられないな。土魔法――マルチタスク、クアッドコア!」


 いくら人手が足りないといってもただの人形ならいらない。

 ならどうするか? 頭脳を入れたら良い。

 蓋はスラリーが開いてくれるんだ。あとは俺の分身たちに、それぞれその場に合った最適行動をしてもらえば良い。


 そして途中からレスティアも救出に加わり、最後にスラリーが巨大化して全員をこちら側へ押し出す。


「よし、ではすぐに転移する! 場所は……王都の外へ!」


 そして、目の前の魔法陣が輝きだし、何かの腕が這い出てきたのと同時に俺たちは転移した。




 一瞬にして景色が変わる。

 目の前には、入るときに見えたような城壁がそびえている。

 すぐ目の前に門があることから、王都の外というには目の先にしか移動しなかったらしい。


「おい、ミリアと言ったか。お前にはアレがわかるのか?」

「わかるなんてもんじゃない。この街は壊滅する」

「オイオイ、中にはまだ王子や住民だって……」

「……来るぞ!」


 地響き。

 そして、大地が隆起する。

 地割れが起き、その割れ目から何かが這い出てくる。

 腕が、その頭が、身体が順番に現れてくる。


 そうして、全身……五十メートル以上はあるだろう身体が現れた。


「何だありゃ」

「そういえば、先生は神降ろしをすると言っていたわ。まさかあれが……神様なの?」

「神でも、邪神と呼ばれる部類だろうね。ボクたちの魔力はあれを呼び出すために使われていたのか」

「まあ、トドメはミリアの膨大な魔力だろうな」

「うっ……自覚があるだけつらいよ」


 魔法陣からは想像できなかったが、その大きさはアースの二倍はあるだろう。

 禍々しいオーラを放つそれは、どこぞの巨神兵を思い出させる。

 問題は、完全体らしきそれが敵なことだ。


「このままだと王都は潰れるぞ!」

「王都どころか、世界がやばいんじゃねぇか?」

「ハハッ、さすがのボクでも、あれは無理だね……」

「ミリアが無理なら、アースも無理か」

「はい詰んだー」


 当初の目的は達成した。

 他の奴らの意見はどうでも良い。

 俺としては、クライアントが何と言うかだ。


「リーフ。ハイエルフも助けて、依頼は達成したぞ」

「え? この状況でそれですか! ちょっと待ってください!」

「だから、これで完了で良いのか?」


 最後の決断は依頼主に任せる。

 これでオーケーならよし。しかし、もし不備があるならば。


「……ダメです。あれを倒すまでは」

「心得た」


 顧客が満足できるまで、やってやろうじゃないか。

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