表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/25

タイムリミットと戦うお仕事

あと4話なので、今日中に完結します。

 

 残り一分。

 時間は有限だ。この場合だと命が懸かっている。


「おい、寝坊助。起きろ」

「えへへ……ミリアぁ……好き」

「ダメだこいつ」


 しかし、状況を説明している暇がないのも事実だ。

 このままのほうが今は都合が良い。


「――残り五十秒ほどか」


 警告は三十秒前と十秒前だろう。

 仕事で鍛えたスキルは思わぬところで役に立つものだ。

 六秒でこなす仕事を延々と繰り返していたからか、いつしか一分までなら正確に数えることができていた。

 ストップウォッチの達人とは俺のことだ。


「――残り四十六秒。いかんな、集中せねば」


 優先事項はこの場からの生還。

 俺一人だけならまだしも、レスティアは普通の人間だ。

 善意の協力者に過ぎない。


 扱いは適当だったが、これでも彼女には恩を感じている。ここで見捨てるという選択肢はない。


「あいつ、見ているな!」


 時間は有限。

 故に、行動を間違えることはできない。

 監視カメラなんか気にしても結果は同じだろう。


 奴はこちらの状況をニヤニヤ観察しているはず。

 そして脱出しても、その場で死んだように見せかけても、俺という存在がいたことを忘れることはないだろう。

 セキュリティのレベルから、奴の警戒心が高いのは明らかだ。

 なので、この際監視カメラは無視する。


「――残り四十秒。廃棄……というのが閉鎖なら良いが、奴はマッドだ。多分自爆させるだろう」


 こちらに都合の良い事態を考えてはいけない。

 物事は常に最悪を想定して行動する。そうしなければ、思わぬ事態で取り返しのつかないことになってしまう。

 客先クレームや市場クレームなどが良い例だ。

 多分大丈夫だろう、その考えが一番危ない。


「こいつを連れて脱出か、ここで守りを固めるかの二択か」


 幸せそうに眠るレスティアの寝顔を見ながら考える。


 自爆させる方法がわかれば、原因を破壊するだけで良い。

 しかし、本当に自爆するのかも不明だ。

 俺だけならこの肉体で耐え切れば良い。

 しかし、レスティアは生き埋めになるか跡形もなく消滅するだろう。

 そう、俺達に付き合ったばかりに。


 なので守りを固める場合は、威力が未知数の自爆に対する防御を構えなければならない。

 ……そんなのは、現実的ではない。


「――警告。残り三十秒。速やかに避難してください」

「何処にだよ」


 思わずツッコミを入れてしまうのも仕方のないことだろう。

 この空間は完全に封鎖されている。

 避難できるなら二つある扉の向こう側しかない。

 いくら俺を始末するためとはいえ、この部屋も中々の文明なのに勿体無いとは思う。


 今ここに使えそうなもの……パッと見て利用できそうな道具はない。

 電気が使えれば有用なものはある。が、この世界で使えるとも限らない今、賭けにでるにはあまりにも危険すぎる。


「残り二十秒か。くっ、どうやって脱出する」


 壁は固い金属のようなもので出来ている。

 生半可な打撃ではへこみすらしないだろう。

 アースがいれば一発で脱出できただろうが、呼ぶにしてもリーフがいないと呼べない。

 せめてレスティアが起きていれば剣で鉄を融解させたかもしれないが、説明している時間でお陀仏だろう。


 となれば、脱出するために取れる方法は一つだ。

 俺に火魔法は使えない。

 しかし、土魔法は使える。


 守りを固めるにはもってこいだが、岩を削り、粒子を集めることもできるはずだ。


「って、岩がないじゃないか」


 扉の向こうならまだしも、ここは部屋の中だ。

 削るべき壁と言えば鉄のみ。材料となる砂はない。


「チッ、時間がない! 許せ!」


 俺は咄嗟に自分の靴と、レスティアの靴を脱がす。

 そしてそのまま扉に投げつけ、魔法を行使する。


「土魔法――砥粒銃トリューガン!」


 そのまま、目の前の扉を指で構えて打つ。

 靴から抽出した仄かな砂……砥粒にした塊は、勢いよく発射される。

 そして、頑丈に閉ざされた扉に、野球ボールほどの穴を貫通させた。




「――残り十秒」

「土魔法! ありったけの砂を引き寄せろ!」


 周囲から砂が集まる。


「――九」

「螺旋状に粒子を回転!」


 ドリルの容量で粒子を回転させるも、鉄を削るのは容易ではない。


「――八」

「この穴を広げろ!」


 なのでここまでやっても、野球ボールがハンドボールになったくらいにしか変化がない。

 時間がないというのに、こんな悠長にやっている余裕はない。


「――七」

「もっと量を集めろ!」


 粒子の量を増やし、回転数をあげる。

 しかしそれでも、人が通れるほどの空間にはまだまだ遠い。


「――六」

「もっとだ! もっと引き寄せろ!」


 壁の向こう側から、岩が削れるほどの砂を引き寄せる。

 そして風切り音が響いてくるほどに回転数をあげても、目の前の空間はさほど大きくならない。


「――五」

「……ダメか」


 時間がない。

 ここまでやってダメならば方針を帰るべきだろう。

 咄嗟に方向転換できる判断は大事だ。せめてレスティアだけでも通れる穴は広げたい。


「――四」

「そろそろか」


 レスティアがギリギリ通れるだけの穴を開け、壁を俺自身が塞ぐ。

 元々は自爆でもなんでも受ける気だったんだ。

 爆発されると決まったわけでもないので、俺一人なら大丈夫だろう。


 そしてその時、いままで開けていた穴が、急に広がった。


「――三」

「っっ!! まずい、飛び込むぞ!」


 先程の決意は虚しく、何者かの介入に寄って壁は破壊された。

 これでは穴を塞ぎきれない。


 ならば、当初の予定通り脱出するのみだ。


「――二」

「……おや? 二人も出てきたよ。まあいいや、邪魔だよ」


 何者かの声で、急に身体が引っ張られる。

 それも、穴から離すように後方へだ。


「ぐえぇ!」


 思いっきり壁に叩きつけられた。


「――一」

「よし、風魔法――内なる嵐! 土魔法――ロックオン!」




 ――ドッゴォォォォォォォォォ………………。


 目の前で起きてる出来事のはずが、何処か遠くで爆発があったみたいに音が響いてきた。

 それくらいに、目の前の空間は何者かによって密閉されていた。






 叩きつけられた衝撃と、自分が助かったという安堵で身体の力が抜ける。

 もし、目の前にいる人物が敵だったとしたら、今の俺は為す術もなくやられるだろう。


「さて、理由を聞こうか」


 ジャキ、と音を響かせて見事な刀を突きつけられる。

 刃物の先端を向けられる恐怖もあるが、このままでは首を一閃されて終わりだろう。


「俺は怪しいものではない」

「君たち人間はそう言うんだよ。ボクらにはそれが理解できないね」


 その言葉に、初めて顔を直視した。

 暗い中でも光って見える金髪、青く透き通った瞳、そして美形と言える顔立ちに、特徴的なのがその耳だ。


「お前もハイエルフか」

「だったらどうする? さて、君には色々と情報を吐いてもらわなければいけない。君は何を企んでいる?」

「リーフの救出と、奴への報復だ」

「え?」


 こいつが何を勘違いしているのか知らないが、元から俺の目的はリーフを送り届けるだけだ。

 仕事を完遂するまでは放棄するわけにもいかない。

 そして、奴に仕返しをする。


 そうでなければ、俺の気も済まない。


「リーフ?  てことは、彼女もここにいたのか? いやそれとも……」

「う、うーん……あれ、ここは?」


 何かを思案するような目の前の人物を置き、空気も読まずレスティアが目を覚ます。


「はれ? ミリアじゃないの……ミリアぁ!!」

「うわっ! ちょ、危なっ! て、レティ? どうしてこんな場所に?」


 いきなり飛びついたレスティアに、目の前の人物はオロオロとするだけだ。

 いつの間にか刀も地面に落ちている。


 そして、俺の知る最後のハイエルフ。

 ミリアと呼ばれた人物と出会った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ