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敵を騙して味方も騙すお仕事

 

 シーツを被って泣くその姿は、第一印象では幽霊か妖怪のようだ。


「嘘、さっき見た時は誰も……」

「いや、気づかなかっただけだろう」


 現に今も、暗闇をジッと見ないと目の前の姿は見逃しそうだ。

 そして、近づいた俺たちに反応して、目の前の人物は顔を上げた。


「何でもしますので……許してくださいませ」

「ほう。その場を逃れたい一心か。だがそこまで会社は甘くない」

「……え?」


 目の前の人物はキョトンとする。

 くすんだ金髪と透き通った緑の瞳が、こちらの姿を捉えた。


「えっと……誰かしら?」

「こっちが聞きたいところだ」

「え? まさか貴方も」


 そしてその人物は、リーフと同じ尖った耳を持っていた。


「わたくしはセレナと言います。これでもエルフで……」

「何だハイエルフじゃないのか。なら用はない」

「ちょ! アンタ、さすがにそれは酷いんじゃない!」


 今回の依頼はハイエルフ。

 しかも依頼人が行方不明ときた。

 尚更構っている暇などない。


「ハイエルフ? あなた方はもしや!」

「アタシとコイツは、ハイエルフを探しに来たのよ。貴方は何か知っているかしら?」

「ええ……ハイエルフ達は皆この地下で……私はそれを止めようとしてこんなところに……」

「よし、こいつを助けよう。レスティア頼んだ」


 どうやら俺たちの知りたい情報を、セレナという人物は所持している。

 牢から出て落ち着いたのか、セレナはこちらを見据えるとハッキリ言った。


「わたくしの婚約者……同じエルフである彼を止めてくださいませ」

「それは仕事の依頼か? 悪いが掛け持ちは」

「彼はわたくし達の同胞……ハイエルフ五十人を犠牲にして神を降臨させるつもりです。そしてエルフの頂点に立つと」

「そ、そんな!」

「神? ハッ、なんてバカバカしい」

「バ……馬鹿馬鹿しくは、ないかと……」


 実際に神の昇格道具にされた俺が言うんだ。

 ろくでもないことなのは確かだろう。




 セレナによると、ハイエルフ達は皆この城の地下にいるらしい。

 何でも神降臨に必要な魔力を随時吸い出されているとかで、カプセルのような容器に全員収容されていたとのことだ。


 セレナはその光景を見て彼に抗議し、あの牢屋に入れられていたらしい。


「でも酷いわ! だからって婚約者をあんな場所に……」

「わたくしが悪いのです。それに、他の目撃者は全員……」


 顔を伏せるところを見ると、他の人は処分されたらしい。

 婚約者ということで処分は免れたとのことだ。


「そうなると、リーフも捕まった可能性が高いか」


 いくら探してもこの牢には見当たらなかった。

 となると、彼女のいうカプセルのある場所というのが怪しい。


「頼む。そこまで案内してくれ」

「わたくしがあの場へ……」

「アタシ達はリーフの同胞を探しにきたのよ! ハイエルフのね!」

「えっ、リーフ? まさか逃れた同胞がいたのですか!」

「正確には、別の連中に捕まっていた」


 リーフがいない十数年で何があったかは知らない。

 しかし、ミリアという人物がいなくなった時期から考えて、そう昔のことでもないはずだ。


「ぜひ協力させてくださいませ!」

「わかった。レスティア頼む」

「もうっ、仕方ないわねー」


 文句を言いつつも、どこか嬉しそうに日本刀を構えてセレナを解放する。

 いままでスラリーにばかり手柄を取られて悔しかったのかもしれない。


 そしてセレナの案内で俺たちは一旦地上へ、そして再度地下へと移動する。


「……なあ、本当にこっちで合っているのか?」

「疑うのも無理はありませんわ。ここの地下は入り組んでいますの」


 やがて辿り着いたのは、厳重に封鎖された扉の前だった。


「この先にハイエルフ達がいるのか」

「やっとミリアに……」

「では、中へどうぞ」


 そしてセレナは横にあったセキュリティを解除し、ピッという音と共に扉が開いた。

 ここだけやけに近代的なのが気になるが、さらに重要な疑問もある。


「ささ、奥へどうぞ」

「おい」

「……どうしたの? 入らないの?」


 扉の前から動こうとしない俺を、不思議そうに二人が見てくる。

 しかし、ここで安全を怠ることはできない。


「どうしてそんなに手慣れているんだ?」

「何を急に……」

「お前はエルフといったが、ハイエルフとエルフの違いは何だ?」

「そんなの、耳の長さに決まって……え?」


 俺の疑問に、レスティアもそこに気づいたらしい。

 エルフよりも高位のハイエルフは、魔力の高さや生命力が高い。

 代わりに繁殖力に劣るらしい。

 見分け方としては、耳の長さで判断できるらしい。

 あの門番にもそれでバレたのではとリーフに言われた。


 なら、見た目が同じで耳の長さも同じなセレナは何か。

 答えは一つしかない。


「アッハッハ、バレては仕方ないわね! そうよ、わたくしはハイエルフよ!」

「何この人怖い」

「おう……俺もこの豹変っぷりは予想外だ」

「フン! 二人してリーフをおびき寄せるエサにしてあげるわ! 大体あの子は、いつの間にかいなくなったと思ったらこのタイミングで……」


 何かブツブツと言い出したセレナに背中を向け逃げ出すが、既に来た道は巨大な土壁で塞がれていた。

 そして、後ろからコツコツと響いてきた足音の持ち主が言う。


「無駄よ。この周辺は閉鎖させてもらったわ。大人しく捕まりなさいな」

「だってさ。レスティア、頼んだ」

「ちょ! アンタ見捨てる気! 嫌よアタシも!」


 そういって、火球や火放射を前に放つも、セレナは腕を振るだけで一掃する。

 どうやら足止めにもならないらしい。


「魔法勝負でわたくしに勝てるわけがありませんわ。ましてや火魔法で、それにハイエルフの中でも長の次に力を持つわたくしが……」

「長ったらしいんだよ、要点をまとめろ」


 奴がベラベラ喋っている間に、俺は土魔法で分身体を作り出す。


「土魔法――マルチタスク」

「ななな、何をしますの! いえ、人数が増えても影響は……」

「ちょっ! 嫌! やめて!」


 いつの間にか身体に纏わりついていた土によって俺たちは身動きが取れなくなる。

 さらに、水魔法でより強固に固められてしまったらしい。

 これではレスティアも、俺たち二人も動けない。


「フン! ではあなた方もあの中へ入って貰いましょう」


 そして、魔法で作り出したゴーレムのような存在にレスティアと俺達は連れ去られ、扉の向こうへ消えていった。


 その姿を、俺と、四人目の分身体……ついでにスラリーは土壁の中から眺めて見送った。


 マルチタスク。

 ダブルでは満足できない俺がアースとの戦闘中に編み出した技だ。

 まさかこんな形で活用するハメになるとは思わなかったが、身代わり人形としてレスティアまでも騙すのに成功したらしい。






 目の前で扉が閉じられる。

 相変わらず来た道は土壁で塞がっているので、さっきと同様に潜り込むことにした。

 俺がやったことは、セレナが分身体の二人に気を取られている隙きに壁に入り込んだだけだ。

 これが硬い壁だったらともかく、触れれば一部崩れるほどの強度だったので気づかれずに掘ることが出来た。

 何事も素早く、そして効率よくだ。


「よしよし、お前はよくやったよ」


 スラリーがいたおかげで、効率はグンと上昇した。

 アースよりも役に立っているスラリーには感謝しても足りないくらいだ。


 そのまま俺たちは地上へと戻る。

 そこには誰かがいた。


「誰だお前達は!」

「怪しいものではない。ただの脱獄者だ」

「脱獄? ここの牢は使われていないはずでは」

「おや、お前さんは……」


 そこには、騎士が二人。

 一人は、最初の街で会ったゴズウィンがいた。

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