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プリズンブレイクするお仕事

 

 目覚めたのは、ヒンヤリとした感覚だった。

 冷たくて気持ち良いので、ずっとこうしていたいくらいだ。

 目を開けると、月明かりで少しだけ状況が把握できる。


 薄暗い部屋。そして目の前にある鉄格子。

 傍に置かれた布が、申し訳程度に暖をとれとアピールしている。


「捕まったか」


 同じ部屋にリーフとレスティアはいない。

 どうやら別々に収容されているらしい。


 手は自由に動かせるが、足に鎖が繋がっているせいで鉄格子まで近づけないようになっているらしい。

 食事はどうなるのか不安なところだ。


「ま、さっさと出るか」


 こんなところで仕事をサボるわけにはいかない。

 武器も鉄格子の外に置かれて、ここでは魔法も使えないらしい。

 しかし、俺には仲間がいる。


「じゃあスラリー、俺の足を切断してくれ」


 その言葉に、スラリーは躊躇するかのようにブンブンと左右に揺れる。

 武器は取り上げられたが、まさかスライムまでいるとは思われていなかったようだ。

 しかし、こいつならわかってくれるはず。


「俺とアースの戦いを見ていただろ? 大丈夫だ、問題ない」


 まだ迷っていた感じのスラリーだったが、俺の意志は変わらない。

 やがて決心したかのように形状を鋭いブレードのようなものに変え、俺の足をめがけ一気に振り落とした。


「ぐっ……よくやった。ありがとな」


 痛みはない。

 しかし、視覚からくる苦痛は別だ。

 スラリーを見守るということもあったが、今回は自分の足が斬られる様子をマジマジと見つめた。

 そして、すぐに再生するところもだ。


 おかげでメカニズムはわかった。もう見るのはやめることにする。


 そのままスラリーを抱え、鉄格子まで近づく。

 外に人の気配はないので、今の時間は誰もいないらしい。

 しかし、当然ながら鍵がかかっている。


「さてどうするか……ん?」


 俺が悩んでいると、何やらスラリーが扉に張り付いてポヨポヨしている。

 やがて、カチリという音と共に扉が開いた。


「お前がやったのか?」


 まるで「褒めて褒めて!」と言わんばかりに俺に絡みついてくる。


「よしよし、凄いなお前。立派な仲間だぞ」


 スラリーがいなかったら脱出に苦労したに違いない。

 リーフとレスティアを捜索中に、思う存分撫でてやった。


 そして、探し人を発見する。


「よう」

「ひっ……て、アンタ! どうして外に……」

「今出してやる」


 さっきと同じようにスラリーが鍵を開ける。


「……聞いたことがあるわ。スライムは身体を固めたり柔らかくできるって」

「だろ? スラリーは凄い」

「おそらくは身体の一部を鍵穴に合わせて硬化させたわね。そして鍵を複製したかのように解錠……驚いたわ、そこまで知能があるなんて」

「レスティアより使えるな」

「くっ、悔しいけどその通りだわ……」


 中には入れたが、俺と同じようにレスティアの足は繋がれていた。


「これじゃ移動できないな。俺と同様に脱出するか」

「牢から出た方法はわかったけど、アンタはこれをどうやって?」


 さっき回収した短剣をチラつかせながら答える。


「足を切断した。じゃあ、覚悟しろよ」

「ちょ! やめて! そんな方法で無事なのはアンタだけよ!」


 鎖をジャラジャラ鳴らしながら必死に暴れるが、これは俺なりのブラックジョークだ。

 何もレスティアにまで同じ方法が通じるとは思っていない。


「しかし困ったな。ならどうやって……」

「その短剣を貸しなさい! こんな鎖、焼き切ってやるわ!」

「でもここ、魔法使えないぞ?」


 俺も土魔法で壁を変形できないか試みたが、特殊な結界が張られているらしい。

 別方向でスラリーの水魔法も試してもらったが、発動することはなかった。


「ならダメじゃないの!」

「逆切れするなよ」


 しかし、方法はある。


「スラリーはこの鎖を切れるか?」


 鎖を目の前に、しばらくジッとしていたスラリーだったが、とりあえず試してみるらしい。

 身体を変形させたり、溶かそうとしたりと、様々な方法をとってくれている。


「ほら、レスティアのためにここまでしてくれるんだぞ」

「うっ……それを言われると痛いわね」


 しかし、結果はあまりよろしくないようだ。

 やがて意気消沈したかのようにスラリーは戻ってきた。


「よしよし、よくやったよ」

「一応礼を言うわ。ありがと」


 そのことにスラリーは気分を良くしたのか、今度はレスティアに纏わりついたようだ。

 スラリーが離れてしまったのでちょっと寂しい。


「うわっぷ! ちょっ! くるしっ!」

「ははは、よかったなー」

「見てないで止めなさいよ!」

「よかったなー」


 棒読みなのは、スラリーを取られた嫉妬もあるので仕方ないことだろう。

 そしてふと通路に目を向けると、そこにはレスティアが持っていた剣が置いてあった。

 日本刀のようなそれは、鞘から抜くと暗がりでも輝いて見えるようだ。


 俺はそれを持って、未だスラリーと遊んでいるレスティアの元へ戻る。


「これで斬れないか?」

「あっ……そこはっ……んんっ! ダメェ……」

「………………」

「はぅぅん……って、ちょ! どこいくのよ!」

「お楽しみ中だったみたいだからな」


 スライムと戯れる少女……少女といっても平坦すぎるので、特になんとも思わない。

 せいぜい子供が背伸びしているかな? という程度だ。


「あっ、やめっ……ああっ! その剣!」

「どっちかにしろ。ほら、スラリーおいで」


 楽しむのか驚くのかわからないレスティアは放って、スラリーを呼び戻す。

 そして交換で日本刀のようなそれをレスティアに投げた。


「これで……フッ! よし!」


 その刀で見事に切断できたらしい。

 スラリーの努力も一刀両断されたようだ。心なしか落ち込んだように思える。


「さて、自由になったところで聞きたい。リーフは何処だ?」

「え? アンタと一緒じゃないの? なら別の部屋かしら」


 そのまま二人で牢を見て回ったが、リーフどころか他に囚人もいないようだ。

 探索中に見つけた階段へと向かおうとした時、微かに声が聞こえた。


「……何かいったか?」

「いえ、何も。気色悪いこと言わないでくれる?」


 しかし、スラリーには聞こえたらしい。

 まるで俺らを案内するように、牢の奥へと先導する。


 そして辿り着いた先には、シクシクと泣き声を出す何者かがいた。

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