表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

乱文と無意味

作者: A.kujou


意味のある人生さえ、送ることが出来れば人は悩むことが無い。


現代にて最高の知能を持つ科学者は、至る所で問題を解いた。


コンビニのレジに並んでいた時、ふとした瞬間にリーマン予想を解いた。

公園で遊ぶ子供達を眺めていた時、ふとした瞬間に友愛数の有限性、無限性について解いた。

玄関のドアを開け、ノブがぐらついた時、ふとした瞬間に魔方陣の数を解いた。


その科学者に、解けない問題はなかった。

その科学者に、間違いはなかった。

その科学者に、謎はなかった。


そんな科学者は、ある日から一つの問題に悩まされた。

数々の問題を解いた科学者にとって、その問題はもはや、謎そのものであった。


その問題は、どれだけ数式を並べても解は現れない

その問題は、誰も解いたことがなかった。

その問題は、数学の粋を超えていた。


科学者は、全てを捨てて悩み続けた。

その悩みは、胃に物を入れる事を拒み

科学者は、痩せていった。


しかし、科学者はその問題を解く事を辞めなかった。


ある日、科学者は一人の少女に出会った。

少女は、科学者を尊敬し、自ら助手になると名乗り出た。

科学者は、「それどころでは無い、俺には解かねばならぬ問題がある。」と答えた。


少女は、「私も手伝います。」と答えた。


科学者は、少女を助手に受け入れた。


助手は、とても働き者であった。


科学者の代わりに、部屋を掃除し

科学者の代わりに、食事を用意し

科学者の代わりに、本を書いた。


科学者は、その問題に対面しながら

助手に感謝を告げた。


科学者は、その問題の解に、助手と協力しようとはしなかった。

助手は、自らは望まずにただ、科学者の代わりをし続けた。


科学者は、疲れ果てていた。

問題に直面してから572日後、助手は科学者を無理やり外へと連れ出し散歩に誘った。

科学者は久しぶりの外の空気に触れ、世界の美しさを再認した。


「時間は無限にあります。」


助手のその言葉が、科学者を心を救った。

その日は外で過ごし、科学者と助手の距離はより近くなった。


帰宅後、科学者は自らが書き綴ってきた数式を眺めた。


そこで科学者は、涙を流した。


科学者は、その問題の意図がわからなくなっていた。

科学者は、その問題を解くための数式の意味がわからなくなっていた。

科学者にとって、その問題はもはや、問題ではなかった。


問題は解けてはいない

しかし、科学者にとってそれは、悩みでは無い


真実にたどり着いた科学者は、助手に告げた。

そこで助手は、初めてその問題を聞いた。


助手は答えた。


「私にとってもそれは、問題ではありません。」


助手が初めて訪れた日

助手が仕事をしている姿

助手と過ごした1日


そして、これからの助手との二人の姿

走馬灯のように流れたそれは、科学者は理解した。


「今の俺に、その問題は存在しない」


その問題は、科学者と助手には存在しない

その問題は、ふとした時から問題では無くなる

その問題に、解は存在しない


その問題とはーーー





翌日、助手は交通事故で死んだ。

科学者は、また、同じ問題に直面した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ