五章:願い
夏休みも中盤に差し掛かり、登校日。
「お前さ、なんか雰囲気変わったよな」
久しぶりに会うなり、畑山がそんなことを言ってきた。
「……そうか?」
「ああ。丸くなったというか、柔らかくなったというか。一瞬、別人かと思ったぞ」
変わった、だろうか?
俺としては、そんな感覚は全くない。しかしながら、変わったと言われれば思い当たるフシもある。
「ま、久しぶりだからな。そのせいじゃないか?」
そう言って、俺は笑う。本当は違うのだが。すると、畑山は俺を指差してそれだ、と頷いた。
「笑い方だ。お前、笑い方が全然違う。なんつーか、お前はそんな顔で笑うキャラじゃねえよ。何だ、その優男染みた笑いは」
「ずいぶんと言ってくれるな」
意識して顔をしかめる。
「ああ、今までのお前はそんな顔だったなー。しかし、無理やりって感じがするぞ」
……どうやら、俺はずいぶんと変わっていたらしい。
そんな俺を見て、畑山はニヤリと笑った。
「ははぁ……さては女だな?」
小指を立てながら聞いてくる。俺はどう答えたものかと肩を竦めた。
「ま、まさか図星だと! 抜け駆けしやがって!」
「なんでお前に抜け駆けの遠慮をしないといけないんだ。しかも、決め付けるなよ」
まあ、正解だけどな。
言外にそれを告げると、畑山は驚愕しながら数歩後ろへと下がった。
「こ、ここここの野郎……」
何やら面白い顔をしている畑山を笑い、俺は窓の外を眺める。
さて、学校が終わったらさっさと病院へ行こう。
明日から明後日かはわからないが、美樹の手術まで、もう時間もないしな。
学校が終わり、俺は制服のままで病院へと向かう。家に帰って着替えてもいいが、病院とは逆方向のため時間が惜しい。本当は、今日学校に行くのもサボろうとしたのだが、美樹にきちんと行くように言われてしまったので渋々登校した。
「……依存してるなぁ」
今まで気づかなかった自分の一面に、俺は自嘲するように呟く。しかし、それが不快ではない。
俺は、畑山の変わったという言葉に納得する。たしかに、大分変わったようだ。
病院の入り口をくぐり、通り慣れた通路を歩いていく。エレベーターに乗り込み、5階のボタンを押した。
冷房が効いているとはいえ、階段を上るのは面倒だ。
5階についた俺は、まっすぐ502号室へと向かう。そして、軽くノックした。
「はい。開いてますよ」
中から聞こえてくる声に、俺は表情を緩めてドアノブを捻る。
「邪魔するぞ」
一応そう言って、病室へと入った。すると、美樹が笑顔で迎えてくれる。
「お疲れ様です、修司さん。学校はどうでしたか?」
「いつも通り、ってとこだったな」
「いつも通り、ですか。良いなぁ……わたしも、学校に行きたいですよ」
拗ねたような声に、俺は苦笑した。
「今度の手術が終われば、通えるようになるさ」
「そうですね……成功すれば、通えますよね」
少しばかり、美樹の声が変わる。それを聞いた俺は、おどけるように口を開いた。
「そうなったら、俺の後輩になるんだけどな」
「そ、それは言わないでくださいよ」
俺の言葉に、美樹が頬を膨らませる。
美樹は俺と同い年だが、病気のせいで留年していた。そのため、復学したら俺の後輩ということになる。
「あ、だったら先輩って呼んだほうが良いですか?」
そんなことを言って、一転して楽しそうに笑う。
「……いや、今のままでいい」
それはそれで良いが。
俺が美樹と笑い合っていると、病室の扉がノックされる。美樹が返事をすると、白衣を着た医師が入ってきた。医師は俺を一度見ると、小さく笑う。
「おや、今日も来てくれたんだね」
「はい」
答えて会釈する。医師は少し考え込むが、すぐに再度笑みを浮かべた。
「君なら一緒に聞いてくれてもいいか……」
しかし、その笑みには真剣さが滲んでいる。その雰囲気に、俺と美樹は背筋を正した。
「手術を行う日が決まったよ。本来は数週間前に決定しなければいけないんだけどね。まあ、君の場合は出来るだけ早いほうがいいから、明日ということになった」
あまり前例のないことだけどね、と医師は苦笑する。
「明日、ですか……」
医師の言葉を美樹が呟く。しかし、覚悟は決まっている。すぐに力強く頷いた。
「はい」
強い意志が宿った目を見て、医師は満足そうに頷き返す。
「細かい説明は、君のお母さんが来てから話すよ。だから、それまでは二人でゆっくりしていてほしい」
それだけを言い残して、医師は病室を出て行く。俺と美樹はそれを見送ってから、目を合わせた。
「明日か」
「明日、ですね」
不思議と、気分は落ち着いていた。
「頑張れよ」
「はい。頑張ります」
それだけで、安心できる。
そして、美樹のお母さんが来るまで他愛のない話をずっと続けた。
それがきっと、一番良いと思って。
今が夏休みで良かった。
そんなことを思いながら、人がほとんどいない朝の道路を歩いていく。
今日は、とうとう美樹の手術の日。だから、自然と朝早くに目が覚めた。
もしも学校があったとしても、確実にサボっていただろう。今の俺にとって、学校と美樹では重要さが違いすぎる。
急いで走り出しそうな足を押さえて、あえてのんびり歩く。
朝とはいえ、今は真夏だ。十分に気温が高い。走れば汗だくになるだろう。
俺は手で自分を扇ぎながら、朝の空を見上げる。
空には雲一つなく、晴れ渡っていた。
手術日和というものがあるかはわからないが、曇りや雨よりかは良い気がする。
どうでもいいことか、と一人呟いて、俺は病院とは違う方向へと歩く。階段を下りて、コンクリート造りの地面に足を下ろした。そのまま歩を進め、俺はいつも釣りをしていた場所へとたどり着く。
美樹との出会いは、ここだったな。
思い返して苦笑する。
第一声が『釣れますか?』だ。挨拶でもない。ずいぶんと変わった出会いだなと思う。
俺はそのままいつも自分が座っていた場所を見つめ、過去の自分を幻視する。
ただぼんやりと海を眺めていた自分。生きる目的を持たず、ただ流されるままに日々を送る自分。
それが、なんと色褪せて見えることか。
俺は視線を海のほうへと移す。
目の前に広がる海原は、太陽の光を反射しながら、相変わらずの海風を届けてくれた。
病室の扉をノックする。
「はい、どうぞ」
いつもと変わらない声に、俺は安堵しながら扉を開いた。
「邪魔するぞ」
それに対し、俺もいつもと変わらない言葉を投げかける。
俺が病室に入ると、美樹と美樹のお母さんが一緒にいた。しかし、美樹のお母さんは俺を見ると楽しそうな顔をしてこちらへと歩いてくる。
「おはよう、藤岡君」
「おはようございます」
挨拶をして一礼すると、美樹のお母さんはそれに頷いて俺の横を通り過ぎた。
「ちょっと、お医者さんのところに行ってくるわ。その間、美樹をよろしくね」
そう言って、何故かウインクを一つ残していく。
……いや、どうよろしくするというのでしょうか。
俺はなるべく考えないようにしつつ、美樹の傍まで歩み寄る。
「おはよう、美樹」
「はい。おはようございます、修司さん」
挨拶を交わして、共に笑みを浮かべた。しかし、不意に美樹が俺のほうへと顔を寄せてくる。
「ど、どうした?」
思わず一歩下がるが、美樹はそれにかまわず、何やら考え込むようにしていた。そしてすぐに頷く。
「修司さん。ここに来る前に、あそこに行ったでしょう?」
そんなことを言いながら、窓の外を指差す。すると、その先には俺がついさっきまでいた場所があった。
「あ、ああ。よくわかったな」
もしかして見ていたのだろうか?
「見てはいませんよ。ただ、修司さんから海風の匂いがしたんです」
そう言って、どこか懐かしそうに笑う。
「そんなの、窓を開ければいいだろうに」
「いいえ。ここでの匂いと、あの場所での匂いは全然違います。あの場所の海風は、どこか優しい感じがするんです」
俺にはわからないが、美樹がそうだと言うのならそうなのだろう。
俺がそんなことを考えていると、美樹がさらに距離を詰めて俺の服に顔を埋める。
「お、おい美樹?」
突然の行動に焦る俺。しかし、美樹は落ち着いた声を出す。
「海風と、修司さんの匂いがします……」
だが、よく見れば、美樹は震えていた。そんな美樹を見て、俺は一つ息を吐く。
やはり、直前になれば誰でも怖くなる。それが、当たり前だ。
「そうだよな……やっぱり、怖いよな」
「はい……とても、怖い」
そのまま嗚咽を漏らしそうな美樹を、優しく抱きしめる。
少しでも不安が紛れればと、そう願いながら。
「やっぱり、怖いんです。失敗したらって思うと……どうしようもなく怖くなるんです」
「……そうか」
抱きしめる力を、僅かに強くする。すると、美樹が顔を上げた。
「でも、それでも……」
泣いてはいない。ただ、それでも瞳は揺れている。
「それでも、わたしは……生きていたいから」
「ああ……」
頑張れ、なんて言葉はもうかけない。
ただ優しく、強く抱きしめていた。
しばらくして、美樹も大分落ちついた。そして、照れ臭そうに頬を染める。
「すいません。つい、不安が出ちゃいました。お母さんにだって、笑顔でいられたのに」
俺が抱きしめたままで、美樹が下を向く。俺はそれに、首を横に振った。
「それが当然だ。俺だって、美樹の立場なら不安になるよ」
でも、と言葉を続けて、俺は意地悪く笑う。
「俺にだけ不安を見せてくれて、嬉しいかな」
そう言うと、美樹はさらに顔を赤くして今度は横を向いた。
「そ、そんなことは言わないでください」
「ははは、悪い悪い」
「むぅ……誠意がこもってないです」
一転して、美樹が拗ねる。そんな美樹に、俺は苦笑した。
「誠意って……どうすれば許してくれるんだ?」
苦笑交じりに尋ねる。すると、美樹は目を瞑った。そして、無言で少し俺に顔を寄せてくる。
「あー……それじゃないと許してくれないのか」
思わず病室の中と扉を見た。しかし、当然ながら俺達以外誰もいない。
美樹が小さく頷くのを見て、俺はしょうがないと腹をくくった。
美樹の黒髪を掻き分け、そして、ゆっくりと口付けする。
二度目のキス。
少しばかり、美樹の唇は冷たかった。それが、やけに生々しく感じられる。
それが何秒だったのか、俺にはわからない。
短かった気もするし、ずいぶんと長く感じた気もする。
「ぷはぁ……」
キスが終わったのは、美樹が止めていた呼吸を再開した時だった。
美樹は顔全体を上気させて、それでも、どこか幸せそうに微笑む。
「これで、許してあげます」
「……それは良かった」
それに対して俺は、やけに暴れまわる心臓をなだめながらそう言った。だが、どうにも感情が収まりそうにない。
俺は美樹の肩をつかむ。
「しゅ、修司さん?」
驚いたような、それでいてどこか嬉しそうな目で美樹が見てくる。俺はそれに促されるように、美樹へと顔を近づけ―――、
コンコン。
突然鳴ったノックの音に、弾かれたようにお互い距離を取った。
「ど、どうぞー」
赤くなったままで美樹が返事をする。すると、美樹のお母さんが病室に入ってきた。
「美樹、そろそろ……」
美樹のお母さんはそこまで言って、俺と美樹の顔を見る。そして、少しばかり考えこんで楽しそうに笑う。
「お邪魔だったかしら?」
その言葉に、俺と美樹は顔を赤くして首を横に振った。
手術用の服に着替えた美樹が、ストレッチャーに乗る。俺は美樹のお母さんと一緒に、その傍にいた。
「美樹、頑張るのよ」
美樹のお母さんは、どこか不安そうに美樹の手を握る。それに、美樹は笑って頷いた。
「大丈夫だよお母さん。うん、きっと大丈夫」
自分に言い聞かせるように言って、美樹が俺のほうを見る。そして、もう片方の手を伸ばしてきた。
俺はその手を握りしめ、静かに頷く。すると、美樹は笑顔で頷いた。
「修司さんにこれをもらいましたから。きっと、大丈夫ですよ」
そう言って、傍らにある『病気平癒』のお守りに目を向ける。
「そうだな。きっと、大丈夫だ」
少しでも美樹の不安を取り除きたくて、俺も小さく笑う。
今美樹に笑顔を向けなくて、いつ向ければ良いというのだろうか。
「では、そろそろ……」
看護師がそう言って、ストレッチャーが動き出す。
手術室への短い道のりだが、俺と美樹のお母さんはずっと美樹の手を握り締めていた。
手術中を知らせるランプが灯る。俺はそれを確認してから、すぐ近くにあった椅子へ腰を下ろした。その横へ、美樹のお母さんも腰を下ろしてくる。
「……ありがとうね、藤岡君」
そして、手術室の扉を見ながらそう言った。
「何がですか?」
俺もそれに倣うように、手術室の扉を見る。
「あの子が手術を受けてくれたのは、貴方のおかげよ。そのことに、お礼を言いたいの」
嬉しげに、だが、その声にはどこか寂しげなものが含まれていた。
「……俺は、美樹に生きていてほしいだけですよ。そして、それは俺のワガママです」
「そのワガママのおかげで、私も助かるんだけどね。でも……」
美樹のお母さんは、自分の手元に視線を落とす。
「やっぱり、自分の娘だもの。私の力で何とかしたかったって思うのは、やっぱりエゴかしら?」
その言葉に、俺は何も言うことができない。いや、言うべきではないと思った。
俺が黙っていると、美樹のお母さんは困ったように笑う。
「ごめんなさいね。藤岡君のことを責めているわけじゃないの。ただ、娘が自分の手から離れたように感じたから……ふふ、あの子がお嫁にいくときって、こんな気分なのかしら」
冗談めいた言葉に、俺も笑い返す。すると、美樹のお母さんはいつものような、意地悪い笑みを浮かべる。
「もちろん、旦那さんは藤岡君よ?」
「っ! いきなり何を言うんですか?」
いきなりな発言に、俺は危うく舌を噛むところだった。そんな俺を見て、美樹のお母さんがクスクスと笑う。しかし、ひとしきり笑い終えると、先ほどまでの笑顔はなかった。
そこにはただ、美樹の母として、自分の娘の無事を心の底から心配している母親の顔しかない。
「……駄目ね。いくら笑っても、心からは笑えないわ」
小刻みに肩を震わせ、美樹のお母さんは手術室のランプを見る。
その気持ちは、俺も同じだった。いくら笑ってみても、本当は笑えていない。
何かを口に出して、それを笑う。そうしていないと、不安に押し潰されそうだった。
ポケットに入れた、お祭りのときに美樹から渡されたお守りを握り締める。
大丈夫。美樹なら大丈夫。
半ば自分に言い聞かせるように、呟いた。
「大丈夫ですよ……」
もし神様とやらがいるのなら、切に願いたい。
―――美樹の手術が成功することを。
何時間経っただろうか?
美樹のお母さんとここで待って、すでに一日くらい経過した気がする。しかし、窓の外は日が沈みそうなぐらいだから、まだその半分も過ぎていないのだろう。
俺は時計を見に行こうかと思うが、その間に美樹の手術が終わったらと思うとこの場を離れる気もなくなる。
「藤岡君」
俺がぼんやりとしていると、美樹のお母さんがこっちを見ていた。だが、その顔には少しばかり疲労の色が見える。
「少し、食べ物と飲み物を買ってくるわね。何か、食べれない物とかある?」
「あ、悪いですよ。俺が……」
行きます、と言うよりも早く、美樹のお母さんは苦笑した。
「貴方、ここを動きたくないんでしょう? 顔に書いてあるわよ」
「いや、その……」
図星だ。だが、美樹の母親であるこの人のほうが、もっとこの場を離れたくないだろうに。
「いいのよ。私、少し外の空気が吸いたくなったの」
「……わかりました、ありがとうございます。なら、お願いします」
一礼すると、美樹のお母さんは笑って歩き出す。俺はその背中に、心の中でもう一度礼を告げた。
美樹のお母さんの姿が見えなくなると、俺は再び手術室の扉へと目を向ける。
頑張れ、美樹。
ただひたすらに、そう願う。
完全に日が暮れ、夜の帳が下りる。
俺は病院の壁に背を預けて、ぼんやりと天井を眺めた。
今までの人生で、これほど時間の流れを遅く感じたことはない。もしかしたら、すでに時計の短針が五周くらいしているのではないだろうか?
すでに、俺と美樹のお母さんの間に会話はない。時間が経つにつれ、もしかしたらという嫌な想像が口を重くするのだ。
重苦しい雰囲気の中、不意に手術中を知らせるランプが消える。それに気づいた俺はすぐに立ち上がり、続いて気づいた美樹のお母さんも立ち上がった。
少し経ってから手術室の扉が開く。そして、美樹を乗せたストレッチャーと、手術を担当した医師が出てきた。
俺はすぐさま美樹が乗っているストレッチャーに近づく。そして、恐怖を抑えながら医師に尋ねる。
「……手術は、成功ですか?」
きっと、その声は震えていた。
医師はそんな俺の表情を見て、柔らかく笑う。
「大丈夫、成功しましたよ。あとは、術後の経過次第ですね」
成功、という言葉を聞いた瞬間、力が抜けてその場に座り込む。
「は、はは……良かった。本当に……良かった」
麻酔で眠っている美樹の横で、俺は良かったと繰り返す。見れば、美樹のお母さんも気が抜けたように座り込んでいる。
俺は眠っている美樹の手を取った。
「良かったな、美樹……成功だってよ」
涙ながらに、握り締める。
その手は、やけに暖かく感じられた。
その後、美樹は安静にしないといけないということで、ICU(集中治療部)という場所に移された。
ICUとは、病状が安定するまでの間、経験をつんだ医師や看護師が、心電図や血圧、脈拍、呼吸、出血量、尿量など、たえず変化する病状を注意深く観察し、病状の急変があればいつでも緊急処置を行えるようにする場所だ。
そこで、美樹はしばらく過ごすことになる。
俺と美樹のお母さんは、ICUに運ばれていった美樹を見送ってから、共に気が抜けたように椅子に腰を下ろした。
「……成功、でしたね」
ぼんやりと、呟く。すると美樹のお母さんは涙ながらに頷いた。
「そう、ね……」
本当に嬉しいのだろう。かくいう俺も、言葉では言い表せないくらい嬉しい。
欲を言えば、このまま美樹の傍にいたかった。しかし、それはただのワガママに過ぎない。
「本当に、良かった……」
こみ上げてきた何かを、なんとか堪える。
美樹が元気になるのが待ち遠しい。
これからは、ずっと一緒にいられる。
一緒に学校に通うこともできるし、一緒にどこかへ出かけることもできる。
それはきっと、とても楽しい日々だ。
―――そう、このときは、そんな幻想を思い描いていた。
 




