友達キャラの1日目 3
含み笑いーー
意味としては【意味ありげに声に出さずに笑うこと】であるから、まあそのとうり声には出してない為、勿論主人公である降魔輝にはその笑いは気づかれないわけだが
なんであろうか、絵的に凄い友達キャラっぽいな、と思う俺であった。
ようやく壊したドアに気付き西川亜紀同様あたふたしだした主人公に向かって先生は
「後で直しておくから、自分の席を確認したら廊下に並びたまえ」
と言いながら彼の肩を叩いた。
「他の者も、もう並べよ〜〜、さあ!急いだ急いだ!」
そう言われると生徒たちは各々立ち上がり、廊下に向かって歩き始める。
俺もそれに便乗して教室を出ることとした。
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入学式といえば、校長先生のありがた〜く、なが〜い話を聞くのが定番中の定番である。
この学校でもそれは例外では無いらしく、俺は一応そのありがた〜い話に耳を傾けながら他の事を考えていた。
俺が他に考えていること…それは、この学校にあと2人いるメインヒロインのことであった。
1人は主人公とは別のクラスである為、見かけないのは仕方ないが、同じクラスの筈のもう1人のヒロインが見当たらないのを俺は疑問に思っていた。
だがそんな時であった、俺の疑問に答えるようにある言葉が聞こえてくる。
「続きまして、新入生代表の言葉……1年1組和泉志乃さん、よろしくお願いします」
それは、次のプログラムに進むのを告げる司会者のアナウンスであった。
「はい!」
大きく返事をしたその人物は、体育館のステージへと向かっていき、1組の俺達でも顔が見ることの出来る場所までやってきた。
すると、次第に生徒達が騒めき始め
「おい、あの子めちゃくちゃ可愛いな」
「ああ、スタイルも良いし…こんな娘がいるだなんて、この学校に来て正解だったぜ!」
など、歓喜の言葉が聞こえてくる。
水色よりも少し明るい色の髪、まるで海のように透き通った青い瞳
そのおさげとなっている髪型からは清楚な印象が醸し出されている。
そりゃ、可愛いはずである
和泉志乃ーー彼女もまたメインヒロインの1人なのだから……
いないいないとは思ってはいたが、まさか新入生代表の挨拶をする為に他の場所にいたとは…
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「ーー以上、新入生代表、和泉志乃」
そう言うと2分程度の挨拶を終えた和泉志乃は全校生徒にお辞儀をして入学式とは思えないほどの大きな拍手(主に男子から)を受けながらステージから降りていった。
ーーそれから間もなくして、入学式の全行程は終了し、新入生達は先輩達に見送られながら教室へと戻ることとなった。
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教室に戻るとそこらかしこで、「疲れた〜」「あの代表の娘、うちのクラスじゃん!やべぇ〜〜」などと賑やかな声が聞こえてくる。教室内を見渡すと先ほどは教室にいなかった和泉志乃も来ており、彼女は多くの人間に囲まれていた。
「おーい、HRを始めるから席に着きたまえ〜」
そう言いながら教室に入ってきたのは先ほどの担任の先生であった。
先生の指示によって、立ち話をしていた生徒達は各々の席へと戻っていく。
全員が座り終えると先生は口を開いてハッキリとした声で喋り始める。
「よし!私は諸君らの担任となった玉木怜だ!これからよろしく頼む!」
先生の軽い自己紹介が終わり、生徒達が拍手をしていると玉木先生はなにやら、うーむ…と悩み始め
いきなり
「そうだな、とりあえず諸君らには自己紹介をしてもらう!出席番号1番の君からだ、名前と…あとは趣味や出身中学とかを言ってくれたまえ!」
そう言って、1番右の列の1番前の男子生徒を指差した。
とてつもなく急なお題に出席番号1番の指をさされた少年は戸惑った様子をみせている。
「どうした?自分の名前が分からなくなった訳ではなかろう?」
そう言うと先生は肩をすくめて自己紹介を促す。
すると、少年は椅子から若干腰を浮かした。
「あ、はい!えっと…出席番号1番の相葉健太です…えっと、炎炎帝中学校出身です…えー…よろしくお願いします…」
微妙に立ち上がった姿勢で自己紹介をした少年は先生の、うむ、よろしい!と言わんばかりの顔をみると軽くお辞儀をして席に座り込んだ
「はい!トップバッターでよくやってくれた!さあ皆、相葉くんに拍手!」
そう言って拍手を始める先生に続き、俺たちクラスメイトも軽い拍手をした。
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それからは各々が自己紹介をしていき、和泉志乃のようにまるで政治家のようなきっちりとした挨拶をする者もいれば、神崎凪のように「よろしく」の一言だけで終わる者もいるなど……(というかインパクトのある自己紹介はこの2人くらいなものであったが)まあなんやかんやで続いていった
そしてーー
「お、次は君かぁ!朝の遅刻を挽回しろよ〜!」
「あ、えっと………はい…」
主人公の番がやってきた
「降魔輝です…えっと、大神森中学校出身です…と言っても分からないと思いますが…ははは」
そう言いながら自分の頬をぽりぽりとかいている。変なプレッシャーがかかったからか冷や汗のようなものも見えていた。
「あ、えっと…趣味は…そうだなぁ…あ!漫画読むのが好きなんでそういう話題とか振ってください!……えっと…よろしく…はははは…」
そこまで言うと若干赤くなりながら着席をした。
軽い拍手が、聞こえる中、俺は今の自己紹介にチャンスを感じていた。
趣味を言ってくれるとは…話しかけるキッカケを考えていたが、この趣味という名の波に乗るしかない!
そう思いながら、おれは机の下に手を入れ軽くガッツポーズをとった。
それからも自己紹介は続いていき、ようやく俺のところまで回ってくる。
この自己紹介…俺にとっては以外と大事なところである。
暗いイメージを作ってはダメだ、明るくて親しみやすいイメージを作り、そして主人公と接触しなければ!そう考えながら俺は椅子を後ろに下げ、立ち上がる。
「俺の名前は新垣修斗!中学校の名前は……忘れたぜ!気軽にあだ名でニイトって呼んでくれ!以上!」
かなりの早口で自己紹介を済ませると、これまたかなりの速さで着席をする。
普通は着席のタイミングで拍手が聞こえるはずだが全く聞こえてこない
や、やばい!失敗したか⁈これは逆に悪目立ちって言うんじゃないのか⁈けど、仕方ないじゃないか!出身中学も分かんないし!フレンドリーといったらあだ名かと思ったんだから!
そんな、言い訳じみたことを考えていると突如笑い声が聞こえてくる
「ぷ…くくく…君ぃ!自分でそんなあだ名をつけるなんて、いいセンスしてるじゃないかぁふふふ!」
声の主は玉木先生であった。口を押さえながらこちらを見て笑っている。
すると、途端に教室の各所から「確かに笑」「てか、中学校の名前忘れるやつとかいねぇだろ笑」などとちらほら声が聞こえてくる。
最終的には教室内ほとんどの者が笑い出し、目的である親しみやすいイメージは作れたらしかった。
しかしながら、こんなに笑われると中々にこっ恥ずかしいものである
「ふふふふ…はぁ…中々に笑える自己紹介であったが、ずっと笑っているわけにはいかんからな!次の者、自己紹介を始めてくれ!」
そう言い、先生は俺の後ろの人物に合図を送る。
俺が後ろを振り返ると西川亜紀は「君の後とかやりにくいよ…」とぼやいていた。