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引きこもりは禍鎧を着込んで  作者: ウツウツ
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続く敵襲

扉の先から現れた魔物は片手で巨大なウォーハンマーを前方に薙ぎ払った。


「っが!?」


ウォーハンマーの自重、遠心力、そしてなによりも魔物の怪力が乗った重く、速い一撃。


それは扉に一番近かったマーダに避ける事はできなかった。

マーダは魔物が腕を振る事さえ認識できなかったのだ。


マーダは人外の者。

虫の特徴である複眼によって、些細な変化でさえも大きく見えるはずなのだが、それも神経が脳に伝えなければ意味を成さない。


つまり、魔物はマーダの視神経が情報を脳に伝える速度を上回る速度の攻撃をした事になるのだ。


「ぐっ!」


「ひゃっ!?」


また、その速度で振るった余波で風を起こしリアとラナウィは後方へと飛ばされた。

それは台風にも勝るとも劣らない威力だ。


唯一無事であったのはその場に立つ鎧だけだ。

その暴風に晒されてもなお、身動き1つしない。


それほどの速度で振るわれれば威力は相当なものとなる。

巨大なウォーハンマーが直撃したマーダ無事では済まない。


魔物はマーダをウォーハンマーで殴り、そのまま壁へと押し潰そうとした。


ガァン!!!


何かが壊れるような音が硬い物同士をぶつけたような音にかき消された。


「くっ!

身動きがとれん!

何が起こった!」


そう、無事では済まないはずなのだ。


しかし、マーダは壁とウォーハンマーに挟まれてもなお、自身に何が起きたのか分からないと声をあげた。

それは、苛立ちの感情こそあるが、痛みを感じさせるような声ではなかった。


そもそもの話、声を出す事、生きている事さえおかしい状況なのだ。


それは鎧のアビリティ【ロイヤルガード】が発動している逃しようもない証拠である。


発動している間は仲間へのダメージを無効化させる効果をマーダに遺憾なく発揮したようだ。


魔物は自身がウォーハンマーで壁に叩きつけた者の安否に関心は無いのか、一歩踏み出し、更にウォーハンマーを先程とは反対の方に薙ぎ払った。


それは鎧に届く一歩だった。


ガァン!!!

ガシャァァァン!!!


『"ホロウ"!?』


マーダのように壁に叩きつけられる事はなかったが、ウォーハンマーの威力によってその場に倒れた。


「グモォオオオオオオ!?」


しかし、鎧に一撃を与えた代償を魔物が受けた。

それは、鎧のアビリティ【ナインシンボル】の災神ヤーの能力、炎による反撃だ。


「なっ!?

主が倒れているだと!?

それに魔物が燃えている?

何が起こったのだ!?」


壁に叩きつけられたマーダが自身の知らない内に事態が変化している事に追いついていなかった。


「マーダ!

そこから離れて!

魔物が火に包まれて怯んでいるスキに!

早く!」


「分かった!

後で何があったか教えろよ!」


リアの指示を受けたマーダは燃える魔物と倒れた鎧から離れた。


「だ、大丈夫なの?

スゴイ音がしてたよ」


ラナウィはおずおずとマーダに声をかける。


「ん?

そう言われれば身体がやけに軽い気がするな」


「鎧や盾が全部壊されてるからかな?」


「何!?

っく、ボロボロではないか!」


ラナウィの指摘で気付いたのか、マーダは自身が身に(まと)っていた防具が明らかに壊れていた。


先程の魔物の一撃で壊れてしまったのだろう。

【ロイヤルガード】は身体へのダメージは無効化しても防具には適用されないようだ。


魔物は火を消さずに倒れた鎧へとウォーハンマーを何度も振り下ろしていた。


『やめて!

"ホロウ"起きて!

このままじゃ"ホロウ"が死んじゃう!


………HPは減ってないけど変形しちゃうよ!』


その度に魔物を燃やす火力が高まっていく。

燃やした原因であろう鎧を本能的に察知して危険だと判断したのだろう。

最優先で殺そうと振り下ろすウォーハンマーと鎧がぶつかる音は響くが鎧の見た目は変わらない。


クッキーが言ったようにダメージは与えられていないようだ。


しかし、状況は更に悪化する。


「ま、また来たぁあああ!」


そう、最初の魔物が開けた扉から別の魔物、狼や鳥の魔物が現れ始めたのだ。

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