毒の脅威
光のない、どこまで続くような通路。
そこは人工的に造られたように整備されては無く、どこもかしこも凸凹としたものだった。
そして、いたる所に穴が開いていた。
そこを鎧は突き進む。
『うぅ、"ホロウ"ここ、暗いね。』
クッキーは光のない通路が怖いらしく、怯えた声で鎧に語りかける。
鎧は迷いなく暗闇で見えない筈の通路を進んでいく。
光が無い、それは画面の中の設定であり、パソコンの前に居る男には通路の様子が少し暗めだが、見る事が出来た。
男はいたる所に開いた穴に注視しながら鎧を操作し、前へと進んでいく。
なぜ、男が穴に注視しているのか。
その疑問に答えるかのように一つの、いや、いくつかの穴から赤や黄色の丸い物体が生えてきた。
男は慌てず近くの黄色い物体が生えた穴へと拳を大振りに振るった。
すると光の粒子と黄色いエフェクトが周囲に広がった。
なんと生えてきたのは歩き茸や痺れ茸だったらしい。
しかし、鎧は止まらずに次の穴へと攻撃に移る。
穴から生えてきた歩き茸や痺れ茸、そしてどぎつい紫色の丸い物体、傘を目掛けて拳を振り下ろす。
光の粒子と黄色や紫のエフェクトが周囲に広がり、光の粒子だけが鎧へと吸い込まれていく。
ー【センス】を入手したー
〈状態異常・ポイズン〉
すると、どうした事か。
鎧の動きが鈍り始めた。
先ほどまでの精密な動きが泥に埋まってしまったかのような、鈍重さである。
『大変!?
状態異常・ポイズンになっちゃった!!
状態異常・ポイズンは能力値が全部下がってしまうの!
それと、一定時間が経つとダメージを受けてしまうよ!
回復するまで状態異常・ポイズンは治らないよ。
回復するにはアビリティかアイテムを使うの。
今回は私が森で拾ってた解毒草を使ってね!
【ポケット】の中に入ってるよ。
あ、"ホロウ"気を付けて!』
穴から何体か出てきてしまったようだ。
動きの鈍った鎧へと殺到した。
鎧へと体当たりをする歩き茸や痺れ茸、そしてまだ名前の分からないどぎつい紫色のきのこの敵。
敵の攻撃を避ける余裕がないのか、鎧の攻撃操作に徹する男。
増える被弾、崩す体勢、そして、集団に呑まれた鎧。
『"ホロウ"!?
ねぇ、"ホロウ"!?』
張り付いた敵が大きな衝撃を受けたかのように弾けて光の粒子と黄色いエフェクトが広がる。
どうやら、男は【スマッシュ】を使ったようだ。
それでもまだまだ張り付いたままの敵の数は多い。
男は焦らず、淡々と鎧を操作する。
鎧を動かし出来るだけ敵をまとめて【スマッシュ】を使う。
ー【デッドパラライズ】を入手したー
そして、最後の一体が弾けて光の粒子となって鎧へと吸い込まれていった。
『"ホロウ"!
ねぇ、"ホロウ"ったら!
平気なの!?』
男は次の操作を行っていた。
【ポケット】からクッキーが入れていたという解毒草を取り出して使用した。
すると鎧の動きが泥が落ちたように精密さを取り戻した。
「なんで?」
しかし、男には疑問に思う点があったようで少し操作を止め、また前進し始めた。
《予告》
リバイブ