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引きこもりは禍鎧を着込んで  作者: ウツウツ
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ギルド長の思い

私は見てしまった。


最初はただの好奇心でした。

彼女が何者なのか?

何処から来たのか?

どんな能力を持っているのか?


いえ、戦力として期待も持っていた。

『枯れた大木』を1人で制覇したという言葉。

大量の素材や完全なる魔石の持ち込み。

そして、その中には『枯れた大木のコア』という聞いた事も見た事も無い物。


彼女が『枯れた大木』を制覇して以降、魔物は一切、一体も出現していない。

例え、キングもしくはクイーンが倒された後でも魔物は出現する。

出現数は限りなく0に近くなるが全く出現しないのは今まで無かった。


彼女が何かをした。

私にはそれしか分からなかった。


だから。

だから、こそ。

今回のグラノ付近にダンジョンが発生したのは幸運でした。

昆虫型のダンジョンという緊急性の高い物だったからこそ、新人の冒険者である彼女をダンジョン攻略メンバーに入れ込む事ができた。


一歩間違(まちが)えば、新人を1人無駄死にさせてしまう可能性も有った。

しかし、私は知りたかった。

私が知らない、謎に満ちた彼女の能力を。


実際に彼女の能力を見たのは1人、暗闇の通路を走り出した時だった。

あの時、彼女から自己申告でジョブを持っていないと分かった時は冷や汗が流れたものだ。


ジョブ無しでアビリティを覚える事はできない。


ジョブ無しではレベルが上がらない。


ジョブ無しでは、魔物にダメージを与えられない。


それは、分かっている。

ギルドに登録する際にもジョブについているか確認する事が形骸化しているが義務付けられている。

・・・今では成人した時にジョブに付かせるという王令が出ている為、形骸化している工程である。


ギルド内でジョブの確認をしているのは愚直なランダぐらいだろうか。


彼女を冒険者に登録をしたガンデスも形骸化した工程を省いたのだろう。


私が毎朝、省かないように言っているのはこの為なのだが。


確かに、成人を迎えた者であればジョブに付く儀式を受ける。

しかし稀に見つかるのだ。

成人した後もジョブを持たない者がいるのだ。


私は『枯れた大木』を制覇した彼女をジョブ無しとは思わなかった。

思えなかった。


『ジェスパイス』のノートンが言ったようにジョブ無しのポーターという者は存在する。


成人せねばジョブに付けられない。

ジョブに付けられなければ魔物を倒せない。

倒せなければ魔物から素材や魔石の欠片を得る事は難しい。


貧困に(あえ)ぐ者達は少なからず存在する。


その為、成人を迎えていない者がポーターとして迎い入れてくれる冒険者を探しダンジョンで倒した魔物の素材や魔石の欠片を運ぶ仕事をする者もいる。


ポーターとしてダンジョンに入った者の生存率は高い訳ではない。

魔物に抵抗ができないのだから当たり前だ。

中には緊急時の囮としてポーターを利用する冒険者もいる。


このグラノではそれを行わせないようにギルドが孤児院を運営し、成人を迎えていない者を保護している。


それは親が居る、居ないに関係無く、全ての者に対してだ。

親の居る者は家から通う。


教会に協力をしてもらいながら運営している為、ギルドは物資や食料の提供を。

保護した子供の面倒を見るのは教会の者がしている。


さらに、冒険者に徹底してポーターの利用をしないように呼びかけている。

罰則は設けられていないが、私はポーターを利用した者を忘れない。


話が()れたか。


彼女がジョブ無しだと知った後に彼女が走り出した先で暗闇に光が灯った。


すぐに消えたがあれは、彼女の能力だと直感で思った。


急いで彼女の後を追った。

途中で魔物が不死徒の能力で蘇り、彼女の走った方からも戦闘による音が聞こえ始めた時は嬉しく思った。


やはり、違った。

彼女にはジョブがあるのだと。

彼女には何かのアビリティを持っているのだと。

私は密かに喜んだ。


そして、追い付いた時には最後の一体を打ち砕く所だった。


それは上位種の一体、龍鱗虫(ドラゴスネク)だった。

あの魔物は普通の攻撃を無効化する能力を持った魔物だ。


それを彼女が倒したという事はジョブに付いているという証拠に他ならないだろう。


しかし、その後の彼女の言葉は気になる物だった。


4つのアビリティ名が彼女から発せられた。

しかし、それは1つのジョブから得られるはずの無い物だった。


その4つを持っていたと言った彼女に私は同意を得て【アナライズ】を使った。


そして、知った。


確かに彼女の言う通り、ジョブは持っていなかった。

しかし、そのジョブ無しである彼女のレベルは上級の冒険者も少ない60を超えていた。

アビリティの数も20を超えていた。

そして、彼女の種族欄には信じられない事に種族では無く、彼女が着込んでい鎧の名前らしき者が表示されていた。

他にも年齢や性別などあるはずの欄も無かった。


さらに、能力値は3桁を超えていた。

確かに能力強化のアビリティを覚えてはいる。

能力値が3桁を超える者も居るには居る。

しかし、それは特化型の場合である。

もしくは、時の勇者が3桁の能力値が複数あると聞いたぐらいだ。

彼女はその全ての能力値が3桁を超えていたのだ。


しかも、彼女にはHPの表記すら無かった。


アビリティにも問題があった。

種族固有のアビリティ。

ジョブ固有のアビリティ。

称号によって得るアビリティ。

神のシンボルという破格のアビリティ。


そこで思い出したのだ。


ジョブ無しでアビリティを得た者がいる事を。

いや、ジョブに関係無くアビリティを得る方法。


それは、神々の使徒になる事。


不死徒がいい例である。

冥神アンに全てを捧げる事によって死者を蘇らせるアビリティを得た者。


となれば、彼女は9柱も存在する神々の誰かの使徒という事になる。


しかし、使徒だとすればまた不自然な点が浮かぶ。


まず、アビリティの種類。

使徒となっても得られるアビリティという物は決まっている。

しかし、そんなアビリティは見当たらず、関係がありそうなのは【ナインスシンボル】という神々のシンボルをアビリティと化した物だけ。


さらに、備考欄に仕える神の加護が表示されるはずだが、何も表示されていない。


隠蔽(いんぺい)系のアビリティを所持していても【アナライズ】では関係無く見る事ができるため、彼女は本当に持っていないのだろう。


そう考えると1つの可能性が浮かんだ。


顔の無い神。

名も無き神。

罪と混沌を司る悪神。

10柱目の存在しない神。


その神の使徒では無いかと。

使徒の中には神の分霊を与えられる者も居る。


本来ならば、その分霊の声は使徒である本人にしか聞こえない。

強い分霊であれば使徒がブツブツと何かを言っているように声が漏れ出す事もあると聞く。


しかし、クッキーという分霊は私達にも聞こえる程の声を発生させている。

どれほど強い分霊なのか。


その後、彼女はダンジョンボスの部屋へと単独で進入し、見事クイーンを討ち取った。


しかし、クイーンから魔人の少女が3人も発見された事は私も驚きを隠せなかった。

拳を少女達に向かって振り上げていて彼女に本性を見せてしまうほど私は慌てた。


彼女、性別が分からないため、彼女と呼び続ける事にした。

彼女は悪神の分霊が憑いている。


それを私を経由して主神アランも知っただろう。


すぐに各神の勇者を彼女討伐のために派遣する事だろう。


彼女の周囲は戦場となる。

これは間違いない。

勇者の中には周囲の人を気にせず大規模なアビリティを発動させて討伐しようとする者も居る。


このグラノを担当する私がその情報を知っていながら彼女をグラノに残すという判断はできなかった。


本来ならば、捕らえて国に引き渡さなければならない。

しかし、彼女はこのグラノを救った恩人でもある。


だから、彼女に逃げる事を勧めよう。

それがせめてもの恩人である彼女の報いだ。


できれば、魔人の少女達も連れて逃げて欲しい。

しかし、いつか破滅が決まった者に連れさせる事はできない。

あの少女達もダンジョンを便利な資源として活用するために利用されてしまうだろう。


しかし、殺されるよりはマシだと感じて欲しい。


どちらも長く生きて欲しい。

《予告》


EXILE

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