蘇る群勢
『ジェスパイス』とホールメンギルド長は【ダッシュ】を使用して先行した鎧に追い付く為にダンジョンの通路を走っていた。
ふと、盗賊のノートンが顔をしかめた。
「チッ。
おい!
奥と背後が騒がしくなってきたぞ!」
それは感覚の鋭い盗賊だからこそ拾えた音だろう。
騒がしくなる。
その理由は1つしか考えられない。
そう、ここはダンジョン内。
魔物の動きから発せられる些細な音だ。
「魔物が不死徒の能力で蘇り始めましたか。
『銀翼』の皆さんが魔物を上手くダンジョン内に誘導したようですね」
ホールメンギルド長が冷静に入口からの魔物の理由を述べた。
ダンジョンの中に居る魔物は色々な特徴がある。
その中でも侵入者の居場所を感知する能力があるらしい。
さらに虫の魔物には自分達のテリトリーに侵入した者を積極的に排除しようとする習性が知られている。
この二つの情報から、不死徒の能力で蘇った虫の魔物はダンジョンに侵攻していた冒険者達を感知し、追って来ているのだろう。
「入口の方は分かるけど、なんで奥の方から音が聞こえるの?
バンバリオンが仕留め損なった?」
鎧に毒を吐いていたローブの女が奥の魔物が居る事に疑問があるようだ。
そう、バンバリオンのアビリティによってダンジョン内の魔物はほとんどが排除されただろう。
特殊な部屋を除いて。
「考えてもみろよ、キルトラ。
大方、あいつが魔物の湧き出る場所でも見つけたんだろ!」
特殊な部屋。
それは数多く存在するダンジョン内の罠の1つだ。
部屋に入らない限り、外からは影響を受け付けないのが特徴である。
魔物が湧き出たり、毒ガスが充満していたりする部屋があるのだ。
その中でもダンジョンボスの居る部屋も特殊な部屋の代表とも言えるべき物だ。
このまま、鎧を追えば魔物から挟み撃ちを受けるのは必至だろう。
『ジェスパイス』のパーティリーダー、ジェスは思案し、決断した。
「俺とグランドンで足止めする。
ノートン、キルトラ、ギルド長は先に行け」
「おぅ!」
スキンヘッドの初老の男、グランドンはジェスの判断に快諾した。
「おい、ジェス!
火力はキルトラが居るから良いが、こっちの守りが薄くなるぞ!」
ノートンはジェスに噛み付いた。
それもそうだろう。
『ジェスパイス』の前衛である二人が居なければパーティとしての機能を失ってしまうだろう。
ノートンは前衛もできない事はないが、専門職という訳でもない。
持ち前の素早さや道具で相手を翻弄するのが主な役割だからだ。
キルトラも、ローブを着ている姿から魔法を使う後衛職だと思われる。
ホールメンギルド長も姿から後衛職だと予想がされる。
魔物の攻撃を受け止める盾役がないと安全とは言えないだろう。
「俺の勘だが、あいつは強いぞ」
「っ!?
あぁもう!!
分かった。
俺達はあのデカブツを追う!
行くぞ、キルトラ!」
「そんじゃね〜」
「では、ここは任せました。
倒されても不死徒に能力で蘇りますが、限界だと感じた際は脱出石でダンジョンから出てくださいね」
ノートン、キルトラ、ホールメンギルド長はダンジョンの奥へと走って行った。
そしてその後ろ姿が見えなくなる前に入口の方の通路から黒い波が見えた。
いや、重なりながらも迫り来る虫の魔物の群勢が黒い波のように見えた物だった!
床も壁も天井も関係なく迫り来る群勢は普通の者ならば絶望に挫いてしまうだろう。
「行くぞ!」
「おぅ!」
それぞれが光の玉に照らされ、大盾と拳を黒い波に向けて二人は覚悟を決めた。
《予告》
バトル




