孤児院のナル
高く堅牢な壁に覆われた建物。
そこは【マップ】で孤児院を探し、矢印が付いた場所だった。
その壁のある建物の前に鎧が立っていた。
さながら小さな砦のような場所だった。
門も重厚で丈夫そうだ。
外敵を一切侵入させないと言わんばかりの創りであった。
しかし、その重厚な門も今は開け放たれていた。
そして、その奥からは場違いにも、大勢の子供達の楽しそうな声が響いていた。
「でっかー!」
一人の子供が門から入って来た鎧に気付き、大声をあげた。
すると、その驚きの反応は周りの子供へも伝染していった。
驚いて呆然と鎧の方を見ている子供。
自分よりも小さい子供を鎧から遠ざけようとする子供。
中には鎧に驚いて泣き出してしまう子も出て来た。
先ほどまでの楽しげな雰囲気をぶち壊した鎧は気にせず一歩敷地に足を踏み入れた。
すると蜘蛛の子を散らすかのように子供達が奥の建物に逃げ込んだしまった。
その様はまるで訓練で鍛えられたような逃げ足の速さであった。
しかし、中には鎧の登場に驚き過ぎて固まって逃げられなかった子も居た。
静かになった敷地を鎧は一歩、また一歩と進んで行く。
その先には、偶然にも固まって逃げ遅れた女の子が立ち竦んでいた。
近付いてくる鎧にようやく周りの状況を理解し始めた女の子。
目の前には見知らぬ人。
周囲にはだれ一人居ない。
逃げ遅れた自分が目の前の人に何をされるのか?
そんな漠然とした不安が女の子に込み上げた。
しかし、その感情を理解をした途端に、その場に座り込んでしまった。
どうやら、あまりの不安に腰が抜けてしまったらしい。
「だ、だれ?」
頭の中が真っ白になりつつ、鎧の事を聞く女の子。
その瞳には鎧の一部しか映っていなかった。
それほど、近くに鎧が女の子に近づいた。
女の子の前で鎧は立ち止まり、視線を合わせるようにしゃがみ込む。
その兜が女の子を見据えながら問いかけた。
『こんにちは!
あたし、クッキー!
あなたの名前は?』
鎧から自分と同じような女の子の声が聞こえ、不安が軽くなった女の子はクッキーの問いかけに答えた。
「ナル」
言葉を少なく、しかし、一言で答えるナル。
それは警戒の現れだろうか。
『そっか!
ナルちゃん、この人は"ホロウ"って言うの!
あたし達はギルドから依頼を受けてこの孤児院に来たの!
シスタークライヤスは居る?』
クッキーがナルに事情を話す。
そして、代表だと思われる人物が居るかどうかを尋ねた。
するとナルは鎧がどんな人なのかが分かったようだ。
「ぼうけんしゃ?」
ギルドの依頼を受ける存在、冒険者だと理解したようだ。
『そうなの!
昨日、ギルド登録をしたばかりなんだよ!
よろしくね、ナルちゃん!
シスタークライヤスは居る?』
自身の立場を説明し再度、ナルに代表者が居るかどうかを問うクッキー。
「うん、いる」
『そっか!
それじゃ、呼んでもらえるかな』
クッキーはナルに代表者、シスタークライヤスの居る場所まで案内をしてもらおうと考えたようだ。
だが、女の子は顔を横に振った。
「たてない」
どうやら、まだ腰が抜けてしまっていたようだ。
そのナルの様子にクッキーは名案を思い付きナルに伝えた。
『なら、"ホロウ"に運んでもらおうよ!
良いよね、"ホロウ"?』
すると鎧は黙ってナルを優しく抱き上げた。
そして落ちないようにしっかりと、優しくナルの身体を支えた。
「たかい」
ナルは抵抗する前に抱き上げられたが、最初に感じた不安はもうなくなって今は視線の高さが変わったのを楽しんでいる様子だ。
「こっち」
ナルが指を指す方向に鎧は一歩、また一歩と歩いて孤児院の建物の方へと向かって行った。
《予告》
プレイ




