溢れ零れる魔石
「んじゃぁ、魔石の欠片をこのチェックバケットに入れてくれ」
次にガンデスは丸いザルのような物を鎧の前に置いた。
「おい、それは俺も見た事がないぞ。
なんだよ、それ。」
横から見たロムがガンデスに疑問の声をあげた。
ガンデスはロムに視線を向けて答えた。
「こいつは、魔石の欠片の金額を計る為の道具だって言ったろぉ。
ロムは採取系のクエストしか受けて無ぇから見たことねぇんだろうよぉ」
そしてガンデスは鎧の様子を伺った。
魔石の欠片を入れているような袋を探しているのだろう。
しかし、鎧はそのような物は持っていなかった。
全身鎧以外は何も見当たらない。
ガンデスは少し目を瞑ると納得したかのように頷き話を続けた。
「アイテムポーチやインベントリリングに仕舞ってんだろ。
それらをこのチェックバケットに放り込むと金額を教えてくれるからなぁ。
金はギルドに取りに行かなきゃ無ぇから少し後になるぞぉ」
ガンデスが目の前のザル、査定籠の説明をした。
そう、側面には何かが表示されるような枠があった。
ここに金額が表示されるのだろう。
また、道具袋や財産の輪は冒険者の憧れの魔道具である。
しかし、両方とも高額である。
その上、財産の輪は希少性が高く、持つ者はごくわずかの限られた者だけが持っているのだ。
ガンデスは鎧の中に道具袋を仕込んでいるのだと推測したらしい。
『へぇー。
そんなのがあるのね!
それじゃ"ホロウ"【ポケット】から全部の魔石を出しちゃって!』
クッキーの声には悪戯っ子のような雰囲気があった。
クッキーの掛け声に鎧は静かに従った。
何も無い空間から綺麗な球体が査定籠の中へと落ちていった。
そして、それが切っ掛けとなったのか次々と空間から溢れるように出ては査定籠の中へと入っていく。
いや、入りきれずに査定籠から溢れてしまい始めた。
「待て待て待て!?」
その様子を見て慌てて鎧に止めるように言うガンデス。
その様子を声を忘れたように呆然と見つめるロム。
悪戯に成功したようで自慢するような雰囲気のクッキー。
三者三様である。
《予告》
パーフェクト