鎧の目撃者
「やだやだやだー!
きゅうちゃんと離れたくなーいー!」
何人も横になれそうなキングサイズのベッドの上でピンクの寝間着姿の女が幼い子供が駄々をこねるように男にしがみついて離れない。
「お嬢様、そろそろ御仕度をなさいませんと」
「今日のスケジュールは午前から午後にかけて三ヶ所での会議と研究結果の公表が予定されています」
「旦那様とはご帰宅されて甘えれば宜しいでしょう?」
「旦那様のお世話は私共が引き続きますからご安心を」
そして、男から女を引き離そうと取り掛かる集団。
物静かに行動する集団には共通点としてまず、服装が挙げられるだろう。
白を基調としたエプロンドレスに黒いブラウス、頭部に髪の毛をまとめた白い帽子を被っている集団だ。
そして、もう一つの共通点は全員が女性なのだ。
それも、年齢はばらつきがあるものの、全員が容姿が整っている者達ばかりだ。
「きゅぅぅぅちゃぁぁぁん!!!」
さしもの小柄な身体に似合わず力の強い女も集団による数の力には敵わないようで男から引き離され大人数で別室へと連れ去られて行った。
どこかの珍獣を保護する団体のような騒ぎだった。
「ささ、旦那様はこちらに。
朝食の準備は整っております」
「ぅぅ」
集団から一人だけ残った者が男の世話をし始めるのだった。
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「ホールメンギルド長!
ロムちゃんがギルドに来たので連れて来たッス!」
「ローニー、ありがとうございます。
では、お仕事に戻って下さい」
「ウッス!」
栗毛のポニーテールの女の子、ローニーが赤毛の少年を連れてギルドのとある一室へと案内した。
そこはギルド長が居る部屋、ギルド長室と呼ばれている部屋だ。
ホールメンはローニーを労って下げた。
「よぉ、ロム。
おめぇも呼ばれたのかぁ」
「おはようございます、ロム。
部屋に入って下さい」
「は、はひ。」
片目に傷跡のある巌のような男がロムと呼んだ。
黒い長髪の間から長い耳を生やしたホールメンは近くに来るように催促した。
ロムはギルドの最高権力者であるホールメンに対して緊張しているのか噛みながら返事を返した。
顔は真っ青で赤毛と相まって際立ってしまっているが。
「ロム、森で謎の鎧を見たそうですね。
その事について詳しく聞きたいのですがお願い出来ますか?」
「は、はい!
デカくて、こわい鎧を見たんだ・・・です。
鍛冶屋のオーベルさんよりもデカくて、見てると、こう、こわくてしょうがなくなって・・・」
鎧への恐怖を思い出したのかロムは身震いをした。
恐怖以外にも丁寧に言おうと頑張ってはいるがいかんせん、慣れていない口調のせいで途切れ途切れである。
「確かに、それは巨大な鎧の方のようですね。
では、次に鎧の出た場所と状況もお願いします。」
(巨人にしては小さいサイズですね。
しかし、人にしては大き過ぎますか。
ハーフなのかもしれませんね。
しかし、人型の魔物だとすれば。
この辺りの人型の魔物と言えばゴブリンしかいませんね。
ナイトか、ロードか。
最悪、キング辺りでもおかしくはなさそうな大きさですね。
間者を森に送って調査をさせていますが、目撃者から得た情報がもっと欲しいですね。)
「はい、確か、あの時は・・・」
《予告》
フィナーレ