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人形娘香奈同居日記  作者: ジャン・幸田
転がり込んできた人形娘
7/21

むかしの夢

 俺の夢の中に香奈が出てきていた。その夢のなかの彼女の顔は・・・あれ、おかしい思い出せない! 幼稚園の時から上京するまで顔を会わせていたはずなのに、なぜ?


 それはともかく、場面は香奈の両親の事故直後だった。両親が乗っていた業務用のワゴンが信号待ちをしていた時、後ろから来た大型トレーナーに猛烈な速度で追突され、完全に押しつぶされ炎上して亡くなった。大型トレーナーの運転手の飲酒と居眠り運転が事故原因だった。


 原型を失ったワゴンから出された香奈の両親の遺体の損傷が激しかったので、DNA鑑定で身元確認が行われたが、あまりにも酷い状態のためか、俺は香奈の両親の遺体と対面することが許されなかった。


 香奈と俺の両親と祖父母は一緒に対面したが、五人のその直後の態度をみればどんな姿か想像する事は許されないと思った。特に香奈は父さんと母さんの姿を返してくれと泣き叫んでいた。


 姿を返して・・・そうだ、いま香奈は人形娘と彼女が呼ぶ改造人間にされていた事を思い出した。それで、泣き叫ぶ香奈の肩に手を添えた。彼女の顔は長い髪の毛が顔を覆いつくしていたので表情は確認できなかったが、涙が頬を伝い流れている様子は確認できた。


 しかし、何を言えばいいのだろうか? これは夢の中だから・・・ということは現実ではないよな。そしたら何をしてもいいのかもしれない。そう思った俺は香奈にこういった。


 「香奈。お前つらいかもしれないけど東京に行こうとは思わないでほしい。東京に行ったらお前のその姿を失うことになるかもしれないぞ」


 「姿を失う? なによそれ、いま言う事じゃないよそんなの! 意味が判らない事を言わないでほしい!」香奈はますます泣き崩れてしまった。


 これは夢だったよね? 夢ということは醒めるはずだから、そしたら元の世界に戻れるはずだ。そう考えていたら目の前の香奈の姿に変化が現れた。


 香奈は着ていた高校の制服を脱ぎだし、一糸纏わぬ姿になったと思うと変化が始った。手足の先からプラスチックのような素材に覆われ始めた。その変化はやがて全身へと広がり、やがて香奈の体はマネキンみたいになった。


 「香奈! なんでマネキンになったんだよ! いくら悲しくても人の姿を捨てなくてもいいのに、なぜなんだ?」 俺はマネキンのようになった香奈の体を抱きかかえた。その表情はアニメ作品のようにデフォルトされた笑顔であった。


 「智樹くん。これがあたしの運命なのよ、この人形娘になることは。でも、人形娘になってもあたしはあたしだからね。あたしの両親は亡くなってしまったけど、あたしは人ではなくなっても生きているのだから。だからお願い!」


 そう香奈が言ったところで目が覚めてしまった。このときお日様が昇っておらずうすくらい春であったが、目の前には香奈を名乗る人形娘の顔があった。寒いのでどうも抱き合って眠ってしまったようだ。


 俺は人形娘の長い髪の毛を触り、表情が変わることのない顔をスリスリしていた。このマスクの下に俺が知っている香奈がどんな姿にされているのか気になっていた。

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