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人形娘香奈同居日記  作者: ジャン・幸田
転がり込んできた人形娘
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おやすみなさい

 香奈を名乗る人形娘が部屋に転がり込んで二時間、目の前にいる大きな人形は命を持っているようだった。たしかに、筆談の字は香奈の筆跡に似ているように思えるし、書く内容も彼女でなければわからないようなこともあった。


 しかし、それでもなお俺は信じられなかった。この世の中に着ぐるみを脱げなくする技術が存在する事を。だからこそ一緒に確認することにしたのだ、彼女の身体を!


 ”智ちゃんといっしょにこうして横になるのは小学生以来かな、少し恥ずかしいよ”


 香奈(まあ他に適切な名前がないのでそのままにしよう)はそう書いて恥ずかしそうにしていたが、当たり前であるがそれもこれも人形娘の秘密を解く手がかりを掴むためのものだった。”人形”と男女の営みをすることは不可能だと思っていたし。


 「香奈ちゃん、わるいけど服を脱いでくれないかな。いやあエッチな事はしないよ。悪い人達に改造された君を助ける方法がないか探りたいのさ」


 そういうと、香奈は着ていたメイド服をもう一度脱ぎはじめた。その光景は俺も美少女着ぐるみを着用した事があるので想像は出来たが、その後の光景は異様だった。香奈の人形娘の出来栄えに驚いてしまったのだ。


 ”本当はあまりジロジロみないでほしい。でも私もここから出たいから”


 「なんか、どういったらいいかな。香奈ちゃんの皮膚組織が全てコーティングされているみたいだよ。詳しいことは判らないけど、今度田舎に帰ったら俺の先輩の病院にでも検査を頼んでみるか?」


 そう思ったのは、もしかして人形娘は機械のようなものが入っていて、制御している人工知能が香奈であるという偽の記憶を持っているのかとも思ったからだ。検査をすればもしかすると香奈の今の状態がわかるはずだと思ったからだ。


 「ひとつふたつ質問していいかな? その人形娘ってどのようにして着用させられたの?」


 ”詳細は長くなるから今度まとめるわ。簡単に言えば、裸にされて髪の毛も含め全ての毛を剃られてから、へんな薬剤のバスタブに入れられたの。そしたら皮膚がとんでもないものになってしまったの。それから口と肛門に機械のようなものを入れられて内臓が改造されて、最後は体中に特殊な素材で出来た人形娘の皮膚を身体全体に貼り付けられてしまったの”


 すると人形娘の中には香奈の裸体が入っているわかなの? でもなんでこんな改造をする必要があるのか不思議だった。それに人形娘で”生身”というか”中の人”は大丈夫なんだろうか?


 「君って人形娘になって何日目なの? 苦しくないのかな人形娘にされて?」


 ”たぶん三週間経つと思うよ人形娘にされて。着心地だけど快適だよ。でも智ちゃんと一緒になれないわ。早く人間に戻りたい”


 「香奈ちゃん、いいかな君の体をもう一度見せてくれないか?」


 そういって俺は人形娘の表面をもう一度確認した。人形娘は女性らしい美しいプロポーションをしていて、触り心地もものすごく気持ちよかった。だから、このままずっと抱いておきたいぐらいだった。でも人間ではない存在の香奈に手出ししてはいけないと心の中では否定する考えもまた浮かんでいた。


 俺は香奈の体を摩りながら、もしかすると切れ目があるかなと確認していったが、結局そのようなものを見つけられなかった。ただ、人形娘にされた香奈が無性に可哀想になってしまった。


 そんな時、まだ春まだ浅いこの時期、自分の体のほうが冷えてきていた。それに人形娘の体に閉じ込められた香奈と一緒にいたいと思って言ってみた。


 「このまま朝まで寄り添って寝てもいいかな? いやだったら何とかするから」


 ”いいよ。わたしは体温調整はいいみたいだけど、智ちゃんが横にいるだけでいいから”


 それで俺と香奈は抱き合って就寝する事にした。さすがに毛布と枕は隣人に借りたが、ふたり向き合って寝る事にした。


 「香奈ちゃん、電気消すよ。もし明日の朝になったら元の姿に戻っていたらと思うよ」そういうと香奈の表情を変えない顔面はゆっくりと縦にふった。そして香奈は俺の腕にこうなぞった。


 ”おやすみなさい”

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