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人形娘香奈同居日記  作者: ジャン・幸田
転がり込んできた人形娘
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人形娘とのコミュニケーション

 香奈とは幼馴染でよく祖父の飲食店に遊びに来ていた。香奈の両親は野菜を納めにくる納入業者で、祖父と香奈の両親とは仲が良かったからだ。それで自然と遊ぶようになったが、思春期が来ても互いに異性とは思わず兄妹のように思っていた。そうそう香奈のほうが誕生日が半年遅いので俺の方が少し年長だったので、男兄弟の末っ子の俺からすれば妹みたいな存在だった。


 そのため、家族ぐるみの付き合いをずっと続けていて、祖父は香奈の両親を自分の子供のように可愛がっていて、一緒に色んなところへと出かけているぐらい良好な関係だった。だから香奈の両親が事故で亡くなった時も祖父は酷く嘆き悲しんでいた事を昨日の事のように覚えている。その祖父も何ヶ月もしないうちに急な病で直後に香奈の両親と同じところに逝ってしまったが・・・


 彼女は俺からすれば本当の妹のように愛しかったが、最近は連絡を取っていなかった。しかし、再会した彼女は想像もしない姿に変わっていた。彼女が言うには人形娘ということであるが、見た目は美少女着ぐるみが脱げなくなったような姿だった。


 彼女は「中の人」状態でしゃべる事が出来ないので、とりあえず近所のコンビニでノートとサインペン、飲みたいと”要求”された牛乳を買ってきた。それにしても彼女は食事をするのか、トイレに行くのか、”着ぐるみ”のような人形娘の姿で身体は大丈夫なのか、そう彼女の今のことを知りたくてしかたなかった。


 買ってきた牛乳を香奈に渡すと、彼女はおもむろに紙パックを空け、唇からストロー状のものを伸ばして飲み始めた。まるでそれは蜜を吸う蝶のようだった。俺は香奈に色んな事を聞きたかったが、あまりにも知りたい事が多すぎるので、少しずつ質問する事にした。


 「香奈ちゃん、本当に香奈ちゃんなの? 怒るかもしれないけど今でも信じられないのよ。本当ならマスクを取って確認したいし、声も聞きたいよ。でも出来ないようだからいいかな? 俺の祖父の名前と君の両親の名前を書いてくれないかな」


 俺は香奈と一緒に学校に行っていたときの口調で話してしまった。同級生には高校にもなって幼馴染にちゃんつけするなんてと、ひやかされたものであったが。


 彼女は少し悲しそうな素振りをしたかと思うと、ノートに筆談を始めた。”あなたのお爺さんは西岡恭二、私の両親は沢村明和と妙子”


 そう俺と一緒に暮らしていた祖父はお袋の父で、ずっとうちは”マスオさん”状態だった。だから姓が違っていたし、名前も合っていた。


 「それじゃあ、君は食べなくてもいいの?」


 ”食べたいけど食べれないわ。さるぐつわされたようになっているから。さっきのように吸うことは出来るよ”


 「でも牛乳だけでは身体は持たないよ。本当はどんなものを摂取すればいいの?」


 ”ベビーフードのようなものを調合したもの。レシピは自分で作れるから材料だけ用意して。でもしばらくは牛乳で我慢するわ”


 「トイレに行かなくてもいいかな? ここは共有だから心配なんだ」そういうと、彼女は恥ずかしいと思ったのか照れ隠しのように俺の腕を引っ張ってしまった。


 ”行くわよ。でも体内も改造されているみたいで必要以上に行く必要ないみたい。だから一日行かなくても平気みたい。でも後で行かせてもらうよ”


 「その人形娘の着ぐるみってどんな構造なの?」


 ”話が長くなるから後で書くわね。簡単に言えば改造人間の身体になっているのよ。サイボーグって言ったほうが正しいかな。でも身体は生身のままのようよ。だって心臓の鼓動も感じるしね。それに奴らは元の人間に戻せるかもしれないといっていたけど、当てはないわね”


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