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人形娘香奈同居日記  作者: ジャン・幸田
転がり込んできた人形娘
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わたしは人形娘

 人形娘の香奈を名乗る着ぐるみ姿の女、-そもそも女なのかわからなかったがー は俺の顔をじっと見つめていた。すると続きを書き始めた。


 ”迫水くんだよね。驚くかもしれないけどあたし沢村香奈よ”


 沢村香奈は幼馴染で高校まで一緒だったが、高校卒業直前に交通事故に遭って両親を失い天涯孤独になったという悲運の少女だ。たしか一度だけ挨拶にここに来たことがあった。でもその時は何処にでもいる普通の少女だったはずなのになぜ?


 ”話がながくなるので書けないけど。あたし匿ってください。こんな身体に改造されてしまったから”


 すると彼女は着ていたロリータ・メイド服を脱ぎはじめた。本当なら大変な事であるはずなのに、目の前にあり、いやいるのは大きな人形としか認識できなかったので平気だった。


 香奈を名乗る人形は一糸纏わぬ姿になったが、言われるとおりにただの着ぐるみでないことがわかった。着ぐるみを着る時にはスキンカラーの全身タイツを着て、着ぐるみの服を着てからマスクを被るので、着ぐるみが脱いだら全身タイツ姿になるはずなのに違ったものが見えたのだ。


 彼女の体の表面は、まるでマネキンみたいな素材で構成されており、マスクと首から下は一緒にくっついていた。背中を見ても全身タイツを着用するときに使うファスナーの類は見えず、またどこから着用したのか見当がつかなかった。このとき恐ろしい事を思い出した。彼女は自分が改造されたのだと。


 「沢村香奈といえば俺の幼馴染だけど、あんたは本当に香奈なんか?」


 すると人形娘は首を縦にふった。それにしても改造人間といえば特撮だけのものだと思っていたけど、本当に存在しているとは信じられなかった。


 「あんた人形娘だといったけど、服を脱ぐようにその着ぐるみを脱ぐことが出来ないのか?」


 またも人形娘は首を振ると、ボールペンを走らせた”わたし出荷作業のバイトをしていたの。でもラボに連れて行かれこんな姿に改造されたの。やつらは強化人間の一種の人形娘といっていたわ。でも輸送中に交通事故で逃げ出す事に成功したの。その時運よくGPS追跡装置を外す事もできたのよ。しかし人形の姿では家にも帰れないし脱げないのよ。だからかくまって!”


 「そうはいうけど、俺あした帰郷するのよ。そうあんたも出て行った田舎にだよ。あんたも一緒に来る事になるけどいいか?」


 すると人形娘は俺に抱きついてきた。その人形娘の身体は人形のように冷たくなく人の温もりを感じた。そして愛おしいように触っていたが、なにを伝えたいのかわからなかった。


 しばらくして彼女は気を取り直して筆談を再開した。紙はもう無かったので仕方なく財布にあったレシートの裏に書いてもらった。


 ”一緒に帰る! お願い! なんでもするから一緒にいさせて! こんな人形娘のあたしでも”


 目の前にいる人形娘は大きな人形にしか見えなかったが、その中には香奈がいるのは間違いないようだった。それにしても二十四歳の女性を素材にした人形が存在するという事実が目の前にあった。

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