隠れ家
宮川医師からのメールには香奈の状態について補足が書かれていた。それによると香奈は外観はメイドのような可愛らしい姿であるが、内部構造からすると、オプションと接続すると、兵器になる軍事用改造人間ではないかという推測であった。
「やはりな、宮川もそう思ったんか! そこの香奈さんだがどうやら某軍事政権が発注した戦闘マシーンかもしれないぞ! そこの迫水くんだったかな、君は彼女をどうしたいのかね?」
塩谷准教授はまたも裏道をジグザグしながら車を走らせながら智樹に聞いていた。
「本当なら元の香奈に戻してあげたいです。でも戻せないのなら、一度は故郷につれて帰ってやりたいです。それが危険なことであっても」
「塩谷さん、俺も同意見です。迫水も沢村も幼い頃から知っていますけど、もし沢村が一生このままなら、やつらに連れ戻される前にいっぺん故郷を見せてあげたいです。ここは二人を一度帰しましょう、愛媛へ!」
田河先輩もそういってくれた、後は香奈の意思を確認するだけだった。もしかすると一生人形娘のままかもしれないと聞かされてショックを受けているかもしれなかったが、顔が人形なので表情の変化が判らなかったので、彼女はどう筆談するか気になっていた。
”みんなに迷惑をかけますが、私は帰郷したいです。せめて両親のお墓に行きたいです”
一同の意見はまとまった。しかし難題があった。愛媛に行く高速バスが出発するのは夜の九時だけど、それまでどこにいるのかが問題だった。香奈と一緒に居たら目立ってしまうので、どこかに隠れていないといけなかったからだ。
「准教授。どこか二人を隠す場所ないですか? 俺のマンションだと表から見えるからだめですよ」田河はそういって塩谷准教授に聞いていたが、たしかに今の香奈は普通の女ではなく人形娘だから、どこからか持ち出してきたようにしかみえなかった。
塩谷淳教授はどこに行こうか迷っている様子だったが、とりあえず自分の家に向かった。そこは多摩丘陵にある一軒家で扉のあるガレージを持つ立派なところだった。
「とりあえず、ここで出発まで待とう。ところで迫水君、すまないがその高速バスって終点まで止まるところないか?」
「たしか、終点の松山市駅までの間に何箇所か止まりますよ」
「それじゃあ、途中の都合のいいバス停で誰かに迎いに来てもらいなさい! もしかすると香奈さんを人形にしたところがさがしているかもしれないから。その後は、君の家で匿ってあげなさい! その間に香奈さんにとって良い方法を考えてあげるから」




