准教授
田河先輩が呼んだのは帝都工科大学大学院の塩谷豊三郎准教授だった。彼はパワードスーツ研究をしていた。後で聞いた話では、人形娘を製作している企業とはライバル関係にあるメーカーと共同開発をしているので、大丈夫という事であったが、どこで香奈を人形娘にしたところと繋がっているのかと、不安でしかなかったが、他にとるべき手段はなかったのでしかたなかった。
「沢村香奈さんといったね? 本当に君のスーツはよく出来ている。この姿で生きてきたようにしかみえないよ。それにしても本当に脱がせないよなあ、本当に密着しているし」
准教授は服を脱がした香奈の人形娘の外装をチェックしていたが、香奈は相当恥ずかしそうだった。いくら香奈本人の肉体ではなくても、いまは人形娘・香奈の体表だから当然だった。
准教授は夢中になるあまり、こともあろうに香奈の股間に顔を埋めあらぬところを弄り始めたじゃないか! おもわず香奈は准教授の頭を殴り、俺も准教授を突き飛ばしてしまった!
「なにをするんですか、あんたは? 今は人形のような姿ですが、中身は本当に女性が入っているんですよ! しかも俺の幼馴染が!」
「ごめん、ほんとうにすまない。君は人間なのよね? ついロボットのような感覚でみてしまった・・・」准教授は吹き飛ばされた時に外れた眼鏡をかけなおしながら謝罪していた。准教授の指先には香奈の人形娘に覆われてしまった内部から分泌された体液が付着していた。
「塩谷さん。いった話は本当だったでしょ? あのヒューマン・マテリアル・カンパニーの人形娘シリーズの中に本物の人間が内蔵されているのだと」
「ああ、田河信じるよ。しかし厄介だな。ヒューマン・マテリアル・カンパニーのCEOといえば、今の政権与党や榊原首相と完全に癒着しているとの噂があるし。たとえ今、公にしようとしても良くて無視、悪くすれば抹殺だろうな。それに人形娘だから警察に行っても遺失物といわれるだろうし、人間が入っているなんて主張しても・・・」
塩谷はしばらく考えていたが、とりあえず乗ってきた乗用車に乗るようにと促した。俺は大家のところに挨拶をして鍵を返却したが、大家は人数が多いので不審に思ったようだが、特に質問せずに見送ってくれた。
車に乗ると、塩谷は田河と相談していたが、相当悩んでいるようだった。なんせ香奈は研究対象物件としては魅惑的だったからだ。このような人形娘に使われている技術の謎がわかれば、いいからだ。もっともそれは技術窃盗にほかならないが・・・
「沢村さん。相談したけどやっぱ愛媛に彼と一緒にお逃げなさい。このままここにいても、 ヒューマン・マテリアル・カンパニーの奴らに連れ戻されるだろうから。まあ君を助け出す方法は探してみるから待ってくれないか?」
車は高速道路に乗らずNシステムを回避するかのように土地勘がないとわからないような細い路地を走っていた。




